2011 Fiscal Year Research-status Report
骨髄間葉系幹細胞療法による糖尿病合併症の新規治療戦略
Project/Area Number |
23590239
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
永石 歓和 札幌医科大学, 医学部, 助教 (30544118)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤宮 峯子 札幌医科大学, 医学部, 教授 (10199359)
有村 佳昭 札幌医科大学, 医学部, 講師 (80305218)
安宅 弘司 札幌医科大学, 医学部, 助教 (30563358)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 糖尿病性肝障害 / 骨髄間葉系幹細胞 |
Research Abstract |
平成23年度は、糖尿病における臓器障害、とくに肝障害について詳細に評価し、障害に関与する骨髄由来細胞および標的臓器細胞の形態学的、機能的異常を解明した。さらに糖尿病性肝障害に対する骨髄間葉系幹細胞(MSC)治療の有効性を明らかにした。 ストレプトゾトシン腹腔内投与(STZモデル)、あるいはHigh Fat Diet給餌(HFDモデル)により高血糖モデルマウスを作成した。両モデルにおいて、体重、血糖値の変化、および肝障害を血液生化学検査にて評価したところ、STZモデルでは疾患群で高血糖の持続と著明な体重減少を認め、HFDではHFD摂食開始から5か月後に、疾患群で空腹時血糖200以上の高血糖と、週齢一致コントロールマウスの約1.5倍の体重増加(肥満)を認めた。AST/ALTは、両モデルともに疾患群で著明な上昇(AST 300-500 U/l, ALT 250-400 U/l)を認めた。 疾患群の肝臓組織では、GFPで標識された骨髄由来細胞 (Bone marrow derived cells, BMDCs) の著明な集積を認めた。疾患群の肝組織に集積したBMDCsは、免疫組織学的検索およびmRNAの発現解析から、M1マクロファージ形質を発現した。STZモデルでは、肝円索構造の障害を認め、HFDでは著明な大型の脂肪滴の沈着を伴う肝細胞の脂肪変性を認めた。肝実質細胞におけるTNF alpha, MCP-1, Toll like receptor 4の発現上昇を認め、類洞内皮細胞のICAM-1の発現も亢進していた。 さらにこれらの糖尿病モデルに対し、平成25年度に予定していたratMSC移植治療を行った。治療群では、STZ, HFDモデルともにAST/ALTの上昇が抑制され、HFDモデルでは肝細胞に沈着する脂肪滴の小型化が見られた。MSC治療により糖尿病性の肝障害が抑制された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成23年度に予定していた糖尿病モデルマウスにおける臓器障害について、特に肝臓における解析を進め、病態形成における骨髄由来細胞の関与、およびその機序を解析することができた。さらに、23年度計画内容を超えて、骨髄間葉系幹細胞(MSC)治療の有効性についても評価することができた。MSC治療の有効性機序の解析は、次年度以降の課題とした。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、以下の方向性で研究を進める。(1)糖尿病に合併する腎障害における骨髄由来細胞の関与とそのメカニズムの解析を進める。腎臓に集積する骨髄由来細胞の形質および細胞動態の解析を行う。(2)糖尿病における骨髄幹細胞ついて、造血幹細胞系については分化段階により分取し、各細胞の異常性を網羅的に解析する。間葉系幹細胞について、特異的表面抗原から分取し、各細胞の異常性を網羅的に解析する。さらに、骨髄間葉系幹細胞とニッチ細胞との関連、およびニッチ細胞への分化における異常性について解析する。(3)MSC治療の、糖尿病合併症としての肝障害、腎障害に対する有効性と、その機序解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費は、実験動物関連(CAG-GFP、C57BL/6、High fat diet)、免疫組織化学関連試薬、FACS解析・ソーティング関連試薬、DNAアレイ解析関連、PCR関連試薬、遺伝子導入関連試薬、細胞培養関連用品、各種試薬に使用する。とくに、骨髄幹細胞の網羅的解析に費用を要する。
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