2011 Fiscal Year Research-status Report
中枢性体液調節機構を中心としたがん悪液質の病態解明と新規治療法に向けた総合的解析
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23590282
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
横山 徹 自治医科大学, 医学部, 助教 (80425321)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
南 浩一郎 自治医科大学, 医学部, 講師 (70279347)
上田 陽一 産業医科大学, 医学部, 教授 (10232745)
上園 保仁 独立行政法人国立がん研究センター, その他部局等, 分野長 (20213340)
寺脇 潔 独立行政法人国立がん研究センター, その他部局等, ユニット長 (20572465)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | がん / 悪液質 / 電気生理学 / 行動生理学 |
Research Abstract |
がんモデル動物を用いて、がんの種類や病期における全身的な病態の変化、とくにがん悪液質状態における中枢性体液調節機構の感受性変化について発生機序を電気生理学的・行動生理学的解析などを用い、分子レベルから解明し、症状改善への治療法へと結びつけることを目的として研究を開始した。23年度は正常ラットモデル、がん悪液質モデルの脳スライス標本をパッチクランプ法を用いた電気生理学的検討を中心に研究を実施した。この中で、がん悪液質モデルラットでは、がん細胞移植1週目から体重・摂食量・飲水量が正常モデルラットに比べ有意に低下していること認めた。生体の水分バランスの恒常性は抗利尿ホルモンとして知られるバゾプレッシンによって調節され、バゾプレッシンは視床下部視索上核および室傍核に局在する大細胞性神経分泌ニューロンの細胞体で産生され、下垂体後葉に投射した軸索終末から血中に分泌される。この分泌調節は、血漿浸透圧や飲水惹起を引き起こすペプチドであるアンジオテンシンIIなどの液性因子および細胞体へのシナプス入力によって調節されている。脳スライスを用いた電気生理学的検討で、がん悪液質モデルでは高浸透圧刺激時、アンジオテンシンII投与時の興奮性シナプス入力が正常モデルラットに比べて優位に減衰している傾向を見出した。こられの結果は、がん悪液質状態で引き起こされる水分バランスの異常の原因には、中枢の体液調節系が、がん病態で変化している可能性があることを示唆していることをはじめて報告するものであり、大変意義のある成果と思われる。痛みセンサーとして知られるチャネルの中に、浸透圧調節に関係するチャネルがあり、疼痛緩和はがん悪液質状態改善にも効果があると考え、麻酔薬や鎮痛薬がどのチャネルを介しているかについても検討した。麻酔薬のセボフルレンは高濃度で電位依存性のナトリウムチャネルの一部を抑制することも見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画において平成23年度に行う予定であった、正常モデルラットおよびがん悪液質モデルラットの脳スライス標本を用いた電気生理学的な検討において、がん悪液質モデルラットでは中枢性の体液調節機構に変化が生じている可能性があるという結果がではじめているため。
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Strategy for Future Research Activity |
現在行っている正常ラットモデルおよびがん悪液質モデルラットの行動生理学的な検討および脳スライス標本を用いた電気生理学的検討をさらに進め、がん悪液質病態時に増加するサイトカイン等の物質を同定し、中枢の体液調節機構に影響を与えるチャネルや受容体、その反応経路を検索する予定である。尚、がん悪液質病態時に増加する物質において、正常時の中枢性水分調節機構への関与が明らかでないものについては、正常モデルラットを用いて、バゾプレッシン産生細胞への作用の検討も行う。また、摂食や飲水に関連するペプチド等を投与することで、がん病態等が改善するかどうか検討するほか、がん性疼痛など痛みの緩和が病態を改善する可能性もあり、痛みセンサーとされるチャネルには浸透圧調節に関係するチャネルもあるため、痛みに関係する薬剤等にも注目して研究を推進いていく計画を立てている。がんの種類や病期も含め、がん悪液質の病態解明を基本として、症状改善や新たな治療法や悪液質予防の検討を含めて研究を進めていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は今年度と同様の実験セットを用いて、現在行っている研究をさらに発展させていく予定である。今年度は、正常モデルラット、がん悪液質モデルラットの実験動物の購入や飼育費のほか、試薬や実験に用いる消耗品に研究費を使用した。次年度も同様に、実験動物の購入や飼育、試薬や研究に使用するスライスカッター等の消耗品等に研究費を使用する予定である。試薬に関しては、今年度は高浸透圧刺激に使用したマンニトルとアンジオテンシンIIと限定的であったが、次年度はがん悪液質状態に関係すると考えられるものに幅を広げる予定である。また、得られた成果については、日本癌学会や日本生理学会などの学会発表をはじめとし、論文として発表するため、旅費や論文添削・投稿料や別刷などの経費も併せて計上した。
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Research Products
(3 results)