2012 Fiscal Year Research-status Report
レセプト等の大規模医療情報を用いた医薬品による副作用の検出方法に関する研究
Project/Area Number |
23590213
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
頭金 正博 名古屋市立大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (00270629)
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Keywords | ナショナルレセプトデータベース / 副作用 / 医薬品・医療機器等安全性情報 |
Research Abstract |
医薬品の安全性に関する重大な情報が新たに得られた場合には、規制当局や製薬会社は安全性情報の発出や添付文書の改訂等によって、当該情報を医療機関に周知する。このような情報伝達は医薬品の適正使用にとって極めて重要である事から、効率的な情報伝達法を検証する必要がある。そこで、本研究においては、B型又はC型肝炎ウイルスキャリアでメトトレキサート(MTX)服用患者での肝機能検査等の必要性に関して平成22年3月31日に発出された医薬品・医療機器等安全性情報が、どのような時間的経過で医療機関に周知されて行ったのかについてナショナルレセプトデータベースのレセプト情報を用いて検討した。具体的には、MTX服用患者において、医薬品・医療機器等安全性情報で指示のあった副作用回避のためのウイルス検査の実施率を指標として、安全性情報が医療機関へ浸透しているか検討した。また、ウイルス検査実施後、副作用回避のためにMTXから他の薬剤へ処方が変更されているケースも安全性情報の医療機関へ浸透率の指標となると考えた。その結果、ウイルス検査の実施については、安全性情報発出直前直後の平成22年3~4月期において実施率に変化はなく、1月~12月の年間を通して変化はなかった。また、MTX処方が中止された割合を調べたところ、ウイルス検査を実施した患者の方がMTX処方を中止している割合が高いこともわかった。以上の結果から医薬品・医療機器等安全性情報が発出された直前直後でのウイルス検査の実施率に変動はみられなかったため、医薬品・医療機器等安全性情報の発出そのものによる影響は低いことが示唆される。一方でウイルス検査を実施した患者の方がMTX処方の中止率が高かったことから、安全性に関する情報の内容においては、ある程度医療機関に浸透していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画の目的は、製薬メーカーや規制当局によって発出された医薬品による重篤な副作用に関する安全性情報が主として医療機関に対してどのように浸透しているのかを定量的に測定すると共に、医療機関のどのような特性が、安全性情報の浸透に影響を与えているのかを明らかにすることにある。ナショナルレセプトデータベースを用いる疫学研究はこれまでにほとんど行われたことのない、全く新しい手法であることから、平成23年度は、厚生労働省の「レセプト情報等の提供に関する有識者会議」および名古屋市立大学研究倫理審査会による研究内容に関する審査を受けるとともに、レセプト上の個人情報保護を目的とした諸規定や大規模データのハンドリングのためのハードウェア、ソフトウェアの整備を行った。平成24年度は厚生労働省からナショナルレセプトデータの提供を受けて、平成23年度に整備したハードウェア、ソフトウェアを用いることによって、大規模データのクリーニングを実施した。さらに、レセプトデータを使用した医薬品の安全性情報の浸透を定量的に測定することができた。また、安全性情報の浸透に影響を与える要因として、外来と入院、地域性、DI室設置の有無の影響を調べた。以上の状況から本研究は順調に推移していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、ナショナルレセプトデータベースを取り扱うために必要な研究室の情報セキュリティーに関する規定および設備の整備や、研究の実施に必要な諸審査機関からの実施承認の取得、また、ナショナルレセプトデータベースを解析するために必須となる基盤的手法の確立を行い、その後、厚生労働省よりナショナルレセプトデータの提供を受け、安全性情報の浸透に関して定量的な解析を行うことができた。平成25年度はこれらの成果をもとに、安全性情報の伝達に影響を与える要因をさらに詳しく解析し、実効性の高い安全性情報の発出に関する手法を提案したい。並行して、研究成果を関連学会および原著論文として発表するための準備を進める。また、平成25年度は、ナショナルレセプトデータベースを用いることによって、医薬品の有効性と安全性に関する情報が少ない特殊集団(高齢者、幼児、妊婦等)での医薬品の使用実態調査について研究を発展させる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、主として大規模データのハンドリングのためのハードウェア、ソフトウェアの整備に研究費を使用したが、リース期間等に関する契約上の問題で一部の研究費を平成25年度に使用することとした。平成25年度は、引き続き大規模データのハンドリングのためのソフトウェアのリース料に使用するとともに、データの統計解析をするソフトウェアを購入するする予定である。また、研究成果を発表するための出張費と原著論文の投稿料に支出する。これらの支出によって、本研究を完結させるとともに、研究費の全額を使用する予定である。
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Research Products
(15 results)
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[Journal Article] A whole-genome association study of major determinants for allopurinol-related Stevens-Johnson syndrome and toxic epidermal necrolysis in Japanese patients. Pharmacogenomics J.2013
Author(s)
Tohkin M, Kaniwa N, Saito Y, Sugiyama E, Kurose K, Nishikawa J, Hasegawa R, Aihara M, Matsunaga K, Abe M, Furuya H, Takahashi Y, Ikeda H, Muramatsu M, Ueta M,
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Journal Title
Pharmacogenomics J.
Volume: 13
Pages: 60-9
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Significant association between hand-foot syndrome and efficacy of capecitabine in patients with metastatic breast cancer.2012
Author(s)
Azuma Y, Hata K, Sai K, Udagawa R, Hirakawa A, Tohkin M, Ryushima Y, Makino Y, Yokote N, Morikawa N, Fujiwara Y, Saito Y, Yamamoto H.
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Journal Title
Biol Pharm Bull
Volume: 35
Pages: 717-24
Peer Reviewed
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[Presentation] 日本人における抗てんかん薬誘因性SJS/TEN とHIAタイプとの相関解析2013
Author(s)
杉山永見子,鹿庭なほ子,高橋幸利,古谷博和,村松正明,木下茂,造田泰誠,黒瀬光一,頭金正博,前川京子,矢上晶子,安部正通,外囲千恵,上田真由美,池田浩子,池揮善郎,松永佳世子,相原道子,斎藤嘉朗
Organizer
日本薬学会第133年会
Place of Presentation
横浜
Year and Date
20130327-20130330
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