2013 Fiscal Year Research-status Report
移植細胞シートと宿主を結ぶ架橋血管の内皮連結に周皮細胞が果たす機能的役割の解明
Project/Area Number |
23590245
|
Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
森川 俊一 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (70339000)
|
Keywords | 組織学 / 周皮細胞 / 細胞シート工学 / 移植 |
Research Abstract |
宿主と移植組織間の迅速な血流開通は移植の成否を左右する重要な要件である。我々はこれまで、移植細胞シートの生着率向上等、臨床的技術開発に貢献できる研究成果を得ることを目的として、宿主と移植細胞シート間の血流開通機構の細胞レベルの検索を進めてきた。具体的には、血管網を内在させた積層化心筋細胞シートを宿主動物に移植し、形態学的手法を駆使した検索を進めてきたが、この検索からは、シート由来血管と宿主由来血管との血流開通が移植後極めて早期に成立すること、およびこの早期の血流開通が、細胞シートと宿主組織間にやはり極めて早い時期に新生される吻合血管によって可能となることが明らかとなった。さらに、この吻合血管壁に周皮細胞が既に分布し、これら周皮細胞を含めて吻合血管壁が全体として一続きの基底膜で覆われていたことから、我々は細胞シート移植において周皮細胞が基底膜を産生・分泌することで血管内皮細胞に遊走のための足場を提供し、移植早期における宿主と移植組織間の血管吻合を促すという仮説を立てるに至った。 以上のことを背景に、本研究においては、この仮説を実証するべく、宿主と移植細胞シートの吻合血管形成部への周皮細胞動員シグナル経路や周皮細胞による基底膜成分産生能について、多重免疫組織化学染色法・透過型電子顕微鏡法をはじめとした種々の形態学的手法を駆使し検索を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の当初の研究期間は平成23-25年度であったが、平成24年度状況報告書にも記したように、途中、周皮細胞による基底膜産生機能に関わる良質なマーカーの入手に窮し研究に遅れが生じていた。このことにより、当初の計画では25年度の研究機関終了までに研究成果を国際誌上で論文発表するという目標を掲げていたものの、その達成に向けては少々時間的に厳しい状況が生じていた。この状況を踏まえ、1年間の補助事業期間延長を申請し、平成25年3月26日の時点でこれを承認していただいた次第である。現在では上記した懸案のマーカーについても良質なものの入手に成功しており、最終段階の応用実験にも取り組めている状況である。今後は速やかに最終実験を遂行した後、これまでの研究成果をまとめる作業に移り、取得済みの画像データについても必要に応じて適宜再取得を行い、より説得力のあるチャンピオンデータに差し替えつつ論文作成を進めていく所存である。1年間の期間延長を承認いただいたことで、現時点では、本研究を事業期間内に当初の計画に沿ったかたちで完了させられるものと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在、宿主と細胞シートの吻合血管形成部への周皮細胞動員メカニズム検索の最終的実験として、周皮細胞動員のシグナル経路阻害が宿主と細胞シートの血流開通に及ぼす影響について検索を遂行中である。具体的には、血管壁への周皮細胞動員に必要不可欠なPDGFB(Platelet derived growth factor B)とその受容体PDGFRβ(Platelet derived growth factor receptor β)を介したシグナル伝達経路を選択的に阻害する薬剤であるtyrphostin AG1295で処理した細胞シートを作製し、宿主動物に移植する実験を実施している。この実験を通じて、宿主と細胞シートの吻合血管形成に果たす周皮細胞の働きをより明確に把握できるものと考えている。この最終実験を速やかに遂行した後には、上記したように、これまでの研究成果をまとめて論文作成の段階に移る計画である。最終実験に関するものを除き、論文作成に必須なデータは概ね収集し終わっているため、論文作成中に既得の画像データを吟味し、適宜差し替え(再染色・再画像取得)等の作業を行うことを考慮に入れても、事業期間内に滞りなく論文作成および国際誌上での発表が行えるものと考えている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「現在までの達成度」の項に記したように、事業期間内の24年度において、多重染色の実験系に使用する良質な試薬の入手に窮したことにより研究に遅れが生じ、当初計画していた事業期間内での成果の論文発表という目標達成が時間的に難しいと考えられた。このため、1年間の補助事業期間延長を申請してこれを承認していただいた次第である。現在では上記の問題もクリアして研究を順調に進め、最終段階の実験にも取り組めている状況であり、この実験を速やかに遂行した後、論文作成の段階へ進む計画である。現在遂行中の最終実験、また、論文掲載用に既得の画像データをより説得力のある画像データへ差し替えるための再実験に必要な試薬等については既に概ねが取得済みであるため、次年度使用額として申請した400,000円は、主に研究成果を論文として発表するために使用する所存である。 上述のように、次年度使用額として申請した400,000円は、主に研究成果を国際誌上で論文発表するための資金として使用する。研究成果は2報の論文として国際学術誌上で発表したいと考えている。このうち1報目の論文では本研究で得られた成果について、2報目の論文では、本研究の遂行中に派生的に開発できた新染色法について報告する計画である。これらの論文発表用の経費(英文校正費・印刷費)については、我々の過去の論文発表時の経験をもとに試算したところ、英文校正費が65,000円、印刷費が135,000円(顕微鏡画像が多いためこの金額となる)と概ね算出され、論文一報あたり合計200,000円の経費が必要と見込まれる。従って、論文2報分の経費として計400,000円を次年度に使用する計画である。
|
Research Products
(11 results)