2012 Fiscal Year Research-status Report
リーリンシグナルと神経栄養因子が関与する疑核ニューロンの腹方移動制御機構の解析
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23590218
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
薛 富義 神戸大学, 医学部, 技術専門員 (30403231)
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Keywords | リーリン / Dab1 / 疑核ニューロン / 細胞移動 / マウス |
Research Abstract |
脳幹の運動性脳神経核ニューロン、特に発生段階において特に長い距離を移動する疑核ニューロンの腹方移動および位置決定におけるリーリンシグナル系の機能を明らかとするため、リーラーおよびDab1変異ヨタリマウスの顔面神経核および疑核ニューロンの分布パターンについて比較した。その結果、顔面神経核ではリーラーよりもヨタリマウスでより多数のニューロンが背方に異所性に分布するなど、移動障害の程度に顕著な差異が認められた。一方、疑核ニューロンは、両変異動物のいずれにおいも移動経路の途上でニューロンが鎖状にとどまっており、明らかな差異を認めなかった。また、これらニューロンにおけるリーリン-Dab1シグナルの発現様式を調べるため、腹部食道にコレラトキシン(CTB)を注入し、逆行性に疑核ニューロンのcompact formation(AmC)を標識するとともに、抗リーリンマウスモノクローナル抗体との蛍光二重免疫組織化学を行った。その結果、ほぼ全てのCTB標識AmCニューロンがリーリン陽性であることが判明した。しかし、顔面神経核はリーリン陽性を示さずDab1陽性であったことから、顔面神経核の移動にはリーリン-Dab1系とは別のシグナル経路によって修飾を受ける一方で、疑核ニューロンの移動はリーリンシグナル系依存的である可能性を指摘した。現在、BrdUを用いた異所性ニューロンのBirthdate-labelingを行うとともに、リーリン-Dab1シグナル系と相互作用するシグナル経路の候補として、皮質ニューロンの移動に影響を与える神経栄養因子BDNF-TrkBシグナル系、およびVEGF/ニューロピリンシグナル系などの関与を仮説立て、顔面神経核および疑核ニューロンにおけるこれら分子の時期特異的な発現様式について、免疫組織化学法等により解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
リーリンシグナル系変異動物であるリーラー・ヨタリマウス顔面神経核および疑核ニューロンが移動障害により異所性に分布すること、および正常マウスにおけるこれらニューロンのリーリン-Dab1シグナルの発現様式については前述の通り解析を終えることができたが、当初の計画より解析がやや遅れている。その理由として、前年度より進行中の逆行性トレーサおよびBrdUを用いた二重標識による異所性ニューロンのBirthdate-labelingに関して、変異動物が術後に死亡する、あるいはトレーサの標識が不充分なため、二重標識されない等の実験例が散見され、各発生ステージのサンプル数が充足されていないためである。そのため、次の実験段階であるニューロンの腹方移動メカニズムの解析に関しても、連鎖的に進行が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度より進行中の異所性疑核ニューロン誕生日決定に関しては、各発生ステージのサンプル数が充足されていないため、今後も引き続き解析を進めていく。また、これと同時並行的に、次段階の腹方移動メカニズムの解析を推進するため、腹方移動時期特異的にこれらニューロンおよびその近傍で発現していると考えられる細胞表面レセプターおよび細胞接着因子等の発現パターンを各発生段階の胎仔脳を用いて発生時空間的に調べる。以上により、顔面神経核および疑核ニューロンの腹方移動時期特異的な調節機構の相違点を明らかとしたい。また、これらニューロン移動における神経栄養因子との関与について調べるために、TrkA/ TrkB、ニューロピリンなど各種神経栄養因子の受容体の発現様式を免疫組織化学法により確認するとともに、リーリンシグナル系変異動物の胎仔脳室内に神経栄養因子を投与することにより、疑核ニューロンの腹方移動の正常化を試み、疑核ニューロンがリーリンシグナル系およびBDNF等神経栄養因子によって協働的に制御されることを明らかとしたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度は主として各種免疫染色用の抗体等の試薬、および変異動物の系統維持に必要な飼料等の購入にとどまったため当初の予算を繰り越したが、本年度においては、設備備品として研究室人員の増加に伴い、組織切片作成用のミクロトームおよびデジタル顕微鏡撮影装置の増設および動物手術に必要な各種器材の購入を計画している。また消耗品としては前年度同様、各種抗体等の試薬類は全体の予算に占める割合が大きくなると見積もっている。旅費に関しては、年2回程度の学会参加・成果発表旅費を計上している。その他、各ミュータント動物の系統維持のため、学内動物実験施設にて受益者負担が生じるため、相応の飼育管理費を計上している。次年度以降については、上記に加え、前述の神経栄養因子の脳室内投与に必要なマイクロインジェクターなどの器材は既存のものがないため新規の購入を予定している。
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