2011 Fiscal Year Research-status Report
TRAILによるErbB受容体活性化シグナルの分子機構解析と新規癌治療法の開発
Project/Area Number |
23590308
|
Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
大森 亨 昭和大学, 腫瘍分子生物学研究所, 准教授 (10276529)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山岡 利光 昭和大学, 医学部, 助教 (40384359)
廣瀬 敬 昭和大学, 医学部, 准教授 (40307038)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | TRAIL / EGFR / EGFR阻害剤 / crosstalk signal / FADD |
Research Abstract |
Tumor necrosis factor-related apoptosis-inducing ligand (TRAIL)はTNF superfamily に属するサイトカインであり、受容体を介して広範囲のがん細胞にapoptosis を誘導するが、正常細胞には影響しない。p53 突然変異は全がんの50%以上に認められるが、TRAIL はp53 を介さずにapoptosis を誘導することから、がん治療への臨床応用が期待されている。しかし、TRAILはAkt/NFκB経路活性化を活性化し、apoptosisの情報伝達だけでなく抗apoptosisの情報伝達も活性化する。このため、実際にはがん細胞がTRAIL に対して抵抗性であることが多い。我々はヒト非小細胞肺がん株(NSCLC)において、TRAILによって誘発されたAkt/NFκB経路活性化が、主にTRAIL受容体からEGFRへのcrosstalk signalを介して起こることを証明した。さらに、gefitinib、erlotinib等のEGFR阻害剤(EGFR-TKIs)は、TRAILによるapoptosisを増強した。このcrosstalk signalの分子機構を解明するため、我々はTRAILによって誘発された情報伝達とEGFR活性化の関係を調べた。TRAILによって誘発されたEGFR活性化および二量体形成は、TRAIL接触後15分で検出された。さらに、これらのEGFR活性化はTRAIL受容体のアダプター蛋白質であるFADDのノックダウンによって抑制された。さらにEGFRリガンドのEGF、TGF-α、HB-EGFに対する中和抗体の処理を行った場合にも、EGFR活性化は抑制された。以上より、TRAILがFADDを介して何らかの機序で細胞表面からEGFRリガンドを遊離させ、EGFRを活性化していることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
同じTNF familyであるTNF受容体からのEGFRのcross talk signalについては、これまでSrcを介した細胞内シグナル伝達機構及び細胞表面に接合するリガンドのsheddingによる機序が報告されている。本年度の研究において、TRAILがFADDを介して何らかの機序で細胞表面からEGFRリガンドを遊離させ、EGFRを活性化していることを示し、TRAILからEGFRのcross talkは主にリガンドのsheddingにより行われている事を明らかにした。Gefitinib, erlotinib等のEGFR阻害剤は変異EGFRの阻害剤で有り、TRAILとの併用効果は同遺伝子を発現する腫瘍にしか期待できない。今回の結果は、cetuximab等の抗がん剤はEGFRとリガンドの結合を阻害する事により野生型EGFRを発現する腫瘍においてもTRAILの効果を増強できる可能性を示唆する。本シグナル伝達機構を利用した併用化学療法の、臨床応用範囲を広げる研究成果と考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究計画に基づき、TRAIL刺激によりEGFRリガンドがsheddingされる分子機構について、更に詳細な分子機構解析を行う。また、cetuximabとTRAILの併用効果について、野生型EGFRを発現する腫瘍細胞を含むパネルで検証する。近年、TRAIL受容体の活性化抗体、並びに低分子のTRAIL受容体刺激物質が開発されてきており、EGFR阻害剤とこれらを用いた併用化学療法の可能性についても合わせて検討する。更に、これらの併用療法で有用性が見込まれるものについて、担がんマウスモデルを用いた動物実験を行い、臨床応用の可能性について検証を行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究計画に基づき、継続的な細胞培養、分子生物学的解析を行う目的で、直接経費120万円のうち約100万円を特異的抗体、細胞培養血清等の試薬購入に充てる。2013年米国癌学会(Annual Meeting of American Association for Cancer Research)において研究成果発表を行う費用として、約20万円を充てる。
|