2012 Fiscal Year Research-status Report
ストレスによる精神疾患発症における脳特異的転写因子NPAS4の役割
Project/Area Number |
23590299
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
日比 陽子 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (70295616)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 清文 名古屋大学, 医学部附属病院, 教授 (30303639)
|
Keywords | ストレス / Npas4 / 転写制御 / グルココルチコイド / プロモーター |
Research Abstract |
本研究は、神経保護や神経分化に関連する機能を持つ転写因子Neuronal PAS domain 4 (NPAS4)がストレスにより発現抑制するメカニズムを解明することを目的としている。NPAS4プロモーターには、転写開始点から1~2kb上流の付近にグルココルチコイド受容体 (GR) が結合する配列であるグルココルチコイドレスポンスエレメント(GRE)が集中している。平成23年度にはNPAS4のプロモーター領域をルシフェラーゼ cDNAの上流に組み込んだレポーターアッセイプラスミドを用いて、この領域の段階的な欠失でNPAS4プロモーターの活性が著しく上昇することを見出した。そこで平成24年度は、NPAS4の転写抑制についてさらに詳細に追究するため、この2kb上流付近の5つのGREsに部位特異的変異導入を行い、GRが結合する部位を特定した。さらに、マウス脳海馬においても拘束ストレス依存的にNPAS4プロモーターとGRとの結合が増大することをクロマチンIPアッセイによって確認し、ストレスがグルココルチコイドを介してNPAS4プロモーター活性を抑制することを示した。この成果は、Journal of Neurochemistryに掲載された。 また、13~30週齢のNPAS4遺伝子欠損(NPAS4-KO)マウスを用いて、行動量測定、オープンフィールド試験、 Y迷路試験、新奇物体認知試験、恐怖条件付け記憶試験、社会性行動試験、高架式十字迷路試験、プレパルス抑制試験 (PPI)の各試験を行った。NPAS4-KOマウスは、野生型マウスと比較して多動を示し、高架式十字迷路試験では、不安様行動の減少が示された。また、記憶能力の低下も恐怖記憶試験により示唆された。さらに、PPIの顕著な低下から、NPAS4-KOマウスでは感覚情報処理能力が障害されていることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の目標は (1)NPAS4プロモーターの段階的欠失変異導入により確定した領域のGREに部位特異的変異導入を行い、レポーター発現解析によりグルココルチコイドがNPAS4プロモーター活性に影響を及ぼす部位をさらに詳細に解析する。またin vivoでのグルココルチコイドのNPAS4プロモーター抑制効果を検証するため、ストレス付加による生体内でのGRのNPASS4遺伝子への結合の変動について、マウス脳サンプルを用いてクロマチンIPアッセイを行い解析する。 (2)ストレスによるNPAS4遺伝子メチル化上昇が、ストレス付加後どの程度の期間持続するのかについて解析する。また、ストレスが内分泌系を介してエピジェネティック制御を変動させる可能性について追究する。さらに、ストレス負荷動物にDNA脱メチル化剤や精神疾患治療薬を投与し、NPAS4プロモーター領域のDNAメチル化レベルの確認を行う。 (3)NPAS4-KOマウスの行動試験を行うと共にNPAS4-KOマウスの神経系の発達を抗体染色法やゴルジ染色法で解析する。 であったが、これまでの研究により(1)の目標は達成し、その成果は雑誌に掲載された。また行動解析により、NPAS4-KOマウスは野生型マウスと比較して多動、不安様行動の減少、記憶能力の低下、感覚情報処理能力障害が示唆された。NPAS4-KOマウスの神経系の異常の解析は現在進行中である。NPAS4遺伝子メチル化に関しては、ストレス負荷動物にDNA脱メチル化剤を投与しNPAS4発現に及ぼす影響を解析中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1)NPAS4欠損マウスのin vivo解析 NPAS4-KOマウスの行動試験を継続して行う。NPAS4はGABA作動性神経系の発達に重要な転写因子であることが知られているため、Npas4-KOマウスの脳各部位におけるGABA作動性神経関連分子の発現を野生型マウスと比較する。特に、行動試験により示された異常の発現に関連する脳部位である前頭皮質、線条体、側坐核、海馬について詳細な解析を行う。 またNPAS4遺伝子欠損マウスの神経系の発達を抗体染色法やゴルジ染色法で解析する。 (2)エピジェネティクス解析:ストレス刺激が精神に及ぼす影響は長期間に渡り持続することが知られている。その持続にはDNAメチル化亢進の維持が要因としてあげられているため、ストレスによるNPAS4遺伝子メチル化上昇が、ストレス付加後どの程度の期間持続するのかについて解析する。また、副腎除去動物についてストレスを負荷し、NPAS4の発現変動を調べる。また、副腎除去がNPAS4プロモーター領域のヒストンアセチル化などの修飾レベルへおよぼす影響やDNAメチル化レベルへおよぼす影響を解析し、ストレスが内分泌系を介してエピジェネティック制御を変動させる可能性について追究する。さらに、ストレス負荷動物にDNA脱メチル化剤や精神疾患治療薬を投与し、NPAS4プロモーター領域のDNAメチル化レベルの確認を行うと共に、行動薬理学的解析で精神疾患様行動の発現について調べていく。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
・ 部位特異的変異導入に用いるPCR試薬や各種制限酵素、DNA大量調整用のキット、細胞培養に必要なプレートと培地や血清を購入する。またクロマチンIPアッセイのためにキットや各種抗体を購入する。また、NPAS4プロモーター領域のDNAメチル化解析に用いるPyroMarkシステム用解析用試薬やプレート、オリゴヌクレオチドを購入する。生化学的解析に用いる各種抗体や各種インヒビターを購入する。 ・ 生体内におけるNPAS4プロモーターのDNAメチル化変動や脱メチル化剤の影響を調べるためにマウスを購入する。また、購入したマウスやNPAS4-KOマウスの飼育のための費用に使用する。 ・ In vitroにおける免疫組織学的解析のため各種試薬を購入する。 ・ 本研究で得られた成果の公表のため論文投稿費に使用する。 ・ 旅費として、これまで得た結果について6月に京都で行われる国際学会WFSBPで研究成果発表を行うため使用する。さらに、日本神経科学学会大会、日本神経精神薬理学会年会、日本分子生物学会年会、日本薬理学会年会、および日本薬学会年会における研究成果発表のために使用する。
|
Research Products
(12 results)
-
[Journal Article] Neuronal PAS domain protein 4 (Npas4) regulates neurite outgrowth and phosphorylation of synapsin I.2013
Author(s)
Yun, J., Nagai, T., Furukawa-Hibi, Y., Kuroda, K., Kaibuchi, K. and Yamada, K.
-
Journal Title
J. Biol. Chem.
Volume: 288
Pages: 2655-2664
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
[Journal Article] Absence of SHATI/Nat8l reduces social interaction in mice.2012
Author(s)
Furukawa-Hibi, Y., Nitta, A., Fukumitsu, H., Somiya, H., Toriumi, K., Furukawa, S., Nabeshima, T. and Yamada, K.
-
Journal Title
Neurosci. Lett.
Volume: 526
Pages: 79-84
DOI
Peer Reviewed
-
[Journal Article] Somatic mosaicism for oncogenic NRAS mutations in juvenile myelomonocytic leukemia.2012
Author(s)
Doisaki, S., Muramatsu, H., Shimada, A., Takahashi, Y., Furukawa-Hibi, Y., Yamada, K., Hoshino, H., Tanaka, M., Hama, A., Koike, K. and Kojima, S. et al.
-
Journal Title
Blood
Volume: 120
Pages: 1485-1488
DOI
Peer Reviewed
-
[Journal Article] Using peripheral blood circulating DNAs to detect CpG global methylation status and genetic mutations in patients with myelodysplastic syndrome.2012
Author(s)
Iriyama, C., Tomita, A., Hoshino, H., Shirahata, M., Furukawa-Hibi, Y., Yamada, K., Kiyoi, H., Naoe, T.
-
Journal Title
Biochem Biophys Res Commun
Volume: 419
Pages: 662-669
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
-
-
-