2012 Fiscal Year Research-status Report
補体関連分子MASP―1による新規なD因子活性化機構
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23590342
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
高橋 実 福島県立医科大学, 医学部, 講師 (00285024)
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Keywords | 補体 / レクチン経路 / トランスジェニック / MASP |
Research Abstract |
本研究はMASP-1/3が補体第二経路の活性化因子の要であるD因子の活性化機構を明らかにすることを目的として研究を推進している。前年度に報告したように、MASP1のC末端側のプロテアーゼドメインを蛍光タンパクeGFPと置き換えたキメラタンパクを全身性に発現しうるトランスジェニックマウス(以下、Tg-Masp1eGFP)を作った。今年度はこのTgマウスとMasp1/3KOマウスを交配させることで、内因性のMASP-1/3を欠損したTg-Masp1eGFPの生産、増殖を行い、実験に供与できるだけの個体数を得ることが出来た。さらにMASP-1にHisタグを付与したMASP-1Hisタンパクを発現するTgマウス(以下、Tg-Masp1His)も作成し、交配により、増殖させている。 次にMASP1/3KOマウスにおける脂肪組織、および血中における脂質の代謝異常を調べた。D因子は主に脂肪細胞で発現し、血中に分泌されるという特異的特徴がある。実際にMASP1/3KOマウスで脂肪組織の切片を作成し、観察したところ、成熟脂肪細胞の大きさが小さい細胞が多くを占めることが分かった。さらにこのKOマウスの血清を用い、血中の脂質の量を測定した。その結果、肥満ホルモンといわれるレプチンがKOマウスで有意に低下していることがわかった。また総コレステロール、HDLがMASP1/3KOマウスにおいて有意に低下していることが観察された。この結果は、補体D因子が補体系以外の脂質代謝にも関与することを初めて示したことになる。 また、ヒトD因子の解析も行った。まず、昆虫細胞を用い、ヒトD因子のcDNAを組み込み、発現を試みた。その結果、得られた組み換え体は第二経路を活性化しない、前駆体であることがわかった。これにヒト由来のリコンビナントMASP-1を加えることで、活性型に転ずることも示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書の研究計画で該当年度はMASP1/3KOマウスにおける脂肪細胞の脂質代謝異常を調べること、またヒトにおいてもMASP-1がD因子前駆体を活性化するのかを明らかにすることを計画した。「研究実績の概要」に記載の通り、MASP1/3KOマウスで脂肪細胞の異常、脂質代謝の異常を確認できた。さらに実験計画にも記載しているようにヒトD因子の組み換え体を作成し、それがマウス同様、未活性型の前駆体として精製されることを明らかにすることができた。またヒト由来のリコンビナントMASP-1がD因子を活性化しうることも証明した。これらの結果は概ね、実験計画で記載した内容に到達しているものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は最終年度であるので、論文に発表する。昨年、デンマークのグループがヒトにおいて、MASP-1/3が欠損した血清でも第二経路を活性化することを報告している。この結果はMASP-1/3がヒトでは必ずしもD因子の活性化に必要としないことを意味し、ヒトとマウスではその活性化機構が違うことを示す。しかし、この論文では実際にMASP-1/3欠損血清で、D因子の性状を調べてはいない。そこで、マウスを解析してきたようにMASP-1/3欠損ヒト血清のD因子の状態を調べる。 また、ヒトにおけるD因子の状態を調べるために等電点電気泳動を使った2次元電気泳動を確立し、ヒト血清中のD因子を詳細に調べる。またMASP-1Hisを組み込んだTGマウスを用い、D因子の活性化が認められるのか、調べる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費は研究計画を遂行するために主に消耗品等の購入、マウスの飼育費、得られた研究成果の論文作成、および国内外での学会発表に対する旅費に使う予定である
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