2012 Fiscal Year Research-status Report
低出生体重児におけるドキサプラムの体内動態の変動要因を解明する
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23590189
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
入倉 充 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 准教授 (70151694)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
入江 徹美 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 教授 (60150546)
山崎 俊夫 藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (40135364)
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Keywords | 低出生体重児無呼吸発作 / ドキサプラム / 母集団薬物動態解析 |
Research Abstract |
アミノフィリンに不応と判定された患児 69 名のうち、ドキサプラムが追加投与された患児 34 名 92 ポイント(平均在胎週数:29.4 週、平均出生体重:1198 g)を対象として、血清中濃度を測定し、母集団薬物動態解析を行うとともに、その効果判定を行った。母集団薬物動態解析の結果、次式が得られた。 CL (L/kg/h) = 0.022 + 採血時体重 / 採血時受胎後週数 × 0。0133 Vd (L/kg) = 2.53 (在胎期間が 28 週より大きい場合)または2.53 × 2.33 (在胎期間が 28 週以下の場合) ドキサプラムの平均血清中濃度(範囲)は、投与量 0.2 mg/kg/hr で 0.371 μg/mL (0.047 - 0.931 μg/mL)、投与量 0.4 mg/kg/hr で 0.729 μg/mL (0.429 - 1.549 μg/mL) となり、同一投与量でも血清中濃度に大きなバラツキがみられた。アミノフィリンに不応な無呼吸発作に対して ドキサプラムが抑制効果を示した患児におけるドキサプラムの血清中濃度を解析した結果、ドキサプラムの有効血清中濃度は、従来の報告(1.5 μg/mL 以上)よりも低濃度であることが示唆された。また、0.4 mg/kg/hr 以下の投与量であれば、有害事象が生じる可能性が低い濃度範囲に収まることが推定された。今回得られた結果は、予備的なものであるが、次年度以降症例数の追加、および影響因子の見直しなどを行うことによりさらに予測精度を上げていく予定である。予測精度に改善の余地を残すが、これらの解析結果は、低出生体重児の無呼吸発作の治療においてドキサプラムを使用する際の指針与えるものと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全国 11 ヶ所の新生児医療施設の72名の対象患児にドキサプラムまたはプラセボを投与した、ドキサプラム群に割り当てられたのは36名であった。そのうち、ドキサプラム投与後の血清サンプルが得られたのは34名92ポイントであった。ドキサプラムが投与された患児の体重、出生体重、在胎期間、アプガースコア、BUN、血清クレアチニン値、酸素供給の有無、経管栄養の有無、無呼吸発作回数、およびドキサプラムの投与量、投与時間、採血時間などを診療記録から調査した。 得られたデータを基に予備的ではあるが、NONMEM 法を用いて母集団薬物動態解析を行った。まだ十分な目的関数(OBJ)を得ることは出来ていないが、低出生体重児におけるドキサプラムのクリアランスには採血時の体重と採血時の受胎後週数が関与することを明らかにすることが出来た。また、分布容積については在胎期間 28 週を境にして異なることを明らかにすることが出来た。すなわち、在胎期間が短くなるとその分布容積が小さくなり、結果として負荷投与量の増量が必要となることが予想される。今年度予備的ではあるが母集団薬物動態解析を実施したこと、また、得られた結果を今後臨床上有用な情報をフィードバックできる可能性がある。従って、本年度の目標は概ね達成できているものと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度同様、全国 11 ヶ所の新生児医療施設の対象患児にドキサプラムを投与し、血清を収集する。ドキサプラムが投与された患児の体重、出生体重、在胎期間、アプガースコア、BUN、血清クレアチニン値、酸素供給の有無、経管栄養の有無、無呼吸発作回数、およびドキサプラムの投与量、投与時間、採血時間などを診療記録から調査する。ドキサプラムおよびその代謝物の濃度を高速液体クロマトグラフィー法により測定する。本年度までに得られたデータと合わせ、母集団薬物動態解析、NONMEM解析を再度実施し、新生児におけるドキサプラムの体内動態を解明する。また得られた結果については、バリデーションを行いその予測精度の検証を行う。また本年度実施する事が出来なかったロジスティック回帰分析を行うことにより、ドキサプラムの体内動態に影響を与える変動要因を解明し、母集団薬物動態解析の精度を高める。さらにドキサプラムの有効濃度を明らかにするために、無呼吸発作の回数と血中濃度の関係を明らかにするとともに、副作用の発現状況を確認し、有効で安全な薬物治療実施のための指針作りに貢献できるデータ解析に努める。良好な結果が得られた場合は、新生児医療を専門とする医師が多く参加する学会で成果を公表することにより、臨床現場へのフィードバックを行う。また、研究成果を国際学会での発表し、出来るだけ速やかに国際的な専門誌へ投稿することにより、グローバルな視点での医療貢献に努める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
全国の新生児医療施設でアミノフィリンに不応でドキサプラムが投与された未熟児無呼吸発作患児の血清試料を収集するための、運送料と血清中のドキサプラム、その活性代謝物であるケトドキサプラム、テオフィリン、およびカフェイン濃度をHPLCで測定するための費用が必要である。ドキサプラムとケトドキサプラムは同時に測定できるが、テオフィリンとカフェインは測定条件が異なるため別の装置で測定しなくてはならない。そのため、カラムやHPLC用の溶媒など消耗品の費用が必要になってくる。また、母集団薬物動態解析を実施するために、その解析プログラムである N0NMEM の維持費用に充てる。得られた結果を医療現場にフィードバックするために臨床医との打合せのために費用も必要になる。さらに次年度は最終年度にあたるので、得られた成果を国内および国際学会で発表するとともに、国際専門誌へ投稿するための費用を必要とする。
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