2011 Fiscal Year Research-status Report
新たな視点(細胞内局在制御)からアプローチした細胞機能発現機構の探究
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23590332
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
林 謙一郎 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90238105)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | myocardin / MRTF-A/B / SRF / Crm1 / 核外移行 / 平滑筋細胞 |
Research Abstract |
平滑筋細胞分化のマスター遺伝子であるmyocardin (Mycd) とそのファミリーであるMRTF-A/Bの細胞内局在の相違(Mycd:恒常的核局在、MRTF-A/B: 細胞質局在, Rhoシグナル依存性に一過的に核移行)を核外移行に焦点を当て解析した。この結果、MycdはMRTF-A/Bと比較して核外移行因子であるCrm1との相互作用が抑制されていることを明らかにした。その分子機構の概略を記す。 Mycd 及びMRTF-A/BにはCrm1結合部位であるleucine (L)-rich配列が2箇所 (L1: N末端L-rich 配列; L2: Q-rich domainに位置するL-rich 配列) 存在するが、MycdではL2のみがCrm1と結合する。N末端の128アミノ酸残基からなる領域が中央部ややN末側に位置するcentral basic domain (CB)と分子内結合し、L2がマスクされる。このためCrm1に対する親和性が低下する。さらに、SRFによりMycd-Crm1相互作用が拮抗的阻害を受けることをin vitroアッセイ系で証明した。培養平滑筋細胞を用いたin vivoアッセイでも、Mycd-SRF複合体形成がMycdの核外移行を抑制することを明らかにした。このSRFの効果はMycdで著明であるが、MRTF-A/Bでは弱い。この理由としてMycdファミリー間でのSRF 及びCrm1に対する親和性の相違が考えられる。SRFに対する親和性の序列:Mycd > MRTF-B > MRTF-A。Crm1に対する親和性の序列:MRTF-A > Mycd > MRTF-B。これらの結果から、MycdはCrm1を介した核外移行システムが機能しにくい構造を取ることが示唆された。 以上の結果をまとめた論文を投稿中である。また、今年度の細胞生物学会で発表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は核外移行に焦点を当てmyocardin (Mycd) とMRTF-A/Bの細胞内局在の相違を解析し、Crm1を介した核外移行の分子機構の違い及びMycd ファミリーの細胞内局在制御に関わる新たなSRFの役割を明らかにした。以上の結果をまとめた論文は現在投稿中である。さらに、G-アクチンのMRTF-A-Crm1 複合体形成に及ぼす新たな効果を見いだしている。これに関しては現在、投稿準備中である。これらの成果を研究開始から1年以内に達成できたことは評価できる。 一方、骨格筋細胞分化に伴う細胞内局在制御因子の発現・機能変化の解析、特に筋分化における細胞内局在制御因子の発現とMRTF-A/Foxo1の発現・局在との相関については現在解析中である。このため「(2)おおむね順調に進展している」と評価した
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Strategy for Future Research Activity |
先ず、投稿準備段階まで進展しているG-アクチンのMRTF-Aの細胞内局在制御に及ぼす効果の分子機構解明を最優先の課題として研究を進め、できるだけ早く専門誌に発表したい。また、これまでに得た知見とMRTF-A/Bが中心的役割を果たす上皮間葉転換との関連についても解析を進め、MRTF-A/Bとimportin α/β1またはCrm1との相互作用制御の果たす役割の生物学的意義を探求して行きたい。さらに、骨格筋分化における細胞内局在制御因子の発現とMRTF-A/Foxo1の発現・局在及び機能制御に関して研究を進めて行く予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度から新たに本研究を開始したため、当初研究方針の是非や進展予測に関して不明瞭な点が多く、研究費の使用に関して慎重になり、できる限り節約して実験を進めた。このため「収支状況報告書」の「次年度使用額」の合計欄が0円にならなかった。次年度では研究方針が明確になったことと研究対象となる細胞種が広がるので前年度から繰り越した研究費と次年度も研究費を合わせて投入して研究を進めて行く。また、老朽化した実験機器のリニューアルにも研究費を使用したい。
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