2011 Fiscal Year Research-status Report
カチオンークロライド共輸送体のイオン輸送機能を支える分子基盤の解析
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23590301
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
稲野辺 厚 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00270851)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 膜イオン輸送体 / リポソーム再構成系 / 構造機能相関 / 疾患関連遺伝子 |
Research Abstract |
カチオン―クロライド共輸送体(CCC)は細胞膜を介したイオンの輸送を司り、細胞内イオンの濃度調節を行うことによって、細胞応答、恒常性、増殖などの様々な生理現象に関与する。さらに、CCCは複数の遺伝性疾患の原因遺伝子であることが同定されている。しかしながら、CCCのイオン選択、イオン輸送、利尿薬の作用機序、遺伝性疾患の発症機構の詳細は不明である。本年度は機能解析のためのリポソーム再構成系の確立を目的に、調製に最適な分子の検討を行った。その結果、古細菌メタノサルキナ属から単離されたCCCホモログが異所性に発現できること、熱安定性に優れていることが判った。現在課題となっている発現量の安定化に取り組んでいる。一方、本年度は膜イオン輸送体である内向き整流性カリウムチャネルKir3.2のリガンド結合を担う細胞質ドメインにおける構造変化と分子機能の連関を検討した。その結果、1)陽イオンと細胞質ドメインのイオン透過系路との相互作用から、細胞質ドメインはチャネルの開閉に伴いイオン透過系路の内径を変化させていること、2)Cd2+によるKir3.2の活性抑制の分子基盤の検討から、Cd2+は2つのCys残基を介し、閉状態構造を安定化することによって、活性を抑制することが判った。特に後者は、Cd2+結合部位がチャネルの開閉に伴って構造を変化する領域であること、そしてCd2+の逆アゴニスト様の作用がチャネル抑制の分子基盤であることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、並行して遂行してきた同じ膜イオン輸送体である内向き整流性カリウムチャネルに関する研究の成果を報告することができた。さらにこれらの研究を遂行することによって、チャネルの開閉を支える分子基盤が明らかになりつつある。すなわち、膜貫通ドメインと細胞質ドメインの2つのドメインから成り立つリガンド作動性イオンチャネルである本チャネルの機能は、マルチプルなドメイン間の相互作用によって支えられており、その機能的共役の一つとして、細胞質ドメイン中の膜貫通ドメインと共に動く領域の制御機構を同定した。これは16年前に所属研究室から提示されたチャネル活性化の分子基盤を構造生物学的に支持する結果であり、是非とも成果としてまとめなくてはいけない。これらの研究は膜蛋白質の構造―機能連関に関して極めて重要な知見である。そのため、研究全体から見たときには、大きく進展していると考えられる。一方で、CCCの機能解析に限定すると、熱力学的に安定な分子の同定には成功したが、その収量が不安定で、現在解析に十分な量が調製できていない。そのため、今以上の達成度が見込めると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
問題の本質は、それまで生化学的解析に十分な試料量が確保できなくなったことである。Open reading frameには変異が見られないため、ホスト細胞の特性の変化か、発現ベクターの発現調節部位に変異が入っていることが考えられた。そのため、以下の3つの方策が考えられる。1番目はC2A由来のCCCを他の発現vectorにsubcloningし直すことによって、一番良好な発現vectorとhost細胞を検索しなおす。2番目は新規に熱力学的に安定なCCCホモログを検索し、発現を検討する。3番目は培地、発現誘導剤の濃度、発現誘導時の温度など、発現条件の徹底的な見直しである。これらの改良をもって、当該研究を遂行する。一方で、同じ膜イオン輸送体である内向き整流性カリウムチャネルの機能を支える構造要因に関する研究を並行し、成果を公表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費は、細胞培養、遺伝子工学、生化学実験用の消耗品の購入、成果報告のための論文別刷、そして成果報告のための出張に使用する予定である。機器の購入は予定していない。
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Research Products
(12 results)