2012 Fiscal Year Research-status Report
骨髄間葉系幹細胞療法による糖尿病合併症の新規治療戦略
Project/Area Number |
23590239
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
永石 歓和 札幌医科大学, 医学部, 講師 (30544118)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤宮 峯子 札幌医科大学, 医学部, 教授 (10199359)
有村 佳昭 札幌医科大学, 医学部, 講師 (80305218)
安宅 弘司 札幌医科大学, 医学部, 助教 (30563358)
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Keywords | 骨髄間葉系幹細胞 / 糖尿病 |
Research Abstract |
平成24年度は、糖尿病における①骨髄幹細胞の異常性、および②末梢臓器障害、とくに腎障害について評価し、障害に関与する骨髄由来細胞および標的臓器細胞の形態学的、機能的異常を解明した。さらに③糖尿病性腎障害に対する骨髄間葉系幹細胞(MSC)治療の有効性を明らかにした。 ストレプトゾトシン(STZ)150mg/kg腹腔内投与(STZモデル)、あるいはHigh Fat Diet給餌(HFDモデル)により、高血糖モデルマウスを作成した。両モデルにおいて、体重、血糖値の変化、および腎機能障害を血液尿生化学検査にて評価したところ、STZモデルでは疾患群で高血糖の持続と著明な体重減少を認め、HFDではHFD摂食開始から5か月後に、疾患群で空腹時血糖200以上の高血糖と、週齢一致コントロールマウスの約1.5倍の体重増加(肥満)を認めた。尿中アルブミン・クレアチニン比は、両モデルともに疾患群で著明な上昇(U-alb/Cr 15-50mg/g Cr)を認めた。 GFP骨髄キメラマウスを用いた検討で、疾患群の腎組織では、近位尿細管および糸球体周囲にGFPで標識された骨髄由来細胞 (Bone marrow derived cells, BMDCs) の著明な集積と組織学的障害を認めた。 さらに平成25年度に予定していたratMSCを移植する治療を行った。治療群では、STZ, HFDモデルともにU-alb/Crの上昇が抑制され、腎組織に集積するGFP陽性BMDCsの数も著明に減少した。 さらに、STZおよびHFDモデルにおける骨髄幹細胞の異常性について、造血幹細胞系については分化段階により分取し、疾患群とコントロール群のLT-HSCおよびMSCをFACSにて回収し、各細胞の異常性をDNAアレイを用いて網羅的に解析した。疾患群で発現が亢進あるいは低下している因子につき、現在発現確認を進行中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度に予定していた糖尿病モデルマウスに対する骨髄間葉系幹細胞(MSC)治療の腎機能障害に対する有効性についても評価することができた。MSCの有効性機序解析としてのMSC培養上清(MSC-CM)を用いた治療効果の検討、およびMSC-CMの成分解析は、次年度以降の課題とした。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、糖尿病マウスにおけるMSC移植治療について検討する。以下の方向で進める。 ①移植したMSCの局在・生着率の検討;STZあるいはHFDで誘導した高血糖マウスに、CAG-GFPから単離培養したMSCを経静脈的に投与する。GFPを標識として骨髄および末梢臓器におけるMSCの局在・生着率を検討する。 ②骨髄および末梢臓器におけるMSCの作用機序の検討 骨髄あるいは末梢臓器に生着したMSCの、HSCや標的細胞に及ぼす作用を検討する。MSCが産生する液性因子(HGF, VEGF, bFGF, Ang, SDF-1, STC, TGF-β等)の介在、あるいはMSCと標的細胞の直接接触による、生理活性物質の発現変化や標的細胞との癒合・アポトーシスの変化について解析する。MSCの培養上清あるいはその精製物の単独投与と、MSCとの併用投与、遺伝子改変MSC投与を比較することにより、MSCの遺伝子キャリアーとしての有用性についても検討する。さらに、MSC自身の標的細胞への分化転換による組織再生修復効果について検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験動物関連(CAG-GFP、C57BL/6、High fat diet)、免疫組織化学関連試薬、FACS解析・ソーティング関連試薬、DNAアレイ解析関連、PCR関連試薬、遺伝子導入関連試薬 細胞培養関連用品、試薬、各種薬品に使用予定である。 H24年度で研究費に残額が生じた理由は、STZモデルを優先的に作成したことによりHFDモデル動物の作成匹数が当初の予定よりも少なくなり、動物購入費用および給餌用高脂肪食の餌代が次年度へ繰り越したことによる。H25年度には、HFDモデルを作成することにより、これらの残額をすべて消費する予定である。
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Research Products
(3 results)