2011 Fiscal Year Research-status Report
組み換えアデノウイルスベクターを用いた脳の性差形成機構の解明
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23590285
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
折笠 千登世 日本医科大学, 医学部, 講師 (20270671)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐久間 康夫 日本医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70094307)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 性差 / 性ホルモン / 細胞新生 / 細胞移動 |
Research Abstract |
本研究では、脳の性差がもたらされる要因を、性的二型核として知られる2つの脳領域、視索前野性的二型核(SDN-POA)、視索前野脳室周囲核(AVPV)に注目して、これら性的二型核形成にかかわるエストロゲンの影響を、EGFP 組み換えウイルスベクターを用いて、生後の神経細胞新生、神経細胞移動の両面から形態学的に探ことを目的とする。また、SDN-POA に発現するソマトスタチンの生理機能解析のために、既に作製されてあるラットソマトスタチン遺伝子に対するsiRNA 発現組み換えアデノウイルスベクターを用いて、脳内に局所感染させ、時期特異的にソマトスタチン遺伝子をノックダウンすることで、性的二型核性差形成にかかわる生理機能及び、嗅覚選好性を含めた性行動に及ぼす影響、内分泌学的な影響の有無をも検討することを目標としている。 本年度は、まず第一にEGFP 組換えウイルスベクターの遺伝子導入効率の検討した。複数の蛍光EGFP 組み換えウイルスベクターを前脳室下帯に投与し、遺伝子導入効率、導入細胞を検討した。アデノウイルス、レトロウイルス、レンチウイルスを側脳室に投与し、2週間後、それぞれのウイルスの感染の有無、脳神経細胞の変性の有無など、投与による影響を含めて検討した。レンチウイルスについては感染を確認したが、脳神経細胞の脱落が認められ、本研究の目的には合致しないことが判明した。レトロウイルスアデノウイルスについては、若干の感染を認めたが非常に微弱であり、さらにウイルスのタイタ―を上げ現在検討している。 第二にラットソマトスタチン遺伝子に対するsiRNA 発現組み換えアデノウイルスベクターを用いて、生後2日、15日目の仔ラットを用いて行った。幼若ラットの脳定位装置による投与によって検討を行っており、ラットソマトスタチン遺伝子の発現を抑制しうるかの検討を免疫組織化学的に依り行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
側脳室への投与は比較的簡単に行うことができ感染を確認することができたが、脳全体までには達することができなかった。その理由として考えられることは、本実験でのウイルスの発現効率の問題である。そのため濃度を100倍にすることで検討を行ったが、生体の脳に効率的な感染をひきおこすことがやや困難な状況である。この点に関しては、それぞれのウイルスベクターの発現効率に加えて、ウイルスベクター遺伝子の設計自体に問題があると考えられる。 一方で、雄においてSDN-POA でのソマトスタチン発現のピークが生後2週間とするデータを得ている(Orikasa ら2007)。そのために幼若なラットの脳にソマトスタチンsiRNAを投与し、SDN-POA に発現するソマトスタチンを局所的にノックダウンする必要性がある。脳の定位装置を用いたとしても、幼若なラットの場合、脳地図に準じて操作する難しさがある。すなわち成体の場合のように脳を定位装置に固定するという操作において、発達段階にある動物のために制限がかかってしまっている可能性がある。このために安定した投与が確立されないという状況に陥っていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
1)EGFP組換えウイルスベクターの遺伝子導入効率と作成 EGFP組換えウイルスベクターの遺伝子導入効率を再度検討する。タイタ―を上げることや手法的な側面に再検討を加えた後も側脳室投与によってに脳室帯の細胞へ感染、その後脳室内全体に広がることに関して改善が見られない場合は、EGFP組換えウイルスベクターの再設計をする必要があると考える。2)AVPVのエストロゲン細胞移動に関する検討 EGFP組換えウイルスベクターの遺伝子導入が初期段階で滞っている。そこで細胞移動に関して別のアプローチをすることを考えている。すなわち、細胞移動のガイダンスであるPSA-NCAMの抗体を用いる方法である。抗PSA-NCAMの抗体を脳室内に投与し移動を抑制し、さらにステロイド存在の有無によって細胞移動の詳細な検討を行う。また雄でのERbetaの細胞とalpha細胞の共存の有無について検討し、細胞移動における受容体関与の検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(1)脳室内投与に供する妊娠ラットの購入が年間で複数回必要となってくる。(2)ウイルスベクターを回収する際に必要となってくる培養用試薬、抽出用試薬が必要である。(3)免疫組織化学関連試薬抗体が必要である。実際のウイルスベクターEGFP発現強度は低いために抗EGFP抗体によって発現を増幅させ感染の有無を確認し、脳室帯の細胞へ感染し始め脳室内全体への広がり、脳室帯で有糸分裂している神経幹細胞に特異的に感染するか否かの検討を行う。(4)EGFP組換えウイルスベクターの遺伝子設計のための分子生物学関連試薬が必要である。
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Research Products
(2 results)