2011 Fiscal Year Research-status Report
脳エネルギーの代替にケトン体を利用するアルツハイマー病の新規治療戦略
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23590205
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Research Institution | Nigata University of Phermacy and Applied Life Sciences |
Principal Investigator |
大和 進 新潟薬科大学, 薬学部, 教授 (60057370)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三井田 孝 順天堂大学, 医学部, 教授 (80260545)
立川 英一 東京薬科大学, 薬学部, 教授 (50146031)
中川 沙織 新潟薬科大学, 薬学部, 助教 (30410228)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ケトン体 / アルツハイマー病 / アセト酢酸 / HMG-CoAリアーゼ活性 / 脳エネルギー / スタチン系薬物 / ポリフェノール |
Research Abstract |
脳内エネルギーは通常、主にグルコースからTCA回路によって産生されるが、アルツハイマー病においては、グルコースからのエネルギー生成能が低下してエネルギー不足になるといわれている。しかしながら、脳内ではグルコースのほかにケトン体(主にアセト酢酸)からエネルギーを獲得でき、特に星状細胞は、ケトン体合成も行える。ケトン体はHMG-CoAからHMG-CoAリアーゼによって産生されることから、HMG-CoAリアーゼおよびケトン体を促進あるいは活性化させる物質の探索を行うことは、アルツハイマー病の新規対策となる。本年度は、肝および脳由来培養細胞を用いてHMG-CoAリアーゼ活性測定を行い、培養液の条件を検討し、薬物およびサプリメントのHMG-CoAリアーゼ活性測定法を確立し、のHMG-CoAリアーゼ活性に対する効果を検討した。HMG-CoAリアーゼ活性測定は、これまで皮膚の線維芽細胞を用いるのが一般的であったが、肝由来細胞(HepG2細胞)および脳由来細胞(SH-SY5Y細胞、U-251MG細胞)でもHMG-CoAリアーゼ活性が認められ、中でも肝由来細胞の活性が最も高い値を示した。培養条件として、培地にLPDSあるいはFBSを添加したもの、グルコースの濃度の違いについて検討したが、HMG-CoAリアーゼ活性には大きな影響は認められなかった。肝由来培養細胞を用いて、スタチン系薬物6種、ポリフェノールおよび塩化カルニチンを評価したところ、コントロールと比較してスタチン系薬物については効果が認められなかったが、エピカテキンガレート、エピガロカテキン、エピガロカテキンガレートおよび没食子酸およびで有意にHMG-CoAリアーゼの阻害が認められ、この阻害は濃度依存的に認められた。さらに、塩化カルニチンについては若干ではあるが、HMG-CoAリアーゼ活性促進作用が認められ、さらに検討を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
HMG-CoAリアーゼ活性測定法の確立は、計画以上に進み、薬物評価まで行っているが、HMG-CoAレダクターゼ活性測定は、基礎検討のみに留まっているため、全体としてはやや遅れていると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
HMG-CoAリアーゼ活性促進作用の可能性のある塩化カルニチンおよびその類似物、カプリル酸トリグリセリドなどを中心にHMG-CoAリアーゼの活性促進物質を探索する。肝由来細胞だけではなく脳由来培養細胞についても検討を行い、脳に対してより作用の強いものを選定する。同時に、LC-MS/MSを用いてメバロン酸定量を行うことで、HMG-CoAレダクターゼ活性測定法を確立し、HMG-CoAリアーゼ促進物質がHMG-CoAレダクターゼに対してどのように作用するか検討する。また、脳由来培養細胞(SH-SY5Y細胞およびU-251MG細胞)を用いて、アルツハイマー病バイオマーカーであるAβ42の定量法を確立する。この方法をを用いてケトン体(アセト酢酸および3β-ヒドロキシ酪酸)添加におけるAβ42の変化をグルコースと比較し、ケトン体のアルツハイマー病治療の有用性について検討を行う。これらの結果と組み合わせて、HMG-CoAリアーゼ活性促進物質がアルツハイマー病バイオマーカーに対する抑制効果を検討し、アルツハイマー病の新規治療法としてのHMG-CoAリアーゼ促進物質の効果を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、消耗品として、アルツハイマー病バイオマーカーの測定のためのチューブや抗体など、LC-MS/MSを用いたメバロン酸定量のための移動相やカラム、細胞培養のための培地などに使用する。また、これらの得られた結果(ケトン体とAβ42の関係あるいはHMG-CoAリアーゼ活性促進物質についた)を日本薬学会年会で発表するための旅費に使用する。共同研究者である三井田孝博士の次年度研究費の使用計画であるが、23年度分の繰り越し金である189,791円は、アルツハイマー病バイオマーカー測定のための抗体、サンプル採取のためのチューブ、ボックスなどの消耗品購入に充てる予定である。
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Research Products
(1 results)