2011 Fiscal Year Research-status Report
がん細胞における新規耐性マーカーとしてのARF―GEP100の検討
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23590194
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Research Institution | Tohoku Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
蓬田 伸 東北薬科大学, 薬学部, 講師 (80230845)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
染谷 明正 順天堂大学, 医学部, 准教授 (90167479)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | がん細胞 / 耐性マーカー / ABCトランスポーター / ARF-GEP100 / P-糖タンパク質 |
Research Abstract |
がん細胞におけるARF-GEP100の薬剤耐性化のマーカーとしての検討を白血病細胞をはじめとする各種癌細胞を用いて検討するため、研究分担者の染谷は、ARF-GEP100の部分ペプチド合成し、ウサギに免疫しペプチド抗体の作成を行った。その結果、ARF-GEP100を認識する特異性の高い抗体を作ることができた。 研究代表者の蓬田は、白血病細胞であるNalm-6およびK562を用いて、ドキソルビシンを1週間に0.5nMづつドキソルビシンの濃度を徐々に上げて行くことで耐性細胞の作成を行った。そして、これらの細胞を用いて、ARF-GEP100の発現について、Western bloting法で検討したところ、ドキソルビシン耐性細胞において、ARF-GEP100の発現の上昇が認められた。さらに、Nalm-6細胞において、ドキソルビシンを長期に処理することで、ARF-GEP100の発現が上昇することが、確認された。そして、ドキソルビシンを処理したNalm-6およびK562がん細胞におけるP-糖タンパク質の発現について検討したところ、ドキソルビシン耐性細胞では、P-糖タンパク質の発現が認められた。そして、ARF-GEP100とP-糖タンパク質の発現の時間経過を検討したところ、ARF-GEP100は、ドキソルビシンを処置することにより、P-糖タンパク質に比べ、先にその発現が増加することを確認することができた。さらに、P-糖タンパク質の発現に、ARF-GEP100の発現が相関するかを検討したところ、耐性細胞においてARF-GEP100の発現が増加するとP-糖タンパク質の発現も増加することが確認された。 以上のことから、ARF-GEP100は、ドキソルビシンをを処理することで、P-糖タンパク質よりも先に発現が増加し、P-糖タンパク質の発現に影響を与えている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では、乳がん、前立腺がん、肺がん、白血病細胞などを用いて、デキサメタゾン、抗がん剤(複数)について耐性細胞の作成し、ARF-GEP100とP-糖タンパク質の発現について相関性があるかをWestern bloting法で検討する予定であった。現在のところ、ARF-GEP100の抗体の作成が完了したが、がん細胞を用いた検討では白血病細胞のみとなっている。しかしながら、ドキソルビシン処置により、P-糖タンパク質の発現より先にARF-GEP100の発現の増加が認められたという新たな知見が得られた。 このことから、当初の計画よりもがん細胞と抗がん剤の種類の検討について、やや遅れているが、ほぼ当初の研究目的を達成したと考えられる。現在、乳がん及び肝臓がん細胞を用いて同様の検討を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、ドキソルビシン処理で見られたNalm-6およびK562細胞を用いて、ARF-GEP100のP-糖タンパク質発現メカニズムの検討をトランスフェクションおよびsiRNAによるノックダウンによって、細胞がどのように変化するかをABCトランスポーターの発現やアポトーシスなどの細胞死の誘導を指標に検討する。また、ARF-GEP100の構造の中でどの部分が関係しているかを調べるために欠失変異体を用いて検討する。そのため、欠失変異体およびsiRNAの作成を研究分担者の染谷に行ってもらう。さらに、可能であるならばARF-GEP100の抗体を用いて免疫沈降法を行い、細胞内でP-糖タンパク質の発現に相互作用しているタンパク質の同定を行う予定である。また、他の抗がん剤および乳がん細胞等を用いて、同様の結果が得られかを検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
抗がん剤(ドキソルビシン、CPT-11、タキソールなど)およびABCトランスポーターに対する抗体を購入する(約40万円)。また、トランスフェクションおよびsiRNAによるノックダウンによるメカニズムの検討を行うための遺伝子導入用の試薬とsiRNA等の作成の費用を計上する(約15万円)。さらに、細胞培養用の培地と血清およびプラスチック製品を計上する(約20万円)。また、ARF-GEP100のP-糖タンパク質の発現に関わるタンパク質の同定を順天堂大学・研究基盤センター生体分子研究部門に依頼し、質量分析装置を用いて行うため、その分析代を計上する(約15万円)。日本生化学会等で研究成果を発表するための国内旅費として約10万円を計上する。
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