2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23590334
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田村 淳 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00362525)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | クローディン / ノックアウトマウス / タイトジャンクション / 腸管 / イオンホメオスターシス / 栄養吸収 / 脂肪酸 / 胆汁酸 |
Research Abstract |
細胞間接着装置のひとつであるタイトジャンクションは、主にクローディン分子により形成され、細胞間バリアーを構築する。しかしながら、近年タイトジャンクションには、単なる細胞間バリアー以上の機能があることが示唆されており、小腸におけるイオンホメオスタシスもそのひとつである。しかし、イオンホメオスタシス維持の分子機構の詳細は十分に解析されていない。小腸内腔のナトリウムイオン濃度が保たれることは栄養の吸収に必須であるが、食物からの補給は微々たるものである。実際、小腸上皮内腔面のグルコーストランスポーターは、ナトリウムイオン勾配で駆動されることが知られている。 最近、私共ではタイトジャンクションのクローディンファミリーのサブタイプの1つであるクローディン15が、血液中のナトリウムイオンを小腸内腔へ細胞間隙を介して供給するシステムを構築することを示すデーターを得た。これまでの結果をふまえて本研究は、ナトリウムイオンを含むさまざまなイオンの、体内各部に特異的なイオンバランスの、クローディンによる制御システムを解明することを目的とする。 本研究では、申請者が最近数年間解析を進めてきた、腸管内イオンホメオスタシスが崩れたクローディン15ノックアウトマウスを中心に、特に「腸管内イオン環境の変化」と「グルコースやアミノの他にカルシウムや胆汁酸などの微量物質も含む栄養吸収」について検討し、タイトジャンクションで規定される生体イオン環境ホメオスタシスの生体機能における重要性について検討した上で、さらにその応用を目指す。 本年度は、クローディン15ノックアウトマウスにおける脂肪酸吸収や骨密度に関する結果が得られている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
a.クローディン15ノックアウトマウスと野生型マウスにおける、腸管の各部位での栄養吸収とイオンホメオスタシスの関連について検討を計画した。研究初年度であり、ほぼ全ての解析は進行中である。現状は、アミノ酸吸収に対するナトリウム依存性吸収について検討する。=生体でのアミノ酸吸収についての測定方法について、ほぼ確立した。/b.クローディン15は、栄養吸収の不均衡によりNASHを誘導する可能性があり、高脂肪食を投与マウスモデルの解析も行う。=高脂肪食の投与を検討した。/c.カルシウムやマグネシウムの吸収。生体での影響を骨密度測定などで検討する。=X線を用いた骨粗鬆症の解析を進めている。次年度でも進める。/d.クローディン15の腸管システムを模倣したin vitro系を樹立し、細胞の生存、増殖、機能に対する細胞生物学的な解析を行う。どういった培養細胞種が適切かなど検討のよりがあり、試行錯誤が必要と思われるが、SGLT1やNa,K-pumpもマウス小腸とほぼ同じレベルの活性で動く系を確立する。=安定発現系の樹立の一部が進んでいる。次年度でも進める。/e.クローディン15の腸管肥大の原因についての探索。=考えられる遺伝子の発現変動を調べている。次年度でも進める。/f.プロトン、カリウムなど非ナトリウムイオン依存的な輸送。=腸管内のpH測定など進めて来た。/g.イオン濃度の変化によるエンドサイトーシスへの影響。=形態学的な解析を進めているが、次年度でもさらに進める。/h.クロライドイオンの腸管内濃度変化についての検討。クローディン15では、腸管内ナトリウムイオン濃度ばかりではなく、アニオンの濃度も同時に変化している可能性が高いが、測定系が難しく、詳細が検討されていない。=系の確立を進めている。次年度でも進める。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度は本申請の初年度であり、原則的に解析は進行中である。そこで、解析2年目の平成24年度は基本的に、平成23年度の研究をさらに深める計画で進める。その中で、特に、a.腸管での解析をベースに他の臓器での解析へと応用を目指す(腎尿細管など)=クロライドイオンの測定系が立ち上がると、他に一般的には測定の難しいカルシウムなどの測定も可能となる。これらはイオン選択性電極や蛍光インジケーターの系である。さらに、また系自体は、腎臓尿細管や唾液腺など微細管腔臓器でのイオン環境およびタイトジャンクションの電気特性の解析が可能となる。今後、タイトジャンクションを介した精確な定量解析が必須と考える。平成24、25年度の力点の1つになる。b.フラックスによる浸透圧調節や成長因子などの比較的大きな分子量の分子の移動による生体環境ホメオスタシスも考慮する=タイトジャンクションを介したイオンの透過とは違った仕組みを経て、小さな可溶性分子はタイトジャンクションを横切ることができる。これはエネルギー依存的な経路で、室温程度に温度を下げた時には、なくなってしまうストランドのダイナミクスに依存した系と考えられている。これまで、このフラックスが浸透圧の調節に寄与するかの解析はない。外来異物の侵入を防ぐ防御機構としての機能も考えられるフラックスを、さらに踏み込んで解析することで、イオン、水の挙動との相関関係を解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の1,500千円(直接経費;内訳けー物品費は1,370千円、旅費30千円、その他100千円)の交付予定である。平成23年度からの持ち越し分は、568,463円(直接経費)である。【備品】平成24年度;平成23年度に引き続き、顕微鏡や細胞培養のインキュベーターなど、研究に必要なほとんどの備品は既に揃っており大阪大学分子生体情報学教室に既存の備品で研究を遂行するとともに、大学に備え付けの共同機器を積極的に利用する。【消耗品/その他】平成24年度;3年間を通して基本的には、同内容の予算であるが、平成24年度には、前年度の蓄積から蛍光インジケーターなどのin vitro~semi vitroの実験およびマウス飼育費用について、経費が必要となることが見込まれた。そのため、平成24年度への持ち越しを計上の上、有効な使用に徹する。・イオン環境やpH環境の測定用の蛍光インジケーター、マウスgenotyping用のPCR用酵素やクローディンノックアウトマウスの飼育費用などに経費がかかる。また、in vitroでの実験のためのディッシュ、血清、培地など、フラックス測定用のデキストラン、電気生理学実験用の試薬、pHやイオン濃度測定用の試薬(蛍光インジケーターなど)、蛋白同定・定量、蛍光染色用の試薬や抗体、分子生物用の制限酵素等が必要である。消耗品として計上した。(1,370千円)。・英語論文校正用の経費を計上した。(100千円)。・学会のための旅費が必要である。(国内30千円)。
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] Deficiency of claudin-18 causes paracellular H+ leakage, up-regulation of interleukin-1β, and atrophic gastritis in mice.2012
Author(s)
Hayashi D, Tamura A, Tanaka H, Yamazaki Y, Watanabe S, Suzuki K, Suzuki K, Sentani K, Yasui W, Rakugi H, Isaka Y, Tsukita S.
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Journal Title
Gastroenterology
Volume: 142
Pages: 292-304
DOI
Peer Reviewed
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