2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23590279
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
谷口 睦男 高知大学, 教育研究部医療学系, 助教 (10304677)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 電気生理学 / 鋤鼻系 / 代謝型グルタミン酸受容体 / シグナル伝達 / 相反性シナプス |
Research Abstract |
フェロモン記憶の座である副嗅球の主要な神経回路は、僧帽細胞―顆粒細胞間の相反性シナプスであるが、その電気生理学的な性質についてはなお不明な点が多い。そこで、行動薬理学的実験からフェロモン記憶に関与することが示唆されている機能分子(各種グルタミン酸受容体、ノルアドレナリン、NOなど)のうち、代謝型グルタミン酸受容体II型(mGluR2)に対する阻害薬および作動薬の相反性シナプス電流に対する効果を調べた。mGluR2作動薬が相反性シナプス電流を抑制すること、その作用点は僧帽細胞から顆粒細胞へのグルタミン酸作動性シナプスの前膜側、後膜側双方にあることを、パッチクランプ法を用いて顆粒細胞から記録したEPSCの解析から明らかにした。次に、シナプス前機構によるグルタミン酸作動性シナプス伝達抑制機構を具体的に調べた。他の脳部位におけるシナプス前機構においては、機能分子によるCa2+チャネルの抑制が含まれていることが報告されている。そこで、mGluR2作動薬のDCG-IVが有するEPSC抑制作用が、シナプス前膜(本研究の場合は僧帽細胞膜がこれに相当する)上のCa2+チャネルの抑制を介して生じているかを検討した。膜電位固定法(保持電位、-70 mV)を用いて僧帽細胞から記録したBa2+電流(Ca2+の流入により副次的な細胞応答が起こるのを防ぐために、細胞外Ca2+をBa2+に置換して測定)は、DCG-IV存在下では-1.06±0.14 nAから-0.82±0.11 nA(p<0.01)に抑制された。以上の結果は、DCG-IVの相反性シナプス電流抑制作用の一部は、シナプス前膜上のCaチャネルの抑制を介して生じることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の計画は、行動薬理学的実験からフェロモン記憶に関与することが示唆されている機能分子(各種グルタミン酸受容体、ノルアドレナリン、NOなど)に対する阻害薬および作動薬の相反性シナプス電流に対する効果を調べ、これにより、副嗅球の主要神経回路である僧帽細胞-顆粒細胞間相反性シナプス電流の性質を明らかにすることであった。当該年度は、DCG-IVが上記相反性シナプス電流に対する抑制作用を有することの同定に止まらず、シナプス膜レベルでの作用点の一部を明らかにできた。したがって細胞レベルから一歩踏み込んだシナプスレベルでのmGluR2の相反性シナプス電流に対する役割を明らかにできたので、順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度を計画した時点において、脳の他の部位の研究から、DCG-IVが僧帽細胞もしくは顆粒細胞のCa2+電流の抑制を介して作用している可能性が考えられた。抑制がどのチャネルサブタイプで起こるのかを同定する為、予算申請時に、各Ca2+チャネル特異的阻害薬の代金を計上した。上述したとおり、研究計画通りに、DCG-IVが僧帽細胞のCa2+電流を抑制することを見いだしたが、その抑制作用は統計学的に有意差が認められたものの弱く、これらタイプ特異的なCa2+チャネル阻害薬を使用してもチャネルタイプの同定が困難と考えられた。これらCa2+チャネル阻害薬は極めて高価であることを考慮し、費用対効果の観点から使用を断念した。以上の理由から次年度使用額が生じた。この次年度使用額分については、以下のような使用を計画している。(1)。本年度は僧帽細胞のCa2+電流を測定したが、次年度に顆粒細胞でも同様の実験を追加して行う計画を立てた。DCG-IVによる顆粒細胞上のCa2+電流抑制作用が見つかり、チャネルサブタイプを同定できる見込みがあれば、今年度に費用対効果の観点から購入を見合わせた各種Ca2+チャネル特異的阻害薬の購入に用いる。(2)。(1)が費用対効果の面で遂行が難しいと判断した場合は、恒常的に使う試薬を中心に、よりグレードの高い試薬への変更・購入に用いる(例;細胞内液に基本物質として用いるGTPは、Na塩が安価であり、それで予算計上しているが、細胞応答を長時間記録するには高価ではあるがMg塩の方が好ましいため、GTPのNa塩の代わりにMg塩を予算計上する。この他、CsClを主成分とする細胞内液のpH調節に、NaOHではなくCsOHを用いる等。)
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
・設備備品費として26万円を計上。電気生理測定・解析機器の修理代、維持費に用いる。・薬品は、5.5万円を計上。各種グルタミン酸受容体阻害薬および作動薬、この他の主なものは電位依存性Naチャネル阻害薬や、細胞内液作成時に使用するNa-GTPなど)を購入する。実験動物は、6.0万円を計上。年間に120匹を使用するとして算出した。購入費(自家繁殖を併用して費用の軽減を計るが飼育スペースに限りがあるため半数程度は新規に購入する必要がある)および飼育代として妥当かつ必要な額を使用する。手術用具は、1.5万円を計上。スライス作成時の刃やメスの替え刃の購入を想定している。実験器具は、1.0万円を計上。ガラス器具(メジューム瓶やメスシリンダ等)の購入に充てる。論文別刷りは、5万円を計上した。・旅費等は35万円を計上した。次年度6月23日からストックホルムで開催される嗅覚味覚国際シンポジウムでの研究成果発表に使用する。
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Research Products
(9 results)