2011 Fiscal Year Research-status Report
骨格筋形成におけるWNTファミリーとTGFベータファミリーの相互関係
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23590227
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Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
濃野 勉 川崎医科大学, 医学部, 教授 (20098619)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | Wnt4 / Wnt3a / マイオスタチン / C2C12 / 筋芽細胞 / 骨格筋分化 |
Research Abstract |
骨格筋の成長を抑制するTGFβスーパーファミリーのマイオスタチンに対して拮抗する作用をもつWnt4を中心に,骨格筋形成と筋芽細胞の分化における筋肥大効果を他のWntファミリーやWntシグナル調節分子と比較し,このシグナルが骨格筋再生における作動薬となり得る可能性を検討した。Wnt4はマイオスタチン欠損マウスでその発現が上昇し,ニワトリ胚で強制発現すると骨格筋が肥大化する。しかし,Wnt4組換えアデノウイルスを作成し,マウス前脛骨筋で強制発現させたが,筋組織の肥大に有意な効果は見られなかった。一方,筋芽細胞株C2C12を用いて筋分化におけるWntシグナル経路に関与する因子の変動をQPCRで分析すると,Wnt4のみならずWnt6, Wnt9a, Wnt10a, Sfrp2, Porcupineの有意な発現上昇が見られた。これらWntファミリーのうち,過剰発現したときに筋分化の活性が顕著に見られるのはWnt4, Wnt6, Wnt9aであった。C2C12で過剰発現したとき,Wnt4はβカテニン経路と拮抗することにより筋分化を促進していることがわかった。さらに,抗癌剤として開発されたβカテニン/TCF複合体形成の阻害薬FH535,キナーゼ阻害剤のK252aに筋分化促進作用があることが判明した。標準および非標準のWntシグナル経路に影響するこれらの低分子化合物は,Wnt/βカテニン経路の切り換えを介して筋分化を調節していることを示唆しており,筋疾患に対する治療薬として利用できる可能性を示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Wntファミリー間で筋芽細胞株に対する作用に大きな差が見られることが判明した。そのため,βカテニン経路を介するWnt3aとそれに対して拮抗作用を示すWnt4を中心に,筋分化に対する効果を時間差で調べた。その一方で,筋分化の誘導過程ではTGFβスーパーファミリーのうち,Smad1/5を介して作用するBMP4の発現が顕著に上昇することが分かったが,BMP4自体は筋分化を抑制した。これを確認するためにBMP4に拮抗するノギン(noggin)を加えたところ,Wnt存在下で筋分化が促進した。このことから,Wnt/βカテニン経路とBMP/Smad経路とのシグナルクロストークが推測される。今回の研究課題では,TGFβファミリーとWntとの関係を中心に調べる計画であったので,このような結果は想定の範囲内の効果と判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
Wnt3aとWnt4は筋分化に対する作用が相補的であることが判明したので,これらのシグナルがβカテニン系に対してどのように影響するかを比較する。筋芽細胞株に対して低血清培地による分化誘導をかけなくても,TGFβスーパーファミリーに対する阻害タンパク質を用いることで,Wntシグナル経路との関係を解明して行く。βカテニンの動態をマーカーとして,リコンビナントWnt3a,Wnt4,Wnt5aなどを用いて効果を検証したが,アデノウイルスベクターを用いた発現系に比べて作用が弱く,再現性のある結果は得られていない。従って,組換えアデノウイルスを用いて筋芽細胞株でSmad1/5とSmad2/3のリン酸化およびβカテニンの細胞内局在を指標に,シグナル経路の相互関係を調べる予定である。次年度使用額が生じたのは,使用予定であったエピトープの異なるβカテニン抗体が年度内に手に入らなかったためであり,これは今年度の研究費と合わせて抗体の購入に使用する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究補助のために予定していた人件費・謝金は,今のところ適切な人材が見つからないので,物品費として使用する予定にしている。これらは遺伝子発現解析を外部委託するときの経費として使用する予定である。
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Research Products
(4 results)