2012 Fiscal Year Research-status Report
神経伝達物質放出カルシウムセンサーの膜融合タンパク質複合体からの解離
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23590259
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
西木 禎一 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (70423340)
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Keywords | 神経科学 / 刺激分泌連関 / シナプス小胞 / カルシウムイオン / 開口放出 |
Research Abstract |
神経伝達物質放出の分子機構を理解するため、カルシウムセンサーシナプトタグミンとスネア膜融合複合体の相互作用を解明することが本研究の目的である。前年度、私達はシナプトタグミンとスネア複合体の結合が、生理的温度においてカルシウム依存性に解離することを見いだした。以前私達は、シナプトタグミンとスネア複合体の結合が、スネアの構成因子のうち、シンタキシンを介していることを示した。これらを踏まえ今年度は、スネア複合体からの解離はシナプトタグミンのシンタキシンへの結合阻害によること、解離にはシナプトタグミンへのカルシウム結合が必須であること、シナプトタグミンの2つのカルシウム結合ドメイン(C2A、C2B)の解離における役割を明らかにするため、ヒト胎児腎臓由来HEK293細胞に強制発現させた組換えタンパク質を用いて解析した。 組換えシナプトタグミンは、脳から精製したスネア複合体とカルシウム非存在下で結合し、カルシウム濃度依存性に解離した(IC50 = 0.9 mM)。組換えシナプトタグミンとシンタキシンの結合も、カルシウム濃度依存性に阻害された(IC50 = 0.6 mM)。シナプトタグミンの二つのカルシウム結合ドメイン、C2AとC2Bのカルシウム結合部位は5つのアスパラギン酸(D)から構成され、二番目のアスパラギン酸(D2)が重要であることが明らかにされている。これらのD2残基に変異を導入し、スネアからのカルシウム依存性解離に対する影響を調べたところ、シナプトタグミンのC2AではなくC2Bドメインへのカルシウム結合が必須であることが明らかとなった。神経細胞からの伝達物質放出にはC2AよりもC2Bドメインへのカルシウム結合が必須であること明らかにされている。したがって、本研究の成果は、カルシウムによるシナプトタグミンのスネア複合体からの解離が伝達物質放出を引き起こすことを示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述したように平成24年度の研究計画は当初の計画通りに進み、予想された結果が得られたため。
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Strategy for Future Research Activity |
脂質膜に再構成したスネアからのシナプトタグミンのカルシウム依存性解離について調べる。得られた成果をまとめ、査読つき科学雑誌に論文を発表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
計上していた外国旅費は、北米神経科学界会議での成果発表を24年度に前倒しで実施したため、今年度は計上しない。この額は今年度の未使用額と合わせ、消耗品費に変更する。その結果、消耗品比が予定額の約70%増となるが、これは次年度から研究協力者が一人増えるため、研究計画の効率的遂行に充てる。
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[Presentation] Ca2+-independent binding of synaptotagmin to syntaxin via its C2B effector region2012
Author(s)
Nishiki T, Masumoto T, Suzuki K, Fujita M, Fujimura A, Michiue H, Ohmori I, Tomizawa K, Matsui H
Organizer
42nd Annual Meeting of the Society for Neuroscience
Place of Presentation
New Orleans, LA, USA
Year and Date
20121013-20121017
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