2011 Fiscal Year Research-status Report
エピジェネテック制御機構を標的とする敗血症治療法の探究
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23590298
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
服部 裕一 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 教授 (50156361)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横尾 宏毅 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 准教授 (30332894)
山本 誠士 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 助教 (10456361)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 敗血症 / 転写因子 / アポトーシス / エピジェネティックス / レスベラトロール / 脱アセチル化酵素 / SIRT1 / 急性肺傷害 |
Research Abstract |
敗血症の病態形成にエピジェネティックスの異常が重要な役割を果たしているかを,脱アセチル化酵素(HDAC)阻害というエピジェネティックな調節を介した敗血症治療効果を検討した。本年度は,HDACのクラスIIIのメンバーであり,長寿遺伝子として注目されているSIRT1を活性化するレスベラトロールの治療効果をみた。8-12週齢の雄性BALB-Cマウスに盲腸結紮穿孔(cecum ligation and puncture: CLP)を行い,敗血症を生じさせた。SIRT1発現はCLP後一過性に肺組織において顕著に低下することが認められ,これはレスベラトロール処置によって改善しなかった。一方,CLP後にみられる,acetyl-histone H3の上昇はレスベラトロール処置によって抑えられた。CLP肺組織によるTNF-α,IL-1β,IL-6のmRNA発現増加は,レスベラトロールにより有意に抑えられた。さらに,組織学的に観察された肺炎症像もレスベラトロールにより改善された。TUNELアッセイにより,CLP誘発性敗血症により肺組織および脾組織においてアポトーシスが有意に増加しており,それはレスベラトロール投与により阻止された。さらに,CLPマウスにみられる肺血管透過性の亢進,低酸素血症,組織学的な肺の損傷もすべてAP-1デコイ核酸導入により抑えられた。以上の結果から,SIRT-1は,炎症およびアポトーシスのinverse regulatorとして働いているようである。そして,レスベラトロールは,SIRT1活性化を介して敗血症性急性肺傷害に対し保護的に作用するものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
レスベラトロールを用いた研究は,平成25年度の予定であったが,最近特にレスベラトロールの種々の疾患モデルに対する治療効果に関する論文が数多く報告されているため,前倒しして行うこととした。一方で,韓国の企業から提供された新規HDAC阻害薬であるCG200745の敗血症モデルに対する効果も着実にデータを積み重ねている。
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Strategy for Future Research Activity |
韓国の企業から提供された新規HDAC阻害薬であるCG200745は,これまでの予備実験のデータからは,抗アポトーシス作用はもつが,抗炎症作用はもたないようである。レスベラトロールとの違いは何によるものか,明らかにしていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(1)レスベラトロールの治療効果が,SIRT1を実際に介しているか,SIRT1阻害薬sirtinolがレスベラトロールの治療効果を相殺するか検討する。(2)レスベラトロールの抗炎症作用は,NF-κB活性化抑制作用であることは明らかにしたが,NF-κB p65 acetylationに対してどのように働いているか,CG200745とも比較しながら検討していく。(3)抗アポトーシス作用として,p53の発現およびp53アセチル化に対するレスベラトロールとCG200745の作用を検討していく。
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Research Products
(3 results)