2012 Fiscal Year Research-status Report
二重還流モデル腎集合管細胞を用いたイオンチャネル発現の分子制御機構
Project/Area Number |
23590264
|
Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
久保川 学 岩手医科大学, 医学部, 教授 (70153327)
|
Keywords | 腎集合管細胞 / 細胞膜極性 / ROMK / パッチクランプ法 / Kチャネル / 膜発現 / チャネル活性 / チャネル局在 |
Research Abstract |
前年度までに培養マウス集合管細胞(M-1細胞)をメンブレンインサート上に単層培養し、二重還流状態にて管腔膜のイオンチャネルをパッチクランプ法で観察する手技を確立した。しかし、用いた培養細胞には本来のマウス集合管細胞に発現している目的としたROMK1 Kチャネルが存在しないことがPCR解析にて判明した。このため、ROMK1遺伝子をクローニングし、それを細胞内へ導入してその発現をパッチクランプ法で観察する方法を用いることとした。ROMK遺伝子にはEGFPをタグさせ、蛍光顕微鏡にてその導入を確認するため、二重還流装置を蛍光顕微鏡に装着させて実験を行った。 その結果、二重還流下にて単層培養細胞内に充分な確率でEGFPの蛍光を認めることができたた。また、比較のために通常のガラスディッシュで培養した単一M-1細胞にも遺伝子導入をおこなったところ、同様の蛍光を認めることができた。ここで、チャネル活性の発現を単層培養細胞と単一細胞とで比較したところ、両者ともに蛍光を認めたにも関わらず、単層培養細胞では高頻度に多くのROMKチャネル活性が見られたが、単一細胞ではその頻度は低く、さらに認められるチャネル数も極めて少なかった。 そこで、蛍光を発するROMKにタグさせたEGFP(ROMK-EGFP)が実際に細胞膜に存在するか否かを観察するため、実験中に細胞膜を蛍光染色させて観察したところ、単一細胞にもインサート上の細胞にも膜内に蛍光を認めた。このことはROMKチャネルの活性は管腔側に発現しやすく、極性がない膜ではたとえROMK1が存在しても活性は発現しにくいことを意味するものと考えられた。すなわち、細胞膜に局在するチャネルでも、膜の特性により機能発現が異なることを見出したことになる。このことは、細胞膜の蛋白機能はその局在のみでは細胞機能と関連しないこともあるという意義ある所見であると考える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ROMK1遺伝子をM1細胞に導入して、その導入したチャネル遺伝子が実際に膜に発現しているか否か、またそれがチャネル活性を持っているか否かを観察することができるようになり、実験を進行している。 これまでの実験にてすでにチャネルの膜局在やチャネル活性の違いを、細胞の管腔膜と極性のない細胞膜とでは異なることを観察しており、とくに極性がない細胞膜ではチャネル局在は認めても、チャネル活性がないなど、視覚的存在と機能的存在はかなずしも一致しないことを見出している。この結果は、膜発現に関わる因子の探索や機能発現のメカニズム解明に大きく寄与するものと考えられ、本研究の目的を達成するため過程としては、ほぼ計画に沿っていると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
ROMK遺伝子の機能的膜発現が極性をもたせたM1細胞に多く発現することを確認した。一方、極性を持たない細胞膜ではチャネルの局在は認められるものの、実際のチャネル活性発現は低く、機能性蛋白がそれ自体の機能を発現するには、単に存在する以外に何らかの膜特性を有する因子が必要であると考えられる。 本研究最終年度である25年度は、チャネルの活性発現と細胞膜極性に関する因子との関連を明らかにし、チャネル発現メカニズムの本質に迫りたいと考えている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験法が確立し、その方向性を見出したことにより、今後は主に現在用いている細胞維持のための試薬、インサート付特殊ディッシュ、さらに種々々の試薬等の購入に研究費を用いる予定である。
|
Research Products
(6 results)