2011 Fiscal Year Research-status Report
ヒト心筋細胞の世界標準モデル構築:分岐解析並びに比較生理学的手法によるアプローチ
Project/Area Number |
23590266
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
倉田 康孝 金沢医科大学, 医学部, 准教授 (00267725)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
芝本 利重 金沢医科大学, 医学部, 教授 (90178921)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 生理学 / 非線形力学 / 生物・生体工学 / 生物物理 |
Research Abstract |
本研究の目的は、ヒト心筋細胞の電気現象を記述する標準モデルを新たに作成することであり、初年度(平成23年度)は、新たなヒト固有心筋(心室筋・心房筋)細胞モデルを構築するため、これまで(1990年以降)にヒト及び動物心筋から得られた可能な限りの実験データ・モデルデータを収集し、比較解析用データベースを作成した。ヒト及び動物心筋(心室筋・心房筋)のモデルデータベースについては、cellML及びPubmedを利用して1990年以降本年度までの主な第2世代モデル(細胞内イオン濃度を状態変数として含むモデル)の原著論文とモデル(数式)データを収集し、活動電位、各形質膜イオン電流系及び筋小胞体Ca2+取込・放出機構に関する比較解析用データベースと活動電位・イオン電流動態解析用システム(MATLABプログラム)を構築することができた。本データベースは、モデル間の各要素(形質膜イオンチャネル電流系など)の数学的定式化と実験データ再現性に関する厳密な比較を可能とするものであり、新たなヒト心筋細胞モデル構築のために極めて有用かつ不可欠のものである。また、ヒト心筋細胞に関する実験データについては、単離心筋細胞とES(iPS)細胞由来心筋細胞からの電気生理学的データを収集し、本年度までの実験データベース作成を完了した(動物心筋細胞に関する実験データは膨大であり、現在もデータベース構築中である)。これらの実験・モデルデータベースを基に、新たなヒト心室筋細胞モデルを試作し、活動電位、各形質膜イオン電流系及び筋小胞体Ca2+取込・放出機構を再現するためのMATLABプログラムを作成することができた。本試作モデルは、従来のモデルに比べて実験データ再現性と分岐解析への適用性に優れているが、今後、ES(iPS)細胞由来心筋細胞から得られる最新の実験データに基づいたさらなる改良(完成版の作成)が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、これまでにヒト及び動物から得られた可能な限りの実験・モデルデータを収集し、比較解析用データベースを作成するとともに、データに基づいた新たな固有心筋細胞モデルシステムの構築を進めているが、動物実験データが予想以上に膨大であり、その収集・整理に予想以上の時間を要している。ヒト心室筋細胞に関するデータベースとヒト心室筋細胞モデル(試作版)の作成は完了し、さらに実験データ再現性と分岐解析への適用性に優れたヒト心室筋細胞モデル(完成版)を構築中であるが、最近新たに発表されたヒト心室筋細胞モデルの構造分析・比較が必要となったこと、またヒトES・iPS細胞由来心筋細胞の実験的解析が予想外に進んでいないことから、モデルの完成にはさらに2~3ヶ月を要する。また、ヒト心房筋細胞に関する実験・モデルデータは予想外に少なく、更なるデータ検索が必要なため、ヒト心房筋細胞モデルの完成には数ヶ月を要する。
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Strategy for Future Research Activity |
大量データの収集とデータベース作成をさらに加速するため、cellMLのみならず複数のモデルデータベースを検索することにより、プログラムコード(MATLABコード)をより効率的に利用することを考えている。また、モデルシステムのスケールが予想以上に大きくなったため、その数学的構造解析に要する時間が大幅に増加すると予想され、数値計算速度をさらに向上させるための方策が必要である。GPU搭載ワークステーションの構築または補充とGPUを利用した高速数値計算のためのソフトウェアを購入することにより、解析効率を飛躍的に向上させることを考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度に予定していたデータ収集とモデル構築の一部が上記の理由でやや遅れているため、本年度研究費(消耗品費等)の一部を次年度に繰り越す必要が生じた。また、モデルシステムのスケール(次元数)拡大とそれに伴う数値計算時間の大幅な増大に対処するため、次年度には解析効率(数値計算速度)を飛躍的に向上させるための方策が必要であり、繰越分を含めた研究費の多くをハードウェア及びソフトウェアの拡充(GPU搭載ワークステーションの構築または追加購入とGPUを利用した高速数値計算用MATLABツールボックスの購入)に充てる予定である。
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