2012 Fiscal Year Research-status Report
自然免疫ストレスセンサーNLRPの新機能とその分子機構解明
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23590327
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
木下 健 金沢大学, がん進展制御研究所, 助教 (20311681)
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Keywords | がん / シグナル伝達 / 免疫 |
Research Abstract |
自然免疫系のストレスセンサー分子であるNLRP3は多様な細胞ストレスに応じて誘導される炎症性サイトカイン分泌に中心的な役割を担っている。申請者らはこれまでにNLRP3が細胞ストレスを感知したヒトマクロファージ細胞株の炎症誘導過程においてNF-κBの活性化を誘導し、TNF-α, IL-1βの発現誘導に寄与している事を明らかにしている。本研究の主眼点は免疫系細胞のみならず非免疫系細胞でも発現しているNLRP3が各種遺伝子発現誘導に寄与していることを明らかにする事にある。これまでにがん細胞で発現しているNLRP3が、がん細胞の恒常的なIL-1β遺伝子発現に関与していることを、各種がん細胞株のNLRP3ノックダウン細胞を樹立し、IL-1β mRNAの発現レベルを解析することで明らかにした。 本年度はNLRP3が他のサイトカイン、ケモカイン、増殖因子、マトリックスメタロプロテアーゼ等の産生にも寄与する可能性について検証し、NLRP3ノックダウンが、HT1080が産生するTGF-β、b-FGF、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP-2, MMP-9, MT1-MMP)の発現も減少させることを見いだした。MMP-2前駆体の活性型への変換も抑制されていた。MT1-MMP発現低下は大腸がん細胞株(WiDr)のNLRP3 ノックダウン細胞でも確認された。TGF-β、b-FGFもIL-1β同様、がんの悪性化と密接に関わる因子であり、MMP-2, MMP-9, MT1-MMPは、がんの浸潤および転移において主要な役割を担っている細胞外マトリックス分解酵素である。これらの結果より、NLRP3が、がん細胞においても各種遺伝子の発現誘導に寄与していることが明らかとなり、NLRP3が各種因子の発現制御を介してがんの悪性化にも重要な役割を担っていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、がん細胞が発現する各種因子の発現にもNLRP3が寄与していることを明らかに出来た。並行してNLRP3からNF-κB活性化に至る分子機構を解明することを目標に、Mammalian Two-Hybridシステムを応用した独自の結合スクリーニングシステムを構築し、NLRP3(及びそのアダプター分子ASC)と結合する因子をcDNAライブラリからスクリーニングすることも試みている。本年度はスクリーニングシステムを構築し、システムの有効性を確認(コントロール実験で薬剤耐性獲得クローンが出現する)した。
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Strategy for Future Research Activity |
1、in vivo、in vitro浸潤・転移モデルでNLRP3ノックダウンがん細胞のがん特性を解析する。 2、Mammalian Two-Hybridシステムを応用した結合スクリーニングシステムの検証とNLRP3結合因子探索によりNLRP3からNF-κB活性化に至る分子機序を明らかにする。 3、ヒトがん症例サンプルを解析し、NLRP3の発現レベルを調べる。 ことにより、NLRP3による各種因子の発現制御が、がんの悪性化にも重要な役割を担っていることを明らかにすることを目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1、ヌードマウス、受精鶏卵、インベージョンチャンバーを用いたがん浸潤・転移モデルの構築、解析ための試薬類:マウス、受精鶏卵、細胞培養用培地・器具、等。 2、結合スクリーニングシステムの検証およびスクリーニングのための試薬類:遺伝子組替え試薬、cDNAライブラリ作製試薬、アイソトープ、ルシフェラーゼアッセイ試薬、DNAシークエンス解析試薬、等。 3、遺伝子、蛋白発現レベル解析のための試薬類:定量PCR試薬、ELISA試薬、等。 (当該助成金が生じた状況及び、翌年度分として請求した助成金と併せた使用計画) Mammalian Two-Hybridシステムを応用したスクリーニングシステムを構築し、薬剤耐性獲得レポーターシステムが機能する事を確認できた。しかし、当初予定していたポジティブ結合コントロール(ASC-ASC間の結合)では薬剤耐性獲得クローンが得られず、ポジティブコントロールを見直してシステムを検証する必要が生じた。システムの検証とNLRP3結合因子探索を本年度分の計画として請求する。
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Research Products
(1 results)