2012 Fiscal Year Research-status Report
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23590228
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
妹尾 春樹 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90171355)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉川 究 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90400481)
目崎 喜弘 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40431621)
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Keywords | ビタミンA / 粘膜固有層 / 消化管 / ビタミンA貯蔵細胞 / 細胞外マトリックス / 免疫監視 / 炎症性腸疾患 / 肝臓星細胞 |
Research Abstract |
消化管(粘膜固有層)にビタミンA貯蔵細胞が存在することを明確にする。その上でこのビタミンA貯蔵細胞を単離・培養して、生化学的、分子細胞生物学的に解析し、機能を明らかにする。すなわち、ビタミンAや脂肪の吸収・貯蔵機能や免疫監視、コラーゲン等の細胞外マトリックスの合成・分泌と分解の機能を解明する。これによって、メタボリック症候群やクローン病、潰瘍性大腸炎等の炎症性腸疾患の原因解明と治療可能性への道への一助になることと思われる。本研究の目的は上述の通りで、研究実績の概要は以下の通りである。レチニルパルミテートをラットに皮下注射あるいは胃チューブによって経口的に投与した。皮下注射によってビタミンAは肝臓のA貯蔵細胞(肝臓星細胞)のみでなく、腸の粘膜固有層の細胞に取り込まれ貯蔵された。いっぽう、経口投与されたAは腸粘膜吸収細胞から吸収され、ついで粘膜固有層の細胞に取り込まれ、貯蔵された。この細胞の形態は肝臓のA貯蔵細胞のそれに似ていた。すなわちAは細胞質の脂質滴の形で貯蔵されていた。以上の結果は、この小腸粘膜固有層の細胞はAを消化管からの吸収によっても、また大循環からも取り込み、貯蔵する能力を持つことを示している。肝臓以外に小腸にもAを取り込み貯蔵する細胞があって、Aの吸収と全身における恒常性(ホメオスターシス)の維持に役割を果たしていることが示唆された。また、上述のヤツメウナギにおいては回遊産卵期に腸が萎縮する。この際にこれら腸のA貯蔵細胞が周囲の細胞外マトリックスを貪食しリソソーム系で分解することによって、腸の萎縮を引き起こしていることが判明した。これらの結果は腸の結合組織のA貯蔵細胞は多様な機能を有していて、ヒトにおいても消化管の様々な疾患の成り立ちに関与することが推測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述の研究実績の概要の内容は、日本解剖学会、日本ビタミン学会、日本結合組織学会で発表し、高い評価を得ている。論文はCell Biol Intに投稿し、現在minor revisionとのrefereeの査読を受け、作業を進めている。このように国内だけでなく、国際的にも確実な評価を得ているのが理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
Wistar系雄性ラットの小腸から粘膜固有層にあるビタミンA貯蔵細胞を単離して培養系に移す(妹尾、吉川、目崎が担当する)。 一昼夜絶食にしたラットの小腸を深麻酔下に摘出し、細切して、0.05%コラゲナーゼと0.05%プロナーゼ混合溶液でインキュベートして、低速遠心によって小腸上皮細胞を除去する。上清をPercoll密度勾配遠心法によって各画分に分画する。手法に関しては申請者らが樹立した、肝臓のビタミンA貯蔵細胞の単離、同定、培養法を応用することで樹立できる。得られた各画分にふくまれる細胞を同定する。それには、透過型電顕による微細構造解析(妹尾が担当)。高速液クロによるビタミンAの定性と定量をおこなう(吉川が担当)。肝臓のビタミンA貯蔵細胞の特異的なマーカーであるデスミンとアルファー平滑筋アクチンの発現を免疫蛍光法およびRT-PCR法によって解析する(目崎が担当)。上記の手法によって得た細胞は10%FCSを含むDulbecco’s modified Eagle 培養液中で培養する。必要に応じてトリプシンを用いて、継代培養する。こうして細胞培養法を樹立して、さらに、得られた細胞を用いてビタミンAおよび脂質の取り込み・貯蔵を解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
すでに実験設備は備わっているので、上述の実験を遂行するための生化学的実験試薬、形態学的実験試薬、分子生物学的解析試薬に使用する計画である。
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[Journal Article] Accumulation of vitamin A in the hepatic stellate cell of arctic top predators2012
Author(s)
Senoo, H., Imai, K., Mezaki, Y., Miura, M., Morii, M., Fujiwara, M., Blomhoff, R.
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Journal Title
Anat Rec.
Volume: 295
Pages: 1660-1668
DOI
Peer Reviewed
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