2011 Fiscal Year Research-status Report
経リンパ脳脊髄液側副吸収路における正常・異常漏出機序の形態学的解明とその動態解析
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23590220
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
三浦 真弘 大分大学, 医学部, 講師 (50199957)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内野 哲哉 大分大学, 医学部, 助教 (70423697)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 脳脊髄液 / 髄液側副吸収 / 硬膜外リンパ系 / 脳脊髄液減少症 / 日本ザル / ICG-PDF観察 / 脈管外通液路 / 酵素組織化学 |
Research Abstract |
2011年度は、主に腰髄膜と頸髄膜の硬膜-神経根領域から生理的髄液(CSF)漏出現象(側副吸収路)の動物実験的検証(CSF側副吸収動態)と髄液漏出に関連する髄膜脈管外通液路(PLC)の形態学的特徴について解明を試みた。脳脊髄液減少症の典型的な臨床像とされるRIシンチ画像における腰髄領域からの高頻度の漏出現象について未だその本態は解明されていない。全身麻酔下にて日本ザルのクモ膜下腔にインドシニアグリーン(ICG)液を注入して Photodynamic Eye(PDE) にて脊柱管・腹腔内から経時的に検索した結果、腰髄領域では神経根へのICG伸展は認められたものの、生理的髄液漏出・腰部体性リンパ系への吸収動態は検索全例で認められなかった。これは硬膜-神経根を温存した解剖体を用いたICG-PDF観察においても同様の現象を確認した。ただし注入後12時間を経過すると硬膜-神経根移行部から硬膜浅層への浸潤・ICGの限局的逸脱も認められた。以上ことから、RIシンチで漏出が鑑別される神経根領域からのCSF漏出像(クリスマスツリー徴候)がCSF漏出を伴わない正常像である可能性が高いことが示唆された。一方、頸髄・胸髄領域では、注入早期から髄圧上昇に伴い両者の髄膜領域で発達する脊髄硬膜外リンパ系(申請研究にて解明)を介して椎骨傍リンパ節群に吸収される生理的CSF側副吸収路の存在とそれらがCSF圧制御機構に関わる構造体であることを明らかにした。また頸・胸髄領域の神経根移行部のSEM検索において、CSF側副吸収路に関わるPLCとしてクモ膜小孔ならびに硬膜篩状斑構造の存在を証明できた。一方、腰髄領域の硬膜-神経根領域では硬膜外リンパ系が未発達であることに加えてPLCに相当する篩状斑を明らかに検証できなかったことでICG-PDF観察においてCSF側副吸収動態が同領域で乏しいことの構造的根拠を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脳脊髄液(CSF)の側副吸収路の正常と異常吸収機序の解析を、動物実験に申請者が独自に考案したin-vivo ICG-PDE蛍光イメージング解析法を応用したことで、従来不明のままであった腰髄領域クモ膜下腔内のCSF動態を硬膜脆弱部・嚢胞出現部(硬膜-神経根移行部)で形態学的に正確に評価することができた。またその一方で、ICG-PDE蛍光イメージングにおいて能動的なCSF側副吸収路と脈管外通液路(プレリンパ チャンネル)ならびに硬膜外リンパ系とCSF圧調節機序との関係についてin-vivo解析結果と関連構造の検証も可能となった。硬膜-神経根移行部に潜在する脈管外通液路の機能構造については、結合組織性構造であるためin-vivo観察にはならないが、解剖体デモ試料を用いたICG-PDF解析においてもin-vivo観察同様の結果を導くことがヒト組織において検証できたことの意義は大きいと考える。今後のヒト組織を用いた実験応用に期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
髄液漏出制御において重要な働きを演じると考えられる硬膜外リンパ管系の神経制御に関わる神経支配様式ならびに髄液圧をコントロールすることが推測される硬膜圧受容器(メカノレセプター)の存在有無について免疫組織化学・電顕的手法を用いて詳細に検討することで、脳脊髄液の経リンパ管側副吸収路を介する脳脊髄液圧調節と神経学的制御機構との関係有無について追求する予定である。24年度の研究計画を以下に列挙する。1. CSF側副吸収に関連する硬膜外リンパ管網(ELN)ならびに硬膜の機械的伸展に呼応する神経制御機構の有無とその解析。1) ELNの微細分布とその支配神経の検索(頸髄膜を中心にして)。2) 脊髄硬膜枝に含まれるメカノレセプターの存在解析(組織化学法・電顕観察)。2. 硬膜外自家血注入療法 (EBP)の髄液漏出制御に及ぼす影響について解析する。1) EBPの硬膜被膜としての機能性に対する走査電顕的検証。2) ICG・インジゴカルミン注射液の吸収動態をEBP実施症例とそうでない正常症例とで比較検討。1) 硬膜-神経根の髄膜内の神経成分の同定には、アセチルコリンエストラーゼ染色、GFAP NSETH 染色、鍍銀染色を併用することで、特に硬膜枝内に存在するメカノレセプター受容器の存否を解析する。確認診断としてはTEM法を用い、SEM化学的消化法も行なう。2)ELNの神経支配様式の検索(頸髄膜領域)。リンパ管の解析には(1)5’-nucleotidase-ALPase2重酵素染色とD2-40免疫染色を用いる。3.リンパ管壁の神経線維の解析には1)と同様の染色法を応用する。また(4)電顕を用いてリンパ管壁周囲の神経線維の観察も行う。3) EBPを実施した症例と実施しない症例をICGならびにインジゴカルミン注射液の生体内での吸収動態を評価する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.ICG-PDF蛍光イメージング解析(解析機器一式レンタル):525000円2.リンパ管支配神経の解析(神経免疫染色):370000円3.実験動物購入費:500000円
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Research Products
(11 results)