2011 Fiscal Year Research-status Report
眼圧降下と視神経保護を同時標的とした新しい緑内障治療薬の開発
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23590208
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
伊藤 吉將 近畿大学, 薬学部, 准教授 (50128633)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ピログルタミン酸 / 緑内障 / シクロデキストリン / 眼圧 / 点眼薬 / 角膜傷害 / アセチルコチン / シュレム管 |
Research Abstract |
ピログルタミン酸を用い眼圧降下及び視神経保護を標的とした緑内障治療への応用及びその作用機構についての解明を目指し、平成23年度はピログルタミン酸点眼製剤を調製するとともに、眼圧効果作用について検討した。1)ピログルタミン酸点眼製剤の調製と角膜透過性の改善:2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを用いることで安定なピログルタミン酸点眼液の調製が可能となった。また、これらピログルタミン酸点眼液は2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの包接効果により高い角膜透過性を有することを確認した。2)ウサギ高眼圧モデルを用いたピログルタミン酸点眼液の眼内降下作用の測定:ウサギの眼圧日内変動を利用した暗所高眼圧モデルの作成に成功し、このモデル動物へピログルタミン酸点眼液を点眼することで高い眼圧効果作用がみられることを明らかとした。さらにこの眼圧効果作用には、アセチルコチン産生に伴うシュレム管からの房水排出促進が関わる可能性を見出した。3)ピログルタミン酸点眼液の角膜障害性の検定:角膜上皮剥離モデルラット及びヒト角膜上皮細胞にてピログルタミン酸点眼液の角膜上皮細胞傷害性の強度について検討を行い、角膜刺激性の少ない点眼製剤であることを明らかとした。 以上の結果より、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを用いたピログルタミン酸点眼液は、高い眼圧効果作用を有するとともに長期点眼においても安全であることを示唆する知見が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究にて以下の1)~3)が確認できた。1) 2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを用いピログルタミン酸点眼液を調製するとともに、この点眼液が安全かつ高い眼圧効果作用を有することを明確にすることができた。2) この眼圧効果作用にはアセチルコリン産生による房水排出促進が関わっていることを明らかとしたことから、来年度に実施予定である「他の抗緑内障点眼剤との併用による相互作用及び相乗効果の確認の予測」が容易となった。3) 本年の研究にてウサギだけでなくラットにおいても網膜血管の撮影条件及び血管幅解析方法を確立したことから、ピログルタミン酸点眼液点眼による視神経保護効果や保護機構の確認が容易となる知見が得られた。 これらの研究成果は、本年度の研究が順調に進展していることを示している。
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Strategy for Future Research Activity |
以下の1)及び2)に示す研究を行う。1) ラットや家兎などの実験動物を用い、ピログルタミン酸点眼液点眼が網膜血管及び視神経へ与える保護効果や作用機構についての検討を行うとともに、市販抗緑内障薬との相互・相乗効果の確認を行う。2) 本年度購入したiPRECIOマイクロインフュージョンポンプを用いたピログルタミン酸の経時的硝子体注入法を確立するとともに、その視神経賦活効果を明らかとする。 これにより、ピログルタミン酸による新たな視神経治療の可能性を見出す予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費は以下のものを購入するために使用する予定である。 房水中アセチルコリン測定のためのプローブ及び試薬、眼圧測定器トノペンの消耗品、リアルタイムPCR及びDNAシークエンスのため試薬、他の抗緑内障薬との相互・相乗効果確認のための市販抗緑内障薬、網膜培養のための栄養液, 培養フラスコ及び実験処理試薬、動物実験のためWistar系ラット・日本白色家兎
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