2011 Fiscal Year Research-status Report
末梢体内時計と膵β細胞NO-cGMP系とのクロストークの糖尿病発症における役割
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23590192
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
石川 智久 静岡県立大学, 薬学部, 教授 (10201914)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金子 雪子 静岡県立大学, 薬学部, 助教 (00381038)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 糖尿病 / シグナル伝達 / 薬学 |
Research Abstract |
平成23度は、β細胞におけるNO-cGMP系調節機構を明らかにすることを目的として、この機構に関与するタンパク質のβ細胞における発現、および高濃度グルコースによる影響について調べた。NOの産生は、主に構成型NOS(cNOS)を活性化する細胞内Ca2+濃度上昇により調節されるが、cNOS阻害活性を有する内因性アルギニンアナログADMA による制御の存在も知られている。ADMAはアルギニンからメチル基転移酵素RPMTにより産生され、加水分解酵素DDAH によりシトルリンに代謝される。そこでまず、β細胞株INS-1におけるこれらの酵素の発現をRT-PCRにより調べた。その結果、INS-1細胞におけるDDAH1、2およびPRMT1, 3, 4, 6の存在が示された。さらにWestern blottingにより、DDAH1、2およびPRMT4のタンパクレベルでの存在も確認された。次に、高濃度グルコース(20mM)でINS-1細胞を3日間培養することによるこれら酵素の発現変動をReal-time PCRにより検討したところ、10mMグルコースで培養したコントロールと比較して、DDAH2の発現減少、およびPRMT4の発現増加が示された。さらに、これらの発現変化が高濃度グルコース曝露による酸化ストレスの増加により誘発される可能性を検討した。しかし、100μM過酸化水素を24時間作用させても、INS-1細胞におけるDDAH2およびPRMT4の発現に変化は認められなかった。 以上の結果より、β細胞において、ADMA産生によるNOS活性制御の系が存在することが示唆され、さらに、高濃度グルコース曝露により、酸化ストレスとは異なる機序により、この系に関与する酵素の発現が変化し、β細胞におけるADMAレベルが上昇してcNOSが抑制され、生理的なNOによるβ細胞機能調節が破綻する可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年度は、siRNAにより各酵素をノックダウンした細胞を用いた機能解析も予定していた。しかし、遺伝子組み換え実験を担当する共同研究者である金子が産休・育休により1年間休職していたため、遺伝子組み換え実験を延期した。ただし、代わりに平成24年度に予定していたメラトニンのNO-cGMP系に及ぼす作用の解析を先に開始し、メラトニン受容体の発現解析などの結果を既に得ている。それゆえ、研究全体からみた研究の進捗状況はわずかな遅れと自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
上述したように、遺伝子組み換え実験を担当する共同研究者である金子が産休・育休により約1年間休職していたため、遺伝子組み換え実験を必要とする研究を延期した。平成24年度にこれらの実験を実施するように計画を変更した。 また、細胞レベルの実験で、β細胞への高濃度グルコース負荷によるDDAH2の発現減少、およびPRMT4の発現増加という興味深いデータが得られたことから、平成25年度に予定していた2型糖尿病モデル動物を用いた解析を前倒しして開始する予定である。代わりに、平成24年度に予定していたβ細胞特異的ノックアウトマウスの作製は、2型糖尿病モデル動物での結果をもとに、さらにノックアウトする遺伝子のターゲットを絞ってから、平成25年度に行うように計画を変更した。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上述したように、金子が産休・育休により約1年間休職していたため、金子への分担金である約300千円を次年度に繰り越した。
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