2012 Fiscal Year Research-status Report
遺伝子発現誘導型の癌モデル動物における癌性カヘキシア発症の分子メカニズム
Project/Area Number |
23590358
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
鈴木 昇 三重大学, 生命科学研究支援センター, 准教授 (00202135)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
及川 伸二 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (10277006)
齋藤 浩充 三重大学, 生命科学研究支援センター, 助教 (50303722)
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Keywords | がん性カヘキシア / モデル動物 / カヘキシア誘導能 / がん宿主相互作用 / IL-6 / BNP / FoxN1 |
Research Abstract |
我々は、自ら開発したモデル動物を用いて、癌性カヘキシアについてがん細胞と宿主の両面から解析してきた。 炎症性サイトカイン・インターロイキン6(IL-6)と脳性ナトリウム利尿ポリペプチド(BNP)がカヘキシアを誘発する能力の極めて低いがん細胞をカヘキシア高誘発細胞に悪性転換する知見から、カヘキシー誘導能の獲得にIL-6とBNPがそれぞれのシグナル伝達系でクロストークする可能性を想定しin vitro系にてその可能性をテストした。まず、特殊加工シャーレ内3次元培養によって、カヘキシー誘発細胞(RMS3)がスフェロイドを形成し、IL-6を強く発現誘導することを示した。次にある新規物質が、正常脾臓細胞のリポポリサッカライド(LPS)刺激依存IL-6 誘導発現を阻害せず、腫瘍細胞スフェロイド形成に伴うIL-6 誘導発現を抑制することを見出した。スフェロイド形成でBNPも誘導され、新規物質によって濃度依存的にスフェロイド形成に伴うIL-6誘導発現の抑制の傾向も認められ、今後の解析の方向性を示唆する結果を得た。 がん性悪液質発症は、がん細胞の性質のみならず、宿主側の因子によっても規定されることをFoxN1ミュータントC57BL/6ヌードマウスにおいても実証した。RMS3皮下移植後、野生型C57BL/6では筋肉・脂肪量低下を伴う強い悪液質症状を示すが、C57BL/6ヌードマウスは強い抵抗性を示した。FoxN1がどのようなメカニズムで悪液質症状に寄与するかは全く不明であるが、われわれの系がtumor-host相互作用の観点から悪液質発症を捉えるよいモデルであることを示している。 血清タンパク質の二次元電気泳動と質量分析によるプロテオミクス解析によりカヘキシア血清特異的なたんぱくの複数同定が進んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
24年度に実施予定であったカヘキシアに関連するたんぱくを検索(血清タンパク質の二次元電気泳動と質量分析によるプロテオミクス解析)のほとんどを23年度末にを前倒しで行っていたため、年度当初から詳細なデータ解析が可能であった。カヘキシア血清特異的なたんぱくが複数同定が進んだ。がん性悪液質発症がホスト遺伝背景に依存するメカニズム探索としての遺伝子をFoxN1に限定できたことは大きな進展である。当初に予定していたcDNA発現ラーブラリスクリーニングおよびmicroRNAに関する解析は未達であるが、FoxN1遺伝子を軸とするがんと宿主の相互作用の解析の新規な解析糸口を発見したことにより、それらの未達を補いたいと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果の深化と申請当初の計画にそって研究を推進する。 とくに、IL-6とBNPシグナル伝達系のクロストークを証明し得るin vitro 3次元培養での研究に重点をおき進める。遺伝子操作動物に由来する細胞株を樹立し、細胞生物学的かつ分子生物学的観点で、in vivoにおいては腫瘍形成能やカヘキシー誘導能の観点からの解析を推進する。IL-6が炎症性サイトカインであるという事実やBNPが血管新生に関連するという報告から、カヘキシー病態形成と炎症・血管新生の関連性の解析をあらたな攻略ポイントとして加えたい。また、IL-6の発現を喪失しており、腫瘍形成能を有するがカヘキシー誘導能の低い細胞株について、がん細胞のIL-6産生能の有無、さらに、宿主のIL-6産生能について、腫瘍形成・カヘキシー病態に与える影響とそのメカニズムについても調べたい。部分的データであっても取りまとめて発表できるようにデータ取得に努める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
全般、24年度計画の延長部分の実施のために必要な動物、試薬等消耗品を購入する。特にIL-6とBNPがそれぞれのシグナル伝達系でクロストークが関与する可能性についてin vitro系で調べるため、血清、関連プラスチック器具をはじめ発現遺伝子プロファイリングに必要なマイクロアレイ、関連試薬を購入する。IL-6シグナル伝達系、BNPシグナル伝達系のアゴニスト、アンタゴニスト等の生化学的研究試薬を購入する。プロテオミクス解析の成果をふまえて、さらに移植に必要な動物、タンパク電気泳動・分離、質量分析に必要な関連試薬を購入する。その他、取りまとめて論文発表のための経費とする。
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