2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23590234
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
藤田 秋一 鹿児島大学, 獣医学部, 教授 (60282232)
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Keywords | 超微細構造解析 / 電子顕微鏡 / 脂質 / ラフト / ホスホイノシトール |
Research Abstract |
研究実施計画にもあった、急速凍結-凍結割断標識法(Quick freezing-freeze fracture labeling method: QF-FRL法)をさらに改良し加圧凍結装置を併用することによって一層の培養細胞を細胞内で凍結割断することが可能となり、細胞内小器官の膜脂質についても分布解析方法を確立した。そして、小胞体のマーカー蛋白質であるチトクロームb5と緑色蛍光蛋白質(GFP)との融合蛋白質の発現培養細胞を用いることにより、細胞内割断法により作製したレプリカ標本において小胞体膜の同定を可能にした。 研究実施計画にある、膜脂質を特異的に認識する新たなプローブの開発に関して、途中段階ではあるが、抗PI(4)P抗体が特異的にPI(4)Pを認識することをリポソームのレプリカ標本を用いることにより確認することが出来つつ有る。またファスファチジルセリン(PS)に特異的に結合することが知られるFGE8蛋白質のE2ドメインとグルタチオン-s-トランスフェラーゼ(GST)との融合蛋白質を用いることによりPSを特異的に標識する方法を試している。 また昨年度来より行っている、ラフトに存在することが示されているMyrPalm-mCFPについて分布解析を行うため,その対照であるGerGer-mCFPと比較・検討を行う準備段階として,これらクローン遺伝子をパーマネントに発現する細胞株の樹立を試みている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年度より鹿児島大学に異動したこともあり、設備を含め研究体制を立ち上げる必要があった。特に、23年度は本研究の中心となる急速凍結および凍結割断装置がないために、直接的なデータを得ることはほとんどできず、当初の研究目的をほとんど達成することができなかったが、24年度は急速凍結および凍結割断装置を導入することができ、研究実施計画の一部を進めることができた。しかしながら、23年度の遅れは24年度にかなり影響しており、実施計画の通りには進められていないのが現状である。
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Strategy for Future Research Activity |
23年度の研究計画であった以下のことを行う. A.膜脂質を特異的に認識する新たなプローブの開発: 各リン脂質に特異的に結合する蛋白質ドメインとGSTまたはMBP融合蛋白質を形成し,標識の特異性を確かめる. B.細胞膜内葉に存在するラフト分子の検出と分布解析: 1) 内在性ラフト分子であるH-Ras, Fyn, Gαなどについて局在解析を行い,これら分子のクラスター形成がコレステロールに依存するかを検討する.2) 成長因子刺激などによる上記ラフト分子の局在の変化を解析し,PI(4,5)P2などとの関係の変化も解析する. C.細胞内オルガネラにおける脂質局在の可視化方法の確立: 1) 昨年度までの検討により細胞内オルガネラ膜を効率良く検出でき,各オルガネラを同定するマーカーを選択し,細胞内オルガネラを解析する方法を確立する.2) 各オルガネラ膜上でのリン脂質の二次元的分布を空間統計学的に解析する.3) 種々の生理的,実験的な条件でのリン脂質の分布変化を解析する. D.形質膜の外葉・内葉の相関を解析する方法の確立: 1) 双面レプリカを作製し,同一細胞膜の相補的な外葉・内葉を効率的に同定する方法を確立する.相補的レプリカ技術に必要なレプリカ作製用試料台を新たに設計・作製する,細胞を培養する基質に非対称の形状の目印を刻印する,細胞浮遊液に何らかの粒状物質を入れる, レプリカの断片化を防ぐため,Lexan樹脂でコートし,物理的に安定化する方法を用いるなど,精度と解析効率を高める方法を創出する.2) 上記1)の双面レプリカ法を用いて,細胞膜外葉のGM1, GM3, GPI結合蛋白質と,内葉のラフト分子であるH-Ras, Fyn, Gαなどの内在性ラフト分子,あるいはモデル系として既にラフトに存在することが示されているMyrPalm-mCFPの相関を定量的に解析する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に本研究の中心となる機器の導入は完了したので、研究費の大部分はその他,消耗品として,培養細胞関連試薬および器具,電子顕微鏡関連試薬および器具,組織染色用試薬,分子生物関連試薬,生化学関連試薬などを購入する予定にしている.国内学会(岐阜など)での発表および参加を予定しておりそのための国内旅行費を計上している.また国際学術雑誌に年間2報以上の論文掲載を目指しているので,そのための予算を計上している.
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