2013 Fiscal Year Annual Research Report
生体内脂質・蛋白の酸化・糖化変性による薬物動態変動機構の解明とその臨床への応用
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23590211
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Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
杉岡 信幸 神戸学院大学, 薬学部, 教授 (40418934)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
牛込 秀隆 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (90405283)
福島 恵造 神戸学院大学, 薬学部, 助教 (30454474)
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Keywords | 薬物動態変動 / 脂質・蛋白過酸化 |
Research Abstract |
酸化ストレスによる蛋白や脂質の変性が薬物の体内動態に与える影響を検討し、薬物の適正使用に貢献することを目的とする。 酸化ストレスを負荷したラット(OSラット)において、血液酸化度は著明に増加し、また、シクロスポリン(CsA)の血球移行率は上昇した。一方、クリアランスは低下し、分布容積は増大した。これらは酸化ストレスが赤血球に対するCsAの親和性・膜透過性を増加させたためであると考えられる。なお、Tacにおいては血漿中濃度が定量感度の不足から、現有機器での正確な検討は困難であった。 OSラットの肝臓、小腸CYP3Aの発現量は、特に変化は認められなかったが、その活性は低下した。また、この阻害様式は非競合阻害であった。すなわち酸化ストレスによる脂質過酸化の亢進により酵素タンパク質が変性した可能性が考えられた。高脂肪特殊飼料摂取肥満モデルラットにおけるCsAの血中濃度-時間曲線化面積は有意に増加し、分布容積、全身クリアランスは減少した。著明な脂肪肝・重量増加が観察されたが、代謝酵素活性に差は認められなかった。したがって血中濃度増加は血中脂質増加・酸化変性に伴う分布容積の減少が原因であることが示唆された。 CsAによる免疫抑制療法を受けた腎移植患者13名を酸化ストレス度正常値群、やや高値群、高値群の3群に分け、投与量あたりトラフレベル平均値を比較したところ高値群で最も高く、以下やや高値群、正常値群の順であった。すなわち、強い酸化ストレスを受けている患者ほどCsAのクリアランスは低く、このことはラットでの結果を反映するものである。一方Tacが投与された患者6名においては、症例がすべて正常値の範囲であったため症例蓄積を継続し検討する。 これらの結果は、酸化ストレスが赤血球蛋白、血中脂質、酵素蛋白に影響を与え、薬物動態を変動させる可能性があることを明らかにするもので、本研究結果は免疫抑制剤適正使用に貢献するものである。
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Research Products
(2 results)