2012 Fiscal Year Research-status Report
二連発刺激による誘発電位を用いた麻酔深度・睡眠深度の新しい評価方法の開発
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23590287
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
藤木 通弘 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 教授 (80334928)
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Keywords | 誘発電位 / 麻酔深度 / 睡眠 |
Research Abstract |
1. 具体的内容:本研究の目的は、二連発の感覚刺激を与える事で得られる2つの大脳誘発電位の振幅の比から、その感覚系全体の不応期を推定し、それを神経活動の新たな指標として用いる事で、神経活動の変化に伴って変動する麻酔深度や睡眠深度の評価方法に利用出来るかどうかを確かめる事である。平成23年度の報告書に記載したように平成23年度の時点でも、研究実施計画の内容と比べると実際の進捗状況にはやや遅れがあったが、平成24年度に申請者の所属機関が浜松大学から産業医科大学へと異動したこともあり、残念ながらこの遅れを平成24年度中に回復させることはできなかった。以下平成24年度の研究実績について具体的に記載する。 (1)実験系の確立:麻酔深度を深くすると自発呼吸数が低下し、実験結果への影響が懸念される状況があった。実験を安定して行うため、麻酔下の動物に対しベンチレーターによる呼吸管理を行うよう、実験方法を変更した。また、H24年度前半はイソフルランを用いて実験を行っていたが、実験環境が変化した影響もあり、年度後半からはイソフロランからセボフルランに使用吸入麻酔薬を変更した。セボフルランは、イソフルランよりも気道刺激性が少ないとされるなどの利点もあり、この変更は適切であると考えている。 (2)麻酔深度と誘発電位の振幅比の変動との関連の検討について:実験が安定して行えるようになり、現在実験を重ねているところである。 2. 意義および重要性:安定して麻酔下実験を行う事が出来るようになったことは、本研究計画遂行において重要な意義があると考えている。これにより平成25年度は「麻酔深度と誘発電位の振幅比の変動との関連の検討」についてのまとめが出来ると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要でも述べたが、申請者の所属変更に伴い研究設備等の一部変更があった。そのため、実験系を改めて立ち上げるために、暫くの時間を要する事となった。さらに、貸与してもらっていた刺激装置は平成24年度前半で返却し、当初の予定通り刺激装置を購入したが、刺激装置単体では本研究に必要な二連発の電気刺激をうまく発生させる事が困難で、外部トリガを用いる必要がある事が購入後判明した。そこで、外部トリガ刺激発生およびデータ収録用プログラムの開発を新たに行うなどの状況が生じることとなった。これらの要因により、当初の遅れが取り戻せていない状況にある。具体的には、交付申請書に記載した平成24年度中に開始する予定であった「睡眠深度と誘発電位の振幅比の変動との関連の検討」については未だ開始していない状態である。以上の事から、申請書に記載した計画からはやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、まずは現在実験を重ねている「麻酔深度と誘発電位の振幅比の変動との関連の検討」について結果をまとめ、学会および論文での報告を目指して計画を遂行することを最大の目的としたいと考えている。麻酔深度の評価に本研究計画で提案している方法を用いる事ができると言う事が明らかとなれば、それだけでも十分に新しい発見であり、また臨床応用の点からも意義のある事であると考えている。本研究の申請書で記載していたもうひとつの研究計画である「睡眠深度と誘発電位の振幅比の変動との関連の検討」についても、「麻酔深度と誘発電位の振幅比の変動との関連の検討」の結果がまとまり次第、可及的に実験を行うことを考えている。さらに、視床での刺激あるいは記録という検討課題についても、将来的な課題として取り組むために、基礎的な情報収集や予備実験も行いたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に購入した電気刺激装置およびアイソレーターについては当初予定していた機器よりも安価に購入できた事、また平成24年度の申請者の所属変更に伴う諸事情より、当初予定していた国内外の学会での発表、論文による発表などが実施できず、そのための旅費等が未使用であったことから繰越額が生じる結果となった。平成25年度は、「麻酔深度と誘発電位の振幅比の変動との関連の検討」の計画を完遂させるための実験に必要な、実験動物および消耗品等の購入をはじめとして、平成24年度で実施できなかった学会等での情報収集および結果発表のための旅費等に用いる事を考えている。また、英語論文の英文校正等に関わる謝金などにも用いる予定にしている。
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