2012 Fiscal Year Research-status Report
ストレス応答性転写因子ATF5は炎症反応におけるネガティブレギュレーターか?
Project/Area Number |
23590310
|
Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
高橋 滋 東京薬科大学, 生命科学部, 准教授 (10266900)
|
Keywords | ATF5 / ストレス / 急性期応答 |
Research Abstract |
ATF5はアミノ酸欠乏、CdCl2, NaAsO2暴露などの様々なストレスによってその発現量が変動する。ATF5タンパク質のN末端領域は、定常時では分解シグナルとして、CdCl2 または NaAsO2 暴露時では、タンパク質の安定化領域として機能する。しかしながらATF5 N末端領域がデグロンまたはストレス応答性領域として機能する詳細なメカニズムの解明は未だに進んでいない。当研究室では、LPS刺激した野生型およびATF5ノックアウトマウス肝臓から抽出したmRNAをマイクロアレイで解析した結果、ATF5ノックアウトでは平常時においても急性期応答タンパク質Serum Amyloid A (SAA) 1、SAA2遺伝子の発現量が高く、またLPSによる発現誘導が起こらないことを明らかにしている。LPSは体内でマクロファージ等に発現しているTLR4によって認識され、炎症性サイトカインであるIL-1β、IL-6、TNFαが分泌される。これらのサイトカインが肝臓に作用し、肝臓から急性期応答タンパク質が血中に分泌され、急性期応答が引き起こされることが知られている。またヒト肝癌細胞HepG2細胞においてIL-1β添加によるSAA1とSAA2の発現量上昇はATF5ノックダウンにより増幅されることを見出している。これらのことからATF5が肝臓において急性期応答のネガティブレギュレーターとして働き、急性期応答の慢性炎症への移行や平常時における無用な炎症反応の活性化を防いでいるという仮説を立てた。したがって、IL-1βがATF5の発現量に与える影響を検証した。その結果、IL-1βをHepG2細胞に添加することで、ATF5タンパク質が安定化すること。またその安定化には、ATF5 N末端領域に存在する疎水性度の強い疎水性アミノ酸残基によるタンパク質の高い疎水性度と凝集度が重要であることが分かった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HepG2細胞を用いてIL-1βがATF5の発現量に与える影響を検証した。その結果、IL-1βによるATF5タンパク質の安定化には、N末端領域が関与していた。N末端領域の一次構造を解析した結果、疏水性度の強い疎水性アミノ酸残基、ロイシンまたはバリンの占める割合が高かった。さらに、ATF5 N末端領域の3番目から15番目までのアミノ酸残基はαヘリックス構造をとり、そのうちの疎水性アミン酸残基 (L3、L4、L7、L11、A14、L15)がヘリックスの一方側に偏って疎水性領域を形成することがわかった。N末端領域にあるロイシンまたはバリンを、アラニンへ置換したところIL-1βによるATF5タンパク質発現の上昇量が減少した。変異によるATF5タンパク質の凝集度への影響を調べた。その結果、変異体は野生型と比較してATF5 N末端領域の凝集度が低下していた。これらのことから定常時またはIL-1β応答におけるATF5タンパク質の安定性には、N末端領域に存在する疎水性度の強いアミノ酸残基によるATF5N末端領域の高い疎水性度と凝集度が重要であることが分かった。
|
Strategy for Future Research Activity |
ATF5はそのN末端領域の疎水性アミノ酸残基を介してタンパク質の安定化を制御する因子と疎水性相互作用することで、その発現量が制御されるとする仮説を立てた。今後はyeast-two hybridとCo-IPを用いて、ATF5タンパク質N末端領域の疎水性アミノ酸残基と相互作用しATF5の安定化を制御する因子の同定を行い、IL-1βによりATF5タンパク質発現が上昇するメカニズムを解明する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究は、主に動物培養細胞を用いて行われるため、動物細胞培養用培地と動物細胞培養用血清が必要である。ATF5タンパク質の発現を解析するために、抗体によるimmuno blottingを用いて定量を行う。ATF5と相互作用する因子の同定にはyeast two hybrid法を行うが、使用するプラスミド作製にはDNA制限酵素、DNA修飾酵素を用いる。作製したプラスミドはプラスミド精製試薬により精製する。同定したATF5結合因子とATF5の相互作用の解析にはCo-IP法を用いる。
|
Research Products
(3 results)