2011 Fiscal Year Research-status Report
非アルコール性脂肪肝炎発症におけるマクロファージ活性化の意義の解明
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23590360
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
永井 義夫 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 講師 (90402718)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西尾 善彦 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (40281084)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | NASH |
Research Abstract |
肥満・メタボリックシンドロームの病態に、脂肪組織へのマクロファージの浸潤が関与することが明らかとなり、代謝疾患における慢性炎症の意義がクローズアップされている。本研究では、非アルコール性脂肪肝炎(non-alcoholic steatohepatitis;NASH)および肝インスリン抵抗性発症におけるマクロファージ活性化の意義およびそのメカニズムを明らかにする。最近の研究により、血中の遊離脂肪酸が代謝産物として肝細胞内で中性脂肪合成の基質となるのみでなく、4型Toll-like受容体(TLR4)などの膜型受容体を介してシグナルを伝達することが明らかとなってきた。TLR4は栄養過多に起因する「代謝異常である脂肪肝」と、それに加わる「免疫異常を伴うNASH」とを結び付ける接点となる可能性がある。本研究では、TLR4の天然変異モデルマウスであるC3H/HeJを用いて、NASH発症におけるマクロファージ活性化の意義およびそのメカニズムを明らかにする。また、肝臓における炎症の惹起による肝インスリン抵抗性への影響も併せて検討する。今年度は、in vitroのNASHモデルの確立を目標とした。TLR4の野生型(C3H/HeN)と変異型(C3H/HeJ)のマウスについて、門脈にカニュレーションしコラゲナーゼを灌流させることで初代培養肝細胞を得た。十分に接着した後エンドトキシンフリーのスタベーションメディウムに変更し、刺激を加えた後回収した。結果、LPS刺激では野生型で濃度依存的にMCP-1、TNFα、IL-6のmRNA発現が上昇した。しかし変異型ではLPS刺激に対する上記遺伝子の反応を認めなかった。一方、TNFα刺激では野生型、変異型共にLPS、TNFαに対する上記遺伝子の反応を認めなかった。腹腔マクロファージではLPS刺激で野生型で100倍、変異型で30倍のMCP-1の発現上昇を認めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度はin vitroのNASHモデルの確立を目標とした。初代培養肝細胞、腹腔マクロファージの単離はともに生体からの採取であり、かつ継代できないため、毎回の採取を要する。また、マウス門脈のカニュレーションは熟練を要するため、安定して実験に使用できるまでに多大な労力と検討を繰り返した。腹腔マクロファージの採取も無菌性腹膜炎を誘発するチオグリコレートの最適量の決定に多くの検討を要した。現在では両者ともおおむね安定して供給できるようになったため、上記区分とした。
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Strategy for Future Research Activity |
インスリンシグナル経路の検討のため、最適インスリン濃度、および刺激時間の検討を行う予定である。条件が決定したのち、野生型/変異型初代培養肝細胞と野生型/変異型腹腔マクロファージを共培養して、インスリンシグナル経路の変化、すなわちインスリン抵抗性が惹起されるかを検討する。また、TLR4の野生型および変異型マウスをそれぞれ通常食および高脂肪食で飼育し、変異型では脂肪誘導性の肝インスリン抵抗性が惹起しにくいことを証明していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に研究代表者および研究分担者の移動があったため、本研究を継続していく環境の整備に時間を要した。その結果、研究費の一部を次年度に繰り越した。今後は引き続き、初代培養肝細胞および、腹腔マクロファージの採取、および得られたサンプルからのmRNA発現、タンパク発現の検討を行っていく予定である。また、培養細胞だけでなく、動物実験を繰り返し行い、仮説を検証していく予定である。
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