2014 Fiscal Year Research-status Report
遺伝子改変マウスを用いた糸球体濾過システムと上皮バリアの統合的解析
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23590242
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Research Institution | Dokkyo Medical University |
Principal Investigator |
伊藤 雅彦 獨協医科大学, 医学部, 准教授 (70270486)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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Keywords | 腎臓 / 糸球体 / 足細胞 / スリット膜 / 血液濾過 / 密着結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、これまでの研究実績をまとめた論文一報が受理・掲載された。
本研究は、体内恒常性の調節に重要な腎糸球体による血液濾過の分子基盤について理解を深めることを目的としている。血液濾過を中心的に担うことが近年示唆されているのが糸球体上皮細胞の足突起とその間に形成されるslit diaphragmである。slit diaphragmは分化前の糸球体上皮細胞に存在する密着結合もしくはアドヘレンス結合が特殊に変化した構造であると考えられてきたが、その形成・維持おいて密着結合・アドヘレンス結合の構成分子が果たす機能的な役割についてはこれまで十分に明らかにされていない。 この課題を解明するため、密着結合の構成分子ZO分子を糸球体上皮細胞特異的に欠損させた。floxed ZO-1マウスとNephrin-Creトランスジェニックマウス(Creリコンビナーゼを腎糸球体上皮細胞特異的に発現)を用いて目的マウスを作製した結果、変異マウスは出生直後よりタンパク尿を発症し、成長障害と衰弱を伴って6週齢前後に死亡した。腎組織標本を解析したところ、ヒト巣状分節性糸球体硬化症に類似した病理像を示し、さらに透過型電子顕微鏡および走査型電子顕微鏡を用いた解析から、変異マウスでは足突起が糸球体基底膜から剥離しslit diaphragmが正常に形成されていなかった。また分子レベルの変化について検討したところ、slit diaphragmを構成する膜タンパク質の発現が低下し、加えて、局在様式にも大きな乱れが生じていることが明らかになった。 詳細に分析した結果、糸球体上皮細胞が前駆細胞から最終分化する段階において分子レベルの変化が生じ、それによって細胞レベルさらに組織レベルでの構造的・機能的な異常が広がっていく可能性が強く示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究目的に掲げた、糸球体上皮細胞特異的にZO-1,ZO-2,および両遺伝子を共に欠損するマウスを作製することに成功し、ZO-1欠損マウスに関する解析結果を論文として掲載することができた。
一方で、飼育スペースや交配効率の問題などから、ZO-2ならびにZO-1/ZO-2欠損マウスについては解析途上にある。したがって現在までの達成度を、やや遅れているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
論文掲載によってZO-1欠損マウスの解析が一段落したことから、ZO-2およびZO-1/ZO-2欠損マウスの飼育スペースを拡充し、解析に使用できる個体数の確保に努める予定である。
また、ZO-1欠損マウスに関する論文投稿に際してレビュワーより寄せられた意見を加味して、変異マウスの示す生理的・生化学的・組織学的な変化がどのような分子経路を介しているのか詳しく解析し、糸球体疾患の分子機序の解明に役立てるよう研究を展開していきたい。
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Causes of Carryover |
目的通りに糸球体上皮細胞特異的にZO-1を欠損するマウスを作製し、形態・機能の異常に関する論文を掲載できたが、ファミリー分子であるZO-2の欠損マウスおよびZO-1とZO-2を同時に欠損するマウスについては、作製に至ったものの交配効率や飼育スペースの関係からマウス個体数を十分に確保できず、解析が完了していない。 これらマウスについて継続した解析を行う必要性のため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ZO-2欠損マウスおよびZO-1・ZO-2の同時欠損マウス、また比較のために引き続きZO-1欠損マウスを飼育し、形態的・機能的解析を行うための経費に充てることを計画している。また、ZO-1欠損マウスの解析論文では実施することができなかったマイクロアレイ解析など新たな解析法も行い、得られるデータをまとめた論文の作成費用・掲載費用また学会発表等を行うために使用したいと考えている。
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