2011 Fiscal Year Research-status Report
ラットゴナドトロピン放出ホルモンニューロンの興奮性を規定するイオンチャネルの解明
Project/Area Number |
23590284
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
加藤 昌克 日本医科大学, 医学部, 准教授 (90143239)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | GnRHニューロン |
Research Abstract |
当該年度は膜興奮性に影響するソマトスタチンの作用について解析を行った。GnRHニューロン活動の抑制機構については不明な点が多い。その理由の一つは、一般的に抑制性伝達物質として知られるGABAが、GnRHニューロンでは興奮性に作用することである。GnRHニューロンに抑制作用を及ぼす生理活性物質の候補がいくつか挙げられているが、それらの中で我々はソマトスタチンに注目した。ソマトスタチンニューロンは視床下部室周囲核に密に分布し、正中隆起に投射し、下垂体からの成長ホルモン分泌を抑制することがよく知られている。またGnRHニューロンの多く存在する内側視索前野、特に終板器官にも、ソマトスタチン線維が密に分布する。まず共焦点顕微鏡でGnRHニューロンとソマトスタチンニューロンの形態学的な関係を解析した。その結果、GnRHニューロンの細胞体と接せるソマトスタチン線維は皆無であった。一方、両ニューロンの線維間の密な接触が終板器官のみで観察され、その数は一個体あたり35であった。次にスライス標本を用いて、ソマトスタチン作用の電気生理学的解析を行った。ソマトスタチン投与により、56細胞中38細胞(68%)で活動電位の発火頻度が抑制された。また膜電位固定下にソマトスタチンを投与するとコンダクタンス上昇を伴った外向き電流が惹起された。さらに少細胞RT-PCRを用いてGnRHニューロンに発現するソマトスタチン受容体につて調べた。その結果、ソマトスタチン受容体1から5の全ての受容体の発現が見られたが、すべて中程度の発現であった。以上から、GnRHニューロンは、終板器官でソマトスタチン入力を受け、受容体を介してKチャネル(GIRK)を活性化することが示唆された。また両ニューロン間に密な接触が少ないことから、シナプスを介するものは少なく、非シナプス性の入力が主と考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、GnRHニューロンの膜興奮性を規定するイオンチャネルの研究である。当該年度は、ソマトスタチンで活性化されるKチャネルについての解析を行った。電気生理・形態学・分子生物学の手技を用いて研究を進め、結果を論文(Endocrinology 153:806-814, 2012)にまとめることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
カリウムチャネルについて、KCNQ(Kv7)チャネル、K2Pチャネル、内向き整流性Kチャネルの研究を進める。また、順次ナトリウムチャネルについても解析を行い、本課題を完成させたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
大学を移るにあたり主要実験設備は移動したが、不足するものがある。次年度は実験台の購入を申請したい。その他は、消耗品と旅費を申請したい。
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