2011 Fiscal Year Research-status Report
ストレス関連疾患での神経幹細胞および脳内ニッシェの機能異常の分子メカニズム解明
Project/Area Number |
23590321
|
Research Institution | National Defense Medical College |
Principal Investigator |
渡辺 康裕 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 医学教育部医学科専門課程, 教授 (90127324)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石塚 俊晶 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 医学教育部医学科専門課程, 准教授 (30399117)
松浦 成昭 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70190402)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 神経新生 / GPR56 / 神経前駆細胞 / アドレナリン受容体 |
Research Abstract |
うつ病等のストレス関連疾患では、脳海馬や側脳室周囲の神経新生低下が報告されている。また、G蛋白共役型受容体の1種であるGPR56は、ストレス関連疾患の患者において、海馬や側脳室周囲でその発現が低下し、神経新生低下との関連が注目されている。そこで、平成23年度は、神経新生に重要な神経前駆細胞の増殖・分化における神経伝達物質とGPR56の関連性について検討した。まず、マウス人工多能性幹細胞(iPS細胞)から胚様体を形成させ、All Trans Retinoic Acid (ATRA)で刺激し、1週間接着培養させ、神経前駆細胞への分化を誘導した。神経伝達物質受容体の1種であるalphaアドレナリン受容体アゴニストであるl-phenylephrine 投与は、マウスiPS細胞および神経前駆細胞の細胞増殖を有意に促進した。一方、betaアドレナリン受容体アゴニストであるl-isoproterenolの投与は、ATRAによる神経前駆細胞および神経細胞に特異的なNestinおよびNeuNの発現を有意に促進した。一方、Western blot法により、マウスiPS細胞および神経前駆細胞では、いずれもGPR56の発現を認めたが、その発現に有意差はなく、l-phenylephrineやl-isoproterenol刺激でもそれぞれのGPR56の発現に有意な影響はみられなかった。今回の結果より、alphaおよびbetaアドレナリン受容体は、神経前駆細胞の増殖および分化を介した神経新生への関与が示唆された。一方、GPR56発現とアドレナリン受容体との直接的関連性は確認できなかった。現在、マウスiPS細胞や神経前駆細胞にGPR56 siRNAを導入しGPR56をノックダウンして、細胞増殖能や神経分化に与える影響を検討しており、GPR56の神経新生への機能的関与を明らかにする予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
In vivo での神経新生や行動異常に対するGPR56 の影響をみるため、GPR56 shRNA 発現ベクターを用いて、マウス脳内でのGPR56 ノックダウン効果を検討しているが、ベクターの導入効率が低く、十分なノックダウン効果が得られていない。他のベクターを数種類使用し、導入技術の改良を行い、持続的で再現性のあるノックダウン効果の確立を目指す。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、まず、幹細胞の機能維持や神経新生に対する細胞外環境(ニッシェ)の関与を明らかにするため、iPS細胞や神経前駆細胞でのインテグリン発現および細胞外マトリックスとの結合活性に対する神経伝達物質やGPR56の影響を検討する。一方、マウスでの神経新生や行動異常に対するGPR56 の影響は、より早期に最適なGPR56 shRNA発現ベクターの導入技術を確立した後、実験を行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
慢性変動性ストレス刺激によるうつ病誘発マウスモデルに対して、GPR56を持続的にノックダウンさせるベクターを海馬に直接導入する。ベクター導入後、経時的に脳組織を摘出して、海馬や側脳室周囲のGPR56発現量や神経新生を測定比較する。また、マウスiPS細胞や神経幹細胞を用いて、蛍光抗体染色によるインテグリンの発現を確認する。次に、その培養系にノルアドレナリンやセロトニンの刺激を行い、インテグリンの発現変化を解析する。次に、マウスiPS細胞や神経幹細胞に siRNAを導入してGPR56をノックダウンした後、インテグリン発現および細胞外マトリックスとの結合活性を比較検討する。
|
Research Products
(14 results)