2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23590329
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
矢澤 隆志 旭川医科大学, 医学部, 助教 (00334813)
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Keywords | セルトリ細胞 / 性分化 / SOX9 |
Research Abstract |
これまで、セルトリ細胞の分化過程をin vitroで再現できる系が存在しなかったことから、幹細胞や未分化な細胞からセルトリ細胞を分化誘導する系を確立することを試みた。そこで、未分化なセルトリ前駆細胞とされている細胞株を、成熟セルトリ細胞に分化させるために、レトロウイルスにより幾つかの転写因子の安定導入を行った。初めに、生殖腺の発生に必須な核内レセプターであるsteroidogenic factor-1(SF-1)を導入したところ、細胞はセルトリ細胞のマーカー遺伝子を全く発現せずに、多くのステロイドホルモン産生系の遺伝子を発現する細胞に分化した。次に、セルトリ細胞に発現し、性決定や性分化に重要な役割を果たすことが知られているSOX9を導入したが、セルトリ細胞のマーカー遺伝子は発現しなかった。そこで、SF-1とSOX9を同時に細胞に導入したところ、女性内部生殖器官の発達を抑制するホルモンであり、セルトリ細胞分化の初期マーカーであるミュラー管阻害因子や胎児精巣で生殖細胞の減数分裂の抑制に関わるCyp26b1といった多くのセルトリ細胞特異的なマーカー遺伝子が発現した。SF-1とSOX9を導入した細胞は、株化することにより、長期間の培養と保存が可能であることから、元の未分化細胞と様々な比較を行うことにより、セルトリ細胞の分化メカニズムを調べる大変有用なツールとなる。そこで、分化前後の細胞からmRNAを抽出して、DNAマイクロアレイを行ったところ、既知のセルトリ細胞マーカー遺伝子に加えて、新たな遺伝子がセルトリ細胞の分化により発現誘導されることが分かった。今回、確立した系はセルトリ細胞マーカーを発現しない細胞から、成熟セルトリ細胞を分化させた初めての事例であり、非常に大きな成果であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
in vitroで成熟セルトリ細胞を分化誘導する系を確立する当初の目的を果たしたことから、順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度、確立したセルトリ細胞の分化系を用いて、セルトリ細胞分化の分子メカニズムを調べる。このために、昨年度行った、DNAマイクロアレイの結果、分化時に発現が誘導される遺伝子に着目する。これらの遺伝子を、未分化細胞にレトロウイルスにより過剰発現させたり、分化した細胞でshRNAやsiRNAによるノックダウンを行って、セルトリ細胞のマーカー遺伝子の発現変化を調べることにより、分化に重要な因子を同定する。これにより同定された遺伝子は、ノックアウトマウスの作製を行いin vivoにおけるセルトリ細胞形成や分化における役割を調べる。 また、誘導された遺伝子の発現をin vivoで詳細に調べることにより、新たなセルトリ細胞の分化マーカーやセルトリ細胞特異的に発現する遺伝子を同定する。そして、同定された遺伝子がどのように発現制御されているかを調べるために、SF-1やSOX9の抗体を使ったクロマチン免疫オンチップ(ChIP-on-chip)法により、これらの転写因子が結合するゲノム領域を決定する。同定された領域をレポーターアッセイやクロマチン免疫沈降(ChIP)法により、セルトリ細胞特異的な発現に重要であるどうかを調べ、その転写メカニズムを解明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(37 results)