2012 Fiscal Year Research-status Report
カルシウムセンサーSTIM1の扁平上皮がん細胞増殖における機能解析
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23590311
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
吉田 純子 金沢医科大学, 医学部, 講師 (20064628)
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Keywords | STIM1 / 扁平上皮がん / ストア作動性カルシウム流入 / cell proliferation / migration / tumorigenicity |
Research Abstract |
細胞内カルシウム(Ca2+)イオン濃度制御による新たながん細胞増殖抑制法の確立を目標として、ストア作動性Ca2+流入機構のCa2+センサーであるstromal interaction molecule 1(STIM1)のがん細胞増殖における役割を解析した。まず、RNA干渉法によりヒト扁平上皮がん細胞A431のSTIM1ノックダウン細胞株を樹立した。STIM1ノックダウン細胞株では、細胞内Ca2+ストア枯渇刺激やG蛋白質共役受容体刺激で惹起されるストア作動性Ca2+流入(SOCE)がnegative control細胞株に比べて有意に低下した。STIM1ノックダウン細胞株にsiRNA-resistant STIM1を再発現させると、STIM1蛋白質発現レベルとストア作動性Ca2+流入の抑制が解除されることから、得られた細胞株がSTIM1蛋白質特異的ノックダウン細胞株であることが確認された。STIM1ノックダウン細胞の増殖、DNA合成能および細胞遊走能はnegative control細胞株のそれらに比べて有意に低下した。さらに、上皮増殖因子(EGF)刺激によるEGF受容体チロシンリン酸化レベルは、STIM1ノックダウン細胞株で有意に低下した。また、STIM1ノックダウン細胞をヌードマウスへ皮下移植すると、その腫瘍増生はnegative control 細胞株に比べて有意に遅延した。以上の結果から、STIM1はヒト扁平上皮がん細胞A431のストア作動性Ca2+流入機構ならびに腫瘍増殖に必須の分子として機能していることが明らかになった。このことは、STIM1が扁平上皮がん細胞増殖抑制のための新たな標的分子になる可能性を示唆している。これらの結果を、日本薬理学会年会および日本癌学会学術総会で発表すると共に原著論文として報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カルシウムセンサーSTIM1のヒト扁平上皮がんA431 の増殖における機能を解析するため、当初の計画である STIM1ノックダウン細胞株を樹立した。これらの細胞株を用いて、ストア作動性Ca2+流入(SOCE)の測定、細胞増殖、核酸合成能、上皮増殖因子受容体シグナリング、生体内腫瘍増生能などの機能解析が出来た。その結果、STIM1はヒト扁平上皮がん細胞のストア作動性Ca2+流入および試験管内、生体内がん増殖において必須のカルシウムシグナリング因子として機能していることが実証された。これらの成果は、日本薬理学会年会や日本癌学会学術総会にて発表し、原著論文として報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
得られたSTIM1ノックダウン細胞株を用いて、細胞遊走や血管新生におけるSTIM1の機能を更に解析するとともに、細胞分裂シグナリングであるEGF受容体シグナリングとSTIM1が関わるストア作動性Ca2+流入機構との連関についても解析を加える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の研究費残20,993円と次年度所要見込助成額1300000円を合わせて、上記研究を遂行するために必要な培養用プラスチック器具および血清、各種抗体、血管新生解析用キット、細胞遊走アッセイキット、ヌードマウス、その他試薬の購入に当てる。
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