2011 Fiscal Year Research-status Report
二重還流モデル腎集合管細胞を用いたイオンチャネル発現の分子制御機構
Project/Area Number |
23590264
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
久保川 学 岩手医科大学, 医学部, 教授 (70153327)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 腎尿細管 / 集合管 / イオンチャネル / MI細胞 / インサート / 二重還流装置 |
Research Abstract |
腎尿細管に存在するイオンチャネルは、生体が種々の環境に適応して生存し得る体液の水・電解質の調節に欠かせない。本研究は、培養尿細管細胞を用いて、生体内の組織に近い条件下における様々な因子によるイオンチャネルの機能や発現調節の分子機構について調べることを目的としている。平成23年度には尿細管細胞を細孔(0.2μM))を有する細胞培養用メッシュを装備したディッシュ(インサート)上でシート状に単層培養し、それを管腔側と基底側を二重還流する方法を確立するを第一の目的とした。インサートを用いた培養細胞の実験は少なくないが、電気生理学的実験等でイオンチャネルを二重還流下に観察した報告は未だなく、実験装置の設定や実験手技に困難な点が予想された。実際、恒温二重還流装置は完成したものの、還流時の微小な振動がパッチクランプ実験を困難なものにした。そこで、管腔側の還流は従来のペリスタポンプで還流し、閉鎖腔となる基底側の還流にはペリスタポンプを用いず、約10cmの高低差の落差により生じる流速を用いて還流を行うこととした。さらに試作した二重還流装置も度重なる不具合のため、二重還流装置そのものの開発に時間を要した。さらに、23年度末になりやっと還流装置上の細胞膜へのパッチクランプに成功したものの、その成功確率は未だ不十分な状況にある。新たな装置の開発の難しさを感じさせられながらも、何とか二重還流装置の一応の感性に至ることができ、今後さらにパッチクランプ実験の精度を高めたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年度は、哺乳類尿細管培養細胞を管腔膜側と基底膜側とを独立して還流させる恒温二重還流装置の構築することを目的とした。年度末になり、どうにかパッチクランプ実験を行える二重還流装置が完成し、その意味では初年度の達成度は80%程度と考えられる。しかし、チャネルの同定等は未だ不十分であり、研究の遅れを感じている。その理由の第一は、二重還流装置の試作品に、なかなか満足のいくものがなく、その開発のみに約半年がかかってしまったことが挙げられる。その後も還流中の振動でパッチパイペットが外れることが多く、最近になり、やっと還流方法の工夫によりその振動の除去にも成功し、今後の展望が開けるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
完成した培養細胞の恒温二重還流装置を用いて、マウス腎集合管細胞であるM1細胞の管腔膜に生理的に発現しているイオンチャネルの検索を行う。恐らく、時間的制約を加味すると、これに半年近くを要するものと考える。尿細管イオンチャネルにはいくつかの共通点があり、とくにヒト腎近位尿細管細胞の内向き整流性Kチャネルやラット集合管からクローニングされたROMKチャネルとM1細胞のKチャネルにはその調節に類似性があることから、両者を比較しつつチャネルの機能的分類と、すでにクローニングされているチャネルとの同定を行う。チャネルの種類はKチャネルのみならず、NaチャネルやClチャネルなどについても検討したいと考えている。同定されたチャネルに関しては、24年度下半期にそれらの蛍光抗体を用いて、種々の因子によるチャネル発現についての検討を開始したいと考えている。また、生細胞のイメージングによるレアルタイムのチャネル発現の動的分子メカニズムの検討も考えており、可能なだけ分子レベルの研究へ進みたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費は、電気生理学的実験に必要なガラス製品や薬剤のみならず、チャネルの蛍光抗体の購入に当てたいと考えている。これまで、クローニングされたチャネルの抗体はすでに多く利用可能となっており、同定されたM1細胞のチャネル抗体を用いて蛍光イメージング法によりその発現機序の検討を行いたい。なお、本研究の蛍光イメージングに用いる蛍光顕微鏡は24年度に本学研究費により購入予定である。
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Research Products
(2 results)