2012 Fiscal Year Research-status Report
エキソゾーム熱ショック蛋白質のToll様受容体を介する慢性骨髄性白血病発癌制御
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23590309
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
塚原 富士子 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (40119996)
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Keywords | 癌 / 薬理学 / 慢性骨髄性白血病 / 熱ショック蛋白質 / Toll様受容体 |
Research Abstract |
慢性骨髄性白血病発癌原因分子BCR/ABLチロシンキナーゼは細胞内で恒常的に活性化され、細胞の増殖を促進、アポトーシスを抑制する。近年、BCR/ABL分子標的薬(イマチニブ等)に対する耐性の獲得が慢性骨髄性白血病の治療上大きな障害となっている症例が報告されている。本年度の研究では、Toll様受容体(Toll-like receptor, TLR)を介するシグナル伝達による慢性骨髄性白血病発癌制御機構、BCR/ABL蛋白質の分解調節機構について検討を行い、下記の結果を得た。 ①白血病モデル細胞のToll様受容体刺激は、正常細胞とは異なる反応性を示すことを認めた。この反応性の違いは、イマチニブ耐性の原因の一つとなる可能性が考えられた。一方、Toll様受容体ノックアウトマウスとBCR/ABL トランスジェニックマウスを掛け合わせたマウスの作成を行い、白血病の病態進行過程ついて検討を行った結果、Toll様受容体ノックアウトによる著明な影響は現在まで認められていないが、今後さらに内因性リガンドによるToll様受容体刺激などの効果について検討を進める予定である。 ②BCR/ABL蛋白の分解について詳細な検討を行った結果、PP2Aは異常構造センサーBag1によるBCR/ABLの分解を促進することを明らかにした。さらに分子内相互作用によるBCR/ABLの分解調節機構について検討をおこない、BCR/ABL蛋白の安定化には、4量体の形成、およびBCR部分の領域とABLのSH2領域との相互作用が関与することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究では、Toll様受容体ノックアウトマウスとBCR/ABL トランスジェニックマウスを掛け合わせたToll様受容体 (-/-), BCR/ABL (+/-)マウスの作成およびToll様受容体発現白血病モデル細胞の作成を行い、白血病の病態進行過程におけるToll様受容体の役割について検討を行った。一方、分子シャペロンによるBCR/ABL蛋白質の安定性の制御について、分子内相互作用や、PP2Aの影響について明らかにした。本研究の達成度は、ほぼ予定通りであると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
Toll様受容体 (-/-), BCR/ABL (+/-)マウスおよび白血病モデル細胞を用いて、熱ショック蛋白質(Hsp/Hsc70, Hsp90)および内因性Toll様受容体リガンドの白血病細胞の増殖、分化への影響を検討し、白血病病態進行におけるToll様受容体の細胞および個体レベルでの役割を明らかにする。一方、BCR/ABL蛋白質の分解について、分子シャペロンによるBCR/ABL蛋白質の分子レベルでの安定化制御機構の詳細を明らかにし、BCR/ABL依存性の白血病幹細胞の増殖および分化を阻害する機構を模索する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
白血病細胞から分泌されるエキソゾーム熱ショック蛋白質(Hsp/Hsc70, Hsp90) の、Toll様受容体を介するシグナル伝達による慢性骨髄性白血病発癌制御機構について検討を行うために必要な、抗体、ELISAキット、蛋白質精製用の試薬および実験器具の購入、および研究成果の学会発表のための旅費に次年度の研究費を使用する計画である。
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