2012 Fiscal Year Research-status Report
核内因子IκBーζを介したエピジェネティクな転写調節
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23590338
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山崎 創 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (70315084)
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Keywords | 発現制御 / 転写 / 炎症 |
Research Abstract |
NF-κBは微生物感染に対する防御応答において中心的な役割を担う転写因子であり、リポ多糖(LPS)などの感染微生物由来分子の刺激によって活性化され、抗菌タンパク質や炎症メディエーターの産生を誘導する。研究代表者は以前、NF-κBと結合する核内因子IκBζをクローニングし、ノックアウトマウスの解析などを通じてこの新規分子のはたらきを明らかにしてきた。IκBζの欠損細胞では、一群のNF-κB標的遺伝子の発現が障害されているが、それらの発現制御領域にはNF-κBやクロマチンリモデリング因子が結合できないことから、IκBζは転写活性化因子に対するシスエレメントのaccessibilityを決定する重要因子であると考えられた。 本年度研究代表者は、二つのIκBζ依存性遺伝子の発現が、LPSの刺激と、合成糖質コルチコイドであるデキサメサゾン(Dex)の刺激によって相乗的に増強されることを見出した。この二つの遺伝子はいずれも抗菌タンパク質をコードしていた。この発現増強効果は、炎症メディエーターなどの多くのLPS誘導性遺伝子の発現がDexによって抑制される事実と対照的である。また、この二つの抗菌タンパク質遺伝子の発現は、Dexの単独刺激ではまったく誘導されなかった。糖質コルチコイド受容体(GR)はDexの単独刺激時には発現制御領域に結合しないが、LPSとの共刺激時には結合していた。また、IκBζの欠損細胞では、NF-κBやクロマチンリモデリング因子ばかりでなく、GRの発現制御領域への結合も障害されていた。 感染応答時にTNF-αやIL-1βなどの炎症性サイトカインレベルが上昇すると副腎から放出される糖質コルチコイドによって炎症応答が抑制されることが知られているので、本研究で見出した抗菌タンパク質の発現増強は、過度の炎症反応を抑えつつ感染防御能を維持する上で重要であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
二つのIκBζ依存性遺伝子についてリポ多糖刺激と糖質コルチコイド刺激による発現増強効果を認め、その効果に関わる分子機構を明らかにすることができた。複数の転写活性化因子による相乗的な転写誘導の機構を解明できたと同時に、標的遺伝子の機能に基づいた生物学的意義の考察ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度までの理解をさらに進めるべく、LPSとDexによる相乗的な転写誘導における、IκBζおよびその結合因子の役割を明らかにする。IκBζ自身はDNAに直接結合するアミノ酸配列を持たず、NF-κBのp50サブユニットを介して標的プロモーターに結合すると考えられるので、まず、p50の役割に着目して解析を進める。p50の欠損細胞を用いてこれまでと同様の解析を行なうほか、刺激前後のプロモーター上におけるp50の挙動を明らかにする。さらに転写活性化時における、IκBζとGRとの相互作用や、クロマチンリモデリング因子のはたらきについても解析を行なう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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