2012 Fiscal Year Research-status Report
末梢体内時計と膵β細胞NO-cGMP系とのクロストークの糖尿病発症における役割
Project/Area Number |
23590192
|
Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
石川 智久 静岡県立大学, 薬学部, 教授 (10201914)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金子 雪子 静岡県立大学, 薬学部, 助教 (00381038)
|
Keywords | 糖尿病 / シグナル伝達 / 薬学 |
Research Abstract |
平成24年度は、糖尿病病態下におけるNO-cGMP系の変化についての検討、およびβ細胞における末梢体内時計の解析を行った。 NO-cGMP系に関しては、自然発症型2型糖尿病モデルマウスである高カロリー食負荷(high fat diet; HFD)マウスおよび NSY (Nagoya-Shibata-Yasuda) マウスの膵島を用いて、NO産生調節系の変化を検討した。NO合成酵素(NOS)の内因性阻害物質ADMAの代謝酵素であるDDAHのmRNA発現変化をRT-PCRにより調べた結果、高血糖およびインスリン抵抗性を示した20週齢HFDマウスおよび24週齢NSYマウスの膵島において、DDAH1発現には変化が認められないが、DDAH2の発現は低下していることが示された。すなわち、2型糖尿病病態下の膵島において、DDAH2 の発現減少により、β細胞内にADMAが蓄積し、NOSの活性が抑制されていることが示唆された。 体内時計に関しては、メラトニン受容体および時計遺伝子の発現について検討した。C57/BL6マウスの単離膵島およびβ細胞株MIN6 細胞において、メラトニン受容体MT1およびMT2受容体の発現がReal-time PCRにより確認された。また、C57/BL6マウス膵臓の免疫組織染色により、β細胞にMT1、MT2受容体の両サブタイプが発現していることを確認した。一方で、β細胞における時計遺伝子の日内変動を定量できる系の確立を目指した。β細胞株INS-1細胞を馬血清で処置することにより、時計遺伝子であるBmal1およびPer1の概日リズムが観察でき、β細胞株においても時計遺伝子を同期させられることが確認できた。現在、この系を用いて、時計遺伝子の概日リズムに対するメラトニンやNO-cGMP系の効果について検討を行なっている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画とは異なるが、平成24年度に予定していた2型糖尿病モデル動物を用いたNO-cGMP系の解析はほぼ予定通りに実施でき、成果も得られた。一方、時計遺伝子に関しては、メラトニン受容体の発現や機能に関する検討はほぼ予定通りに実施できたが、時計遺伝子ClockとBmal1およびその抑制因子であるCry1, 2とPer1, 2, 3の発現解析に着手したところ、β細胞株を用いてこれら時計遺伝子の日内変動を定量できる系を確立する必要性が生じ、平成24年度はそれに取り組んだ。その結果、少なくともBmal1とPer1については、β細胞株INS-1において概日リズムが観察できた。この系を利用することで、平成25年度には、当初予定していたNO-cGMP系と時計遺伝子とのクロストークを解析できると考えている。なお、共同利用機器として2セット共有しているReal Time PCRシステムを利用した遺伝子発現解析に関して、利用者の増大や相次ぐ機器の故障等により、実験を計画通りに行えないという事態が度々発生した。実験が遅れる一因となることから、対策を講じる必要性を感じている。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成23年度および24年度の検討により、細胞レベルおよび生体レベルの両方において、高濃度グルコース曝露によるβ細胞におけるDDAH2の発現減少が確認できた。そこで、まずDDAH2の発現減少により、2型糖尿病モデルマウス(HFDおよびNSYマウス)のβ細胞において、実際にADMAの蓄積が生じていることを、HPLCを用いて確認し、β細胞におけるADMA-DDAH系の意義の確立を目指す。さらに、これらマウスのβ細胞におけるメラトニン受容体の発現変動や機能変化についても解析を行う。 一方で、β細胞株における時計遺伝子の概日リズムを検出できる系を確立できたことから、この系を用いて、当初の予定通り、β細胞における末梢体内時計とNO-cGMP 系のクロストークについての解析を行う。この細胞レベルでの解析の結果を踏まえて、2型糖尿病モデルマウス(HFDおよびNSYマウス)におけるNO-cGMP系と時計遺伝子とのクロストークに関する検討も行い、本研究課題をまとめる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上述した通り、共同利用機器であるReal Time PCRシステムが2セットとも利用者の増大や機器の故障等により使用できないことが多く、研究遂行に支障をきたしている。そこで、平成24年度の消耗品を他の研究費から補填することにより、できるだけ多くの研究費を平成25年度に繰り越し、この繰り越した研究費と平成25年度の研究費を合わせて利用することで、研究室専用のReal Time PCRシステムを購入する予定である。
|