2011 Fiscal Year Research-status Report
閉経後高血圧の新しい発症経路の解明:AT1受容体・RGS・SPLの相互作用解析
Project/Area Number |
23590296
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
木村 定雄 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40134225)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西山 眞理子 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00092081)
碓井 宏和 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (90375634)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国際情報交流 |
Research Abstract |
(1)AT1a受容体を介する情報伝達に対するRGSの抑制効果:マウスAT1a受容体を安定発現させた293T細胞に、平滑筋で発現しているRGS2、RGS4、RGS5を一過性に発現させ、Fura-2試薬を用いてアンジオテンシンII刺激による細胞内Ca2+濃度変化を測定し、AT1a受容体を介する情報伝達に対する各RGSの抑制効果について検討を行った。AT1a受容体シグナルに対する抑制効果は、RGS2がAng IIの全濃度において約60%を抑制して一番強く、RGS4とRGS5は弱かった。(2)エストロゲン処理による培養血管平滑筋中のSPLの発現変動の解析:培養血管平滑筋をエストロゲン処理し、ウェスタン法により平滑筋に発言するSPL蛋白質の発現変動を検討した結果、SPLは約2倍に発現が増加することが明らかになった。(3)細胞内Ca応答を指標としたRGS2の抑制作用のSPLによる増強効果の解析:AT1a受容体を安定発現するHEK293T細胞(AT1a-293T)にRGS2とSPLを共発現させ、Ang IIに対する細胞内Ca応答変化を比較することにより、RGS2の抑制効果をSPLが増強するかどうかを検討した。SPL単独発現ではAng II刺激によるCa応答は変化しない。一方、RGS2を低発現させたAT1a-293T細胞は少し抑制されるが、SPLの共発現により、SPLの濃度依存的にRGSの抑制効果が増強した。 以上の結果から、(1)血管平滑筋にはRGS2およびSPLが共存すること、 (2)AT1受容体の安定発現細胞では、RGS2はAT1受容体シグナルを強力に抑制すること、(3)RGS2のAT1受容体シグナルの抑制効果をSPLは強力に増強すること、(4)女性ホルモンであるエストロゲンは血管平滑筋のSPLの発現を亢進していることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時にすでに予備データがあったことによることが多いが、当初の計画以上に順調に進展している。また、平滑筋に発現する他のRGSの役割の検討から、予想外のRGS分子種によるアンジオテンシン受容体シグナルの抑制効果が得られており、多少の研究計画の拡大を検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
平滑筋に発現するRGS2、RGS3、RGS4、RGS5、RGS8、RGS16のアンジオテンシンAT1受容体シグナルの抑制力の予備的な比較解析結果から、RGS3とRGS8がAT1シグナルをRGS2と同等以上に強力に阻害効果を示すことが明らかになった。そのため、現在の研究方向をRGS2のみならず、RGS3とRGS8を加えて、スピノフィリン(SPN)との相互作用を解析することにした。平成24年度の研究計画は次の通りである。1)R4ファミリーRGS蛋白質の3種類の血管作動性受容体の抑制効果の検討(木村・西山担当):血管作動性ペプチドであるアンジオテンシンII、エンドセリン-1、バソプレッシン受容体に対する抑制効果の解析を行う。エンドセリンETA受容体およびバソプレシンV1a受容体を293T細胞に安定発現した細胞を作成して、各受容体シグナルに対するR4ファミリー蛋白質(RGS2、RGS3、RGS4、RGS5、RGS8、RGS16)の抑制効果の比較を行う。各RGSのN末端部欠損変異体の抑制効果も検討する。2)RGS2・AT1受容体・SPL3者間の分子間相互作用の生化学的解析(木村・西山担当):1) タグ付きの全長RGS2やそのN末端部・RGSドメイン部を培養細胞に発現させて、AT1受容体やSPLとの結合特性を免疫沈降法やプルダウン法により解析する。2) Hisタグつき精製RGS2蛋白質およびその変異体とSPLフラグメント-GST融合蛋白質を用いて、両者の結合特性をin vitroで解析する。また、精製RGS2蛋白質およびその変異体とAT1受容体細胞内フラグメント-GST融合蛋白質を用いて、両者の結合特性をin vitroで解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
アンジオテンシンAT1受容体をRGS2と同等以上に強く抑制するRGS3とRGS8の発見により、新しい研究展開が期待できるため、平成24年度分と併せて平成23年度に未使用の研究費を、主に、物品費として使用する予定である。
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Research Products
(2 results)