2012 Fiscal Year Research-status Report
肺胞上皮細胞の発生、分化における血小板受容体CLEC-2の役割の解明
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23590330
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
井上 修 山梨大学, 医学工学総合研究部, 助教 (00432154)
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Keywords | CLEC-2 / 肺胞上皮細胞 / 血小板 |
Research Abstract |
H24年度は以下の検討を行った。 1.H23年度に作成したCLEC-2欠損マウス(KO)とワイルドタイプマウス(WT)のP0(E18.5帝王切開した新生仔)肺標本をAquaporin-5抗体で再度染色した。Aquaporin-5はI型肺胞上皮に発現するが、WT肺でも染色性が悪く、KOとの差を定量する事が出来なかった。 2.マウス肺を可溶化し蛋白電気泳動した後、抗Aquaporin-5抗体でウェスタンブロットし定量する事とした。可溶化後の成体マウス肺抽出物を検討したが、予想される28kDa付近には淡い数個のバンドが認められるのみで、20kDa付近に濃いバンドが得られたため、Aquaporin-5バンドの同定のためラット唾液腺抽出物をpositive controlとして使う事とした。このラット唾液腺抽出物ではAquaporin-5に相当するバンドは25kDa付近に見られ、マウス肺抽出物ではその直上に比較的濃く認められる29kDa付近のバンドであると推測された。 3.H23年度の検討でKOマウス肺の拡張不全が示唆されたためP0マウスに経口挿管し一定時間加圧した後肺を摘出、パラフィンブロック化し、加圧に対する組織学的な差異を評価する予定でいた。しかしP0マウスへの経口挿管は気管の損傷や漏れなどが激しく中止した。 4.肺胞構造の発生異常の可能性を評価するため、P0のWT仔とKO仔の間にAquporin-5のmRNA発現量の差異をGenechipを用いて解析することとした。CLEC-2 nullマウス(KO)とそのコントロール(WT)とともに、巨核球/血小板系でのみCLEC-2を欠損させたコンディショナルマウス(fl/fl PF4)とそのコントロールマウス(fl/fl WT)の4系統のP0マウス肺を用いて評価することとした。交配の関係で、P0胎仔は4月上旬に得られる見込みとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
これまで論文に報告されているP0マウス肺を加圧しながら固定する実験手技の実施が技術的に困難であった。また、Aquaporin-5抗体による肺の免疫染色が不十分な染色結果であった。これは免疫賦活を行っても改善せず、抗体自体の問題の可能性が考えられた。 Genechipで解析するための交配、出産に時間がかかってしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
1. Aquaporin-5の蛋白量をWT/KOで定量比較する事でにより肺胞上皮の分化度の差異を評価する予定であったが、今後はGenechipを用いてRNAレベルで比較し、差異を明らかにする方策へと変更した。ただし肺胞構造の組織形態学的な比較は、顕微鏡レベルでの比較をさらに行う事とする。 2.(再現実験)我々はハイブリドーマより得られる抗マウスCLEC-2抗体を作成した。この抗体は、経静脈投与でマウス血小板膜上のCLEC-2発現をフローサイトメトリーで検出以下に減少させる効果を持つ(未発表)。この抗体をCLEC-2発現妊娠雌マウスに投与し、CLEC-2 null マウス新生仔でみられる呼吸不全が再現されるか検討する。 3.(レスキュー実験)CLEC-2 null妊娠雌マウスにリコンビナントCLEC-2蛋白を経静脈投与し、新生仔に認める呼吸不全症状が改善するか検討する。改善が認められる場合は、肺胞上皮細胞側リガンドへのCLEC-2結合による何らかの活性化シグナルが肺胞上皮細胞に惹起される事を示す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
Genechipで解析するための遺伝子改変マウス胎仔を得る目的で交配を行ったが、なかなか妊娠せず、胎児を得るまでに時間がかかってしまった。しかし親マウスのペアの調整により改善がみられている。今後得られたマウス仔の組織を用い、Genechipでの解析を複数回行う。依託解析を利用する。1検体20万円、CLEC-2 nullマウスとその健常コントロール、コンディショナルマウス(fl/fl PF4)とそのコントロールの4検体で計100万円計上。 培養上清中に分泌された抗CLEC-2抗体の精製がうまく行かず、なかなか複数回の実験に使用できる濃度、量の抗体が得られなかったため投与実験も開始できなかった。しかし硫安を取り除く為の透析のステップを省略するなどの改変を行い、収率が改善している。リコンビナントCLEC-2蛋白、抗CLEC-2抗体の作成、精製に計100万円計上。 第35回日本血栓止血学会学術集会(於・山形市、1名、旅費宿泊費含む)を10万円で計上。 ホームページ管理料12万円計上。 残りの予算は消耗品費、マウス飼育費等に充当する予定。
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Research Products
(1 results)