2011 Fiscal Year Research-status Report
ストレス応答性転写因子ATF5は炎症反応におけるネガティブレギュレーターか?
Project/Area Number |
23590310
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
高橋 滋 東京薬科大学, 生命科学部, 准教授 (10266900)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ATF5 / ストレス / 急性期応答 |
Research Abstract |
DNAマイクロアレイを用いて見いだした、野生型のマウスに対してATF5ノックアウトマウスでLPS刺激時において発現が上昇しなくなる遺伝子のうちserum amyloid A1(SAA1), serum amyloid A2 (SAA2) mRNAについて、肝臓由来培養細胞HepG2を用いて詳しく解析した。その結果、IL-1b投与によるSAA1,2 mRNA発現量の上昇は、SiRNAを用いたATF5ノックダウンによって更に増幅した。この事からATF5が急性期応答遺伝子の発現を負に制御している事が示唆された。IL-1bがATF5mRNAの翻訳に与える影響をHepG2細胞をもちいて調べたところ、IL-1bが翻訳開始複合体を構成するeIF1aのリン酸化を促進すること。ATF5mRNAの翻訳効率を促進する事を見いだした。申請者は、すでにIL-1bがATF5 タンパク質を安定化することによりタンパク質量を増加させる事を見いだしている。これらの事から急性期応答などの炎症反応時においてATF5が何らかの役割を持っている事が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的に沿って、DNAマイクロアレイを用いて見いだした野生型のマウスに対してATF5ノックアウトマウスでLPS刺激時において発現が上昇しなくなる遺伝子のうちserum amyloid A1(SAA1), serum amyloid A2 (SAA2) mRNAについて、肝臓由来培養細胞HepG2を用いて詳しく解析した。その結果、IL-1b投与によるSAA1,2 mRNA発現量の上昇は、SiRNAを用いたATF5ノックダウンによって更に増幅したことからATF5が急性期応答遺伝子の発現を負に制御している事が示唆された。SAA1,2遺伝子のプロモーター解析のうち、SAA1,2遺伝子プロモータ部位のクローニングを行い、これらのプロモーターがIL-1b刺激により転写活性化する事を確認済みである。今後はATF5による転写抑制のメカニズムの解析を行う。更に、炎症がAT5発現に与える影響について検討した。IL-1bがATF5mRNAの翻訳に与える影響をHepG2細胞をもちいて調べたところ、IL-1bが翻訳開始複合体を構成するeIF1aのリン酸化を促進すること。ATF5mRNAの翻訳効率を促進する事を見いだした。申請者は、すでにIL-1bがATF5 タンパク質を安定化することによりタンパク質量を増加させる事を見いだしている。これらの事から急性期応答などの炎症反応時においてATF5が何らかの役割を持っている事が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
ATF5欠損により発現パターンが変動する遺伝子のうち上記により絞り込んだ遺伝子のプロモーター領域をSAA1,2以外にも解析し、これらの遺伝子の発現制御がATF5によってプロモーター経由で行われているのかどうかを調べる。そして、これら遺伝子のATF5による発現調節機構を解析する。今までの研究からATF5遺伝子は、様々な細胞で非ストレス負荷時にはその発現が低く抑えられていることがわかっている。一方で、肝臓では他の臓器に比べて非ストレス下においてもATF5mRNAの発現が高いこともわかっている。マウスの肝臓においてATF5遺伝子が高発現するメカニズムを解明するために、肝臓におけるATF5遺伝子のプロモーター解析、ATF5mRNA安定性の解析、ATF5タンパク質安定化メカニズムの解析を行い、ATF5が関与する「平常時には無駄な炎症反応が起こらない仕組み」を解明する。方法としてはまず、ATF5を高発現する培養細胞株を検索する。この細胞を用い、ATF5プロモーター上の肝臓特異的高発現に関与する転写調節領域を同定し、その働きを明らかにする。また、ATF5遺伝子のメチル化の状態を調べて、肝細胞とその他の細胞でのエピジェネティク遺伝子発現制御の違いを調べる。慢性炎症は発癌リスクを増大させる一因である。これと関連する事象として、マウスへのDEN (diethylnitrosamine)投与が、肝臓癌を発症させることが知られている。IL-6のノックアウトマウスでは、肝がんの発症率が減少することから、この発癌にはIL-6が関与すると考えられている。そこで、ATF5ノックアウトマウスを用いて、DENによる肝化学発癌の発症に及ぼすATF5遺伝子欠損の影響を調べ、ATF5が炎症を介した発癌を抑制するかどうかを調べる。すでに作製済みのATF5ノックアウトマウスにDENを投与し、肝がんの発症率を調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究は、主に動物培養細胞を用いて行われるため、動物細胞培養用培地と動物細胞培養用血清が必要である。ATF5のmRNA発現を解析するために、RNA抽出用試薬を用いてRNAを抽出し、定量的PCRを用いてRNA定量を行う。mRNA発現の解析には、PCR用試薬を用いたリアルタイムPCR法も用いる。ATF5の標的遺伝子プロモーター領域を解析するために、リポーターとしてluciferase発現プラスミドを用いるが、これには標的遺伝子の5’上流領域をluciferase cDNAに結合させた様々なリポータープラスミドが必要である。これらのプラスミド作製にはDNA制限酵素、DNA修飾酵素を用いる。作製したプラスミドはプラスミド精製試薬により精製する。luciferaseタンパクの活性の解析にはLuciferase assay 試薬を用いる。ATF5標的遺伝子の解析を行うために、DNAマイクロアレイ実験とCHIPアッセイを行うが、これらにはDNAマイクロアレイおよび転写因子群の抗体が必要である。
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