2012 Fiscal Year Research-status Report
Runx1はEndMTを介して血球産生型血管内皮から造血幹細胞を産生するか?
Project/Area Number |
23590345
|
Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
山元 康敏 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50405247)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥田 司 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30291587)
|
Keywords | Runx1 / 造血幹細胞 / 血球産生型血管内皮 |
Research Abstract |
【研究の目的】造血関連転写因子であるAML1/Runx1がどのようにして、胎生期背側大動脈の血球産生型血管内皮から造血幹細胞が発生する過程を制御するのか、その分子機構を解明する。 【研究実施計画】1)二光子フェムト秒光パルスレーザ走査型顕微鏡を用いた生体内分子イメージングにより、造血幹細胞発生動態を可視化し、遺伝子改変マウスを用いてRunx1依存性分子を検索・同定する。2)“極性と密な接着を有する血管内皮が、Runx1により血管内皮間葉転換を介して造血幹細胞に形質転換する”との仮説を検証する。 【研究成果】計画1)については、イメージングに用いる遺伝子改変マウス(Runx1:GFPマウス)のgermline transmissionが確立された。現在GFPシグナルを確認中である。計画2)については、造血幹細胞発生時における血管内皮間葉転換関与に関して、さらに詳細なマーカー発現評価を行った。野生型、Runx1ノックアウト(Runx1-/-)でのES細胞分化の系を用いて、『リアルタイムPCR法』により血管、血球、および初期発生マーカーの比較検討を行った。Runx1-/-にて血管内皮間葉転換を促進する転写因子Snailの発現低下に伴い、血管内皮細胞マーカーPECAM-1の発現上昇と平滑筋細胞マーカーα-SMA発現低下(培養12日目)が確認された。一方血球マーカーの発現低下および初期発生マーカーの発現上昇が見られた。これらの結果は、ES細胞レベルでRunx1の発現状態により、血管内皮分化および血球分化、さらに初期発生が影響を受け、昨年度の結果を踏まえ血管内皮レベルで極性と接着の喪失にSnailが関与している事が示唆され、上記仮説2)を強力に支持するものと考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.平成24年度中に計画した、遺伝子改変マウス作製については、Runx1:GFPマウスのgermline transmissionが確立された。現在、二光子フェムト秒光パルスレーザ走査型顕微鏡により固定未染色標本(E11.5)、固定免疫染色標本(E11.5)にて、シグナル確認中である。 2.一方、平成25年度に予定していた、“極性と密な接着を有する血管内皮が、Runx1により血管内皮間葉転換(Endothelial Mesenchymal Transition; EndMT)を介して造血幹細胞に形質転換する”との仮説検証計画については、ES細胞分化系を用いて次の結果が得られた。即ち、Runx1依存下にEndMTマーカービメンチン、EndMT促進転写因子Snailが制御される他、血管構成成分の分化、血球構成成分の分化、さらに初期発生も制御されている可能性が考えられた。これらの詳細なマーカー解析結果、および、マウス血管内皮前駆細胞株を用いた検討でのSnail発現制御においても同様の傾向が認められることが、上記仮説を支持する結果と考えられ、平成25年度計画の『Runx1依存性分子のスクリーニング・同定』を大きく推進する一助となり得るとも考えられた。
|
Strategy for Future Research Activity |
(平成25年度)平成24年度に引き続き、造血幹細胞発生動態を可視化、およびRunx1依存性分子の同定を目指す。 【計画1:二光子フェムト秒光パルスレーザ走査型顕微鏡を用いた生体内分子イメージング】マウス胎仔10.5~11.5日齢の背側大動脈血管内皮から造血幹細胞が発生する過程を、二光子フェムト秒光パルスレーザ走査型顕微鏡を用いて『生体内分子イメージング法』にて観察する。タイムラプスイメージにて、血管内皮からの造血幹細胞発生が、形質転換あるいは不均衡分裂に因るかを検証する。【計画2:不死化血球産生型血管内皮細胞株の樹立】Runx1発現により血管内皮から造血幹細胞が発生する分子メカニズムについて、 Runx1依存性分子を介する新規制御システムの可能性を検証するため不死化細胞株を樹立する。Runx1:GFPマウスと不死化マウスを交配し、Runx1:GFP; Tg(H2-K1-tsA58)+/-マウスを作製する。本マウス胎仔10.5日齢の大動脈を摘出・器官培養後、血管内皮を含む接着性細胞より純粋な血球産生型血管内皮細胞分画(Runx1陽性)を『FACS』にて分離回収する。【計画3:Runx1依存性分子のスクリーニング・同定】不死化した純粋な血球産生型血管内皮細胞分画より、非許容条件下で造血幹細胞に効率よく分化させる培養条件を確立する。造血幹細胞への分化前後の遺伝子発現プロファイル変化を『DNAチップ』にて検出し、『クラスター解析』にてRunx1依存性標的分子を検索する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該研究ではいくつかのマウス・コホートを維持し、かつ、遺伝子改変マウス作製のための採卵・掛け合わせをあわせると、おおよそ200~300匹のマウスを常時維持することを想定している。マウス購入費用は年間80万円、飼料をふくむ飼育のための経費は月平均約7万円、合計年間約150万円規模を試算している。 平成25年度には、二光子フェムト秒パルスレーザ走査型顕微鏡を用いた生体内分子イメージングを行うにあたり、器官培養・全胚培養に必要な物品(培養皿、培養液、各種成長因子、各種血清、コラーゲンゲル等の各種試薬、培養液還流ポンプおよび各種チューブ類)並びに、必要な各種抗体(一次、二次抗体)類、また不死化血球産生型血管内皮細胞株の樹立のために必要な(および遺伝子改変マウス確立確認時にも)FACS関連試薬(血清、成長因子、インターフェロン等)・抗体・必要物品(丸底チューブ、培養皿、セルストレイナー等)などが主たる支出となるものと考えている。 加えて、クローニングのための分子生物学実験試薬やin vitro実験のための培養試薬が必要となるものと考えている。 こうした支出を勘案し、年間約298万円の予算を計上したい。
|
Research Products
(4 results)