2011 Fiscal Year Research-status Report
低出生体重児におけるドキサプラムの体内動態の変動要因を解明する
Project/Area Number |
23590189
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
入倉 充 熊本大学, 生命科学研究部, 准教授 (70151694)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
入江 徹美 熊本大学, 生命科学研究部, 教授 (60150546)
山崎 俊夫 藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (40135364)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ドキサプラム / 低出生体重児無呼吸発作 / 母集団薬物動態解析 |
Research Abstract |
ドキサプラムの低用量静脈内持続投与法に関するランダム化比較試験に参加した72名の児のうち、ドキサプラム群に割り当てられたのは36名であった。そのうち、ドキサプラム投与後のサンプルは34名92ポイントであった。92ポイントのうち定常状態に達していたと推測されるサンプルは33ポイントであり、その血清中濃度の中央値 (範囲) は 0.471 μg/mL (0.047 - 1.549 μg/mL) であった (投与量0.2 mg/kg/hrで0.347μg/mL (0.047 - 0.931 μg/mL) 、投与量0.4mg/kg/hrで0.696 μg/mL (0.429 - 1.549 μg/mL) )。血中濃度に影響を与える因子を見出すため、定常状態の血中濃度を投与量で除した値と児の採血時体重 (BW)、受胎後週数 (PCA)、生後日齢 (PNA)、血清クレアチニン値、血清AST値、血清ALT値との相関関係を調べた。その結果、ドキサプラムの血中濃度と採血時体重の間に相関が認められた。さらに、在胎週数に比して出生体重が小さい (LFD : light-for-dates) 児在胎週数相当の出生体重 (AFD : appropriate-for-dates) 児、在胎週数に比して出生体重が大きい (HFD : heavy-for-dates) 児に分類して、投与量で除した血中濃度との関係をみたところ、有意差はないもののLFD児は血中濃度が上昇しやすい傾向が認められた。そこで、採血時の体格を考慮するために、「採血時体重 / 採血時受胎後週数」を採血時の体格の指標として、投与量で除した血中濃度との相関関係をみたところ、体重のみの時と比べ、より強い相関が認められた。これらの結果は、母集団薬物動態解析を実施する上で、参考となるデータである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全国 11 ヶ所の新生児医療施設の72名の対象患児にドキサプラムまたはプラセボを投与した、ドキサプラム群に割り当てられたのは36名であった。そのうち、ドキサプラム投与後の血清サンプルが得られたのは34名92ポイントであった。ドキサプラムが投与された患児の体重、出生体重、在胎期間、アプガースコア、BUN、血清クレアチニン値、酸素供給の有無、経管栄養の有無、無呼吸発作回数、およびドキサプラムの投与量、投与時間、採血時間などを診療記録から調査した。ドキサプラムおよびその代謝物の濃度を高速液体クロマトグラフィー法により測定し、得られた血中濃度と児の背景との相関関係を検討した。以上の通り、当初目的とした、十分な数の患児データを得ることができ、さらにそれら児の背景データと血中濃度の関係を検討することができた。その結果、ドキサプラムの血中濃度と採血時体重の間に相関が認められた。有意差はないもののLFD児は血中濃度が上昇しやすい傾向が認められた。さらに、体格の指標である(採血時体重 / 採血時受胎後週数)と血中濃度の間に、体重のみの時と比べ、より強い相関が認められた。当初予定していた患児個々の薬物動態パラメータの解析、および有効性と血中濃度の関係は、まだ検討できていないが、今年度得られたデータ、および認められた相関関係は、母集団薬物動態解析を実施する上で参考となる基礎情報である。従って、本年度の目標は概ね達成できているものと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度同様、全国 11 ヶ所の新生児医療施設の対象患児にドキサプラムを投与し、血清を収集する。ドキサプラムが投与された患児の体重、出生体重、在胎期間、アプガースコア、BUN、血清クレアチニン値、酸素供給の有無、経管栄養の有無、無呼吸発作回数、およびドキサプラムの投与量、投与時間、採血時間などを診療記録から調査する。ドキサプラムおよびその代謝物の濃度を高速液体クロマトグラフィー法により測定する。個々の患児の薬物動態パラメータを見積もる。すなわち、投与開始 48 時間以降の定常状態での血中濃度 Css(mg/l)と、ドキサプラムの投与速度 ki(mg/kg/hr)からクリアランス CL(L/kg/hr)を CL=ki/Css で求め、さらに投与中止後の 2 点の血中濃度からドキサプラムの排泄速度定数 ke (1/hr)を計算し、見かけの分布容積 Vd=CL/ke、および半減期 t1/2 を計算する。この年度までに得られたデータに基づいて、個々の患児のドキサプラムの薬物動態パラメータの変動要因をロジスティック回帰分析を用いて解析する。患児数を増やし薬物動態解析を行う。これまでドキサプラムの CL などの薬物動態は個人間の変動が大きいといわれてきている。その明確な変動要因が明らかにできない場合は、NONMEM 法を用いた母集団薬物動態解析を行い、低出生体重児におけるドキサプラムの母集団薬物動態パラメータを明らかにする。さらに、ドキサプラム投与による副作用発生の有無に注意しつつ、有効性が認められた患児データに基づいてドキサプラムの有効血中濃度を推定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究は、全国の新生児医療施設でアミノフィリンに不応でドキサプラムが投与された未熟児無呼吸発作患児の血清試料を収集するための、運送料と血清中のドキサプラム、その活性代謝物であるケトドキサプラム、テオフィリン、およびカフェイン濃度をHPLCで測定するための費用が必要である。ドキサプラムとケトドキサプラムは同時に測定できるが、テオフィリンとカフェインは測定条件が異なるため別の装置で測定しなくてはならない。そのため、カラムやHPLC用の溶媒など消耗品の費用が必要になってくる。母集団薬物動態解析を実施するために、ドキサプラムの薬物動態に影響を与える因子として、「性別」「在胎週数 (GA) 」「生後日齢 (PNA) 」「受胎後週数 (PCA=GA+PNA) 」「LFD (light-for-dates;在胎週数に比して出生体重が小さい) 児か、AFD (appropriate-for-dates;在胎週数相当の出生体重) 児か、HFD (heavy-for-dates;在胎週数に比して出生体重が大きい) 児かどうか」「体重 / 受胎後週数」「酸素供給の有無」「血清クレアチニン値」「血清AST 値」について検討を行う。ドキサプラムの薬物動態パラメータに対する影響因子の効果の判定は目的関数 (objective function: OBJ) を用いた尤度比検定により行う。NONMEM 解析においてパラメータを特定の値に固定したときの OBJ の差 (-2 log likelihood difference: LLD) は近似的に χ2 分布に従い、自由度は固定したパラメータ数に等しい.従って、本研究においては1つのパラメータについて LLD > 3.841 の場合に有意 (p < 0.05) であると判定し、その影響因子をモデルに組み込み最終的な final model を構築する。
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