2013 Fiscal Year Research-status Report
骨髄間葉系幹細胞療法による糖尿病合併症の新規治療戦略
Project/Area Number |
23590239
|
Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
永石 歓和 札幌医科大学, 医学部, 講師 (30544118)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤宮 峯子 札幌医科大学, 医学部, 教授 (10199359)
有村 佳昭 札幌医科大学, 医学部, 講師 (80305218)
安宅 弘司 札幌医科大学, 医学部, 助教 (30563358)
|
Keywords | 骨髄間葉系幹細胞 / 糖尿病合併症 |
Research Abstract |
平成25年度は、糖尿病マウスにおけるMSC移植治療の効果とその有効性機序について検討した。 ①移植したMSCの局在・生着率の検討;STZあるいはHFDで誘導した高血糖マウスに、CAG-GFPから単離培養したMSCを経静脈的に投与し、GFPを標識として骨髄および末梢臓器におけるMSCの局在・生着率を検討したところ、投与7日目において肝臓、腎臓、骨髄に各々約1%程度のGFP陽性細胞(MSC)が検出された。 ②MSCによる治療効果の検討;GFP骨髄キメラマウスをSTZあるいはHFDで高血糖状態にしたのち、ラットから単離培養したMSCを経静脈的に投与したところ、モデルマウスの肝腎機能の改善が得られた。またHFDマウスの脂肪肝やインスリン抵抗性が改善した。また、肝臓、腎臓の主に間質に集積したGFP陽性骨髄由来細胞の数が、MSC治療により減少し、細胞障害性サイトカインの発現が減少した。 ③骨髄および末梢臓器におけるMSCの作用機序の検討;骨髄あるいは末梢臓器に生着したMSCの、標的細胞に及ぼす作用を検討した。有効性に比較して、標的臓器に生着するMSCの数が少なかったことから、MSCが産生する液性因子(HGF, VEGF, bFGF, Ang, SDF-1, STC, TGF-β等)が関与するとの仮説のもと、MSCの培養上清のみを連日投与したところ、細胞治療と同様の効果が得られたことから、MSCが産生・分泌する多彩な生理活性物質によるパラクライン効果が、肝腎障害を改善したと考えられた。MSCの培養上清の含有成分を解析したところ、VEGFやMCP-1を初め多数の増殖因子やサイトカイン、ケモカインを含有した。これらは、高血糖や高脂血症で障害された臓器の、実質・間質の修復、リモデリングに関与する因子を多く含有した。MSC自身の明らかな標的細胞への分化転換による組織再生修復効果については、明らかではなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度に予定していた糖尿病モデルマウスに対する骨髄間葉系幹細胞(MSC)治療の肝障害・腎障害に対する有効性を評価することができた。また、MSCの局所分布解析、MSC培養上清(MSC-CM)を用いた治療効果の検討、およびMSC-CMの成分解析等、MSCの有効性機序の解析もほぼ当初の計画通り進行した。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまで3年間の研究成果から、正常動物由来MSCを用いた糖尿病モデル動物の治療効果、および糖尿病モデル動物の骨髄から採取したMSCの異常性、を示すことができた。しかし、実際のヒト糖尿病患者由来の骨髄MSCの異常性の解析を行うことができず、今後の検討課題として残ったため、本計画の延長を申請した。平成26年度は、ヒト骨髄由来MSCの検討をまずin vitroで行い、自家移植を念頭にした臨床応用に向けた基礎研究へ発展させる予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
糖尿病疾患患者由来の骨髄細胞株を複数株購入し解析する予定で費用を計上していたが、異なるドナー由来の複数の細胞株の確保が困難となり、年度内に購入・解析できる細胞株が予定数よりも減少し、この分の予算を次年度に使用することとした。 糖尿病疾患患者由来の骨髄間葉系幹細胞株および専用培地の購入費用として使用し、ヒト糖尿病患者における骨髄細胞の異常性解析を行う。
|