2011 Fiscal Year Research-status Report
エキソゾーム熱ショック蛋白質のToll様受容体を介する慢性骨髄性白血病発癌制御
Project/Area Number |
23590309
|
Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
塚原 富士子 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (40119996)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
|
Keywords | 癌 / 薬理学 / 慢性骨髄性白血病 / 熱ショックタンパク質 / Toll様受容体 |
Research Abstract |
慢性骨髄性白血病の95%以上は、9番染色体長腕と22番染色体長腕の相互転座によりBCR/ABLキメラ遺伝子が形成され発症する。この遺伝子産物であるBCR/ABLチロシンキナーゼは恒常的に活性化され、細胞の増殖を促進、アポトーシスを抑制する。近年、BCR/ABL分子標的薬(イマチニブ等)が開発され臨床効果を発揮している。しかしながら白血病幹細胞は治療抵抗性であり、再発の原因となっている。本年度の研究では、白血病細胞から分泌されるエキソゾーム熱ショック蛋白質(Hsp/Hsc70, Hsp90) の、Toll様受容体(Toll-like receptor, TLR)を介するシグナル伝達による慢性骨髄性白血病発癌制御機構について検討を行い、下記の結果を得た。(1)白血病モデル動物 (BCR/ABLトランスジェニックマウス)の骨髄細胞、脾臓細胞において、各種熱ショック蛋白質が増加し、一方、血中エキソゾームには、Hsp/Hsc70, Hsp90が含まれていることを認めた。また、これらの結果は、BCR/ABLトランスジェニックマウスとBag1(Hsc70コシャペロン)ノックアウトマウス(Bag1-/+)を掛け合わせたマウスでも同様に認められた。(2)Hsp90-cdc37シャペロン系は、BCR/ABLキナーゼの活性化を促進することによって、ユビキチンリガーゼCHIPによるBCR-ABL蛋白質の分解に対して、Hsc70と同様に抑制的に作用することを認めた。 本年度の実験結果から、分子シャペロンである熱ショック蛋白質 は、BCR/ABL蛋白質の安定性を制御すること、またToll様受容体は個体レベルでの白血病の病態進行において重要な役割を演じている可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究では、白血病モデル動物(BCR/ABLトランスジェニックマウス)およびHsc70コシャペロンであるBag1ノックアウトマウスと掛け合わせたマウスの白血病の病態進行と骨髄細胞、脾臓細胞、血中エキソゾームにおける熱ショックタンパク質の変化について明らかにした。一方、分子シャペロンによるBCR/ABL蛋白質の安定性の制御について、Hsp90-cdc37シャペロン系を中心として詳細な検討を行った。本研究は、おおむね順調に進展していると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在、Toll様受容体ノックアウトマウスとBCR/ABL トランスジェニックマウスを掛け合わせたToll様受容体 (-/-), BCR/ABL (+/-)マウスの作成を進行させているが、このマウスを用いて、エキソゾーム熱ショック蛋白質(Hsp/Hsc70, Hsp90)および内因性Toll様受容体リガンドの白血病幹細胞の増殖、分化への影響を検討し、白血病病態進行におけるToll様受容体の細胞および個体レベルでの役割を明らかにする。一方、BCR/ABL蛋白質の分解について、分子シャペロンによるBCR/ABL蛋白質の分子レベルでの安定化制御機構の詳細を明らかにし、BCR/ABL依存性の白血病幹細胞の増殖および分化を阻害する機構を模索する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
白血病細胞から分泌されるエキソゾーム熱ショック蛋白質(Hsp/Hsc70, Hsp90) の、Toll様受容体(Toll-like receptor, TLR)を介するシグナル伝達による慢性骨髄性白血病発癌制御機構について検討を行うために必要な、抗体、ELISAキット、蛋白質精製用の試薬および実験器具の購入、および研究成果の学会発表のための旅費に次年度の研究費を使用する計画である。
|