2012 Fiscal Year Research-status Report
形態学的診断が困難な中枢神経疾患の生化学マーカーの探索
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23590367
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
橋本 康弘 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (80164797)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
城谷 圭朗 長崎大学, 大学院医歯薬学総合研究科, 准教授 (20322696)
奈良 清光 福島県立医科大学, 医学部, 講師 (40260327)
苅谷 慶喜 福島県立医科大学, 医学部, 講師 (00458217)
伊藤 浩美 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (00450669)
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Keywords | 認知症 / 髄液 / 糖鎖マーカー / スクリーニング法の開発 |
Research Abstract |
髄液中の一群のタンパク質が、血清では見られないユニークな糖鎖修飾を受けていることを見出した。これらの“髄液型”糖タンパク質は中枢神経系で生合成されていると考えられるため、中枢疾患マーカーになることが期待された。本研究では、これらの分子のアルツハイマー病マーカーとしての可能性を検討している。具体的には、“髄液型”糖タンパク質の中から、(1)アルツハイマー病と他の認知症で差のあるものを見出すこと(鑑別診断マーカー)、(2)コントロールから前病変である軽度認知症障害を経て、アルツハイマー病へと進行するにつれ変化するマーカーを同定すること(進行度マーカー)、(3)見出されたマーカーのハイスループット・スクリーニング法を開発すること、の3点を目標とした。共同研究の実績がある10医療機関で、臨床診断が確定した認知症関連疾患の患者から採取された髄液について検討を行い、以下の成果が得られた。(1)認知症の鑑別診断マーカーについては、髄液型トランスフェリンにより、特発性正常圧水頭症とその他の認知症(アルツハイマー病、軽度認知症、前頭葉側頭葉型認知症、レビー小体型認知症など)が鑑別可能であることが示された。(2)平成24年度までのスクリーニングでは、アルツハイマー病の進行度マーカーは見出されなかった。(3)タンパク質部分は同じであるが、糖鎖(マーカー)部分のみが異なる糖鎖アイソフォームを、ハイスループットでスクリーニング可能な測定方法の開発を行った。例えば髄液型トランスフェリンの測定では、平成23年度には10~20 sample/dayであったのが、平成24年度では60 sample/hのハイスループットが達成され、臨床応用が可能なレベルとなった(特願2012-178722、投稿準備中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的のうち、認知症の鑑別診断マーカーについては、特発性正常圧水頭症と他の認知症の鑑別診断マーカーを見出すことができた。しかし、アルツハイマー病に特徴的な進行度マーカーは未だ見出されていない。平成24年度の研究成果である、トランスフェリン糖鎖アイソフォームの新規測定原理の発見は、我々独自のユニークなものであり、今後の応用展開が期待され、十分な達成度が得られたものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
アルツハイマー病の進行度マーカーについては、今後もスクリーニングを続ける。したがって、当初の目標を平成25年度も継続する。また、トランスフェリン糖鎖アイソフォームの測定法の完成を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究は、多数の分子を対象としてスクリーニングを行う研究であることから、実験補助員の雇用を計画している。また、タンパク質分子の糖鎖をマーカーとする研究であることから、タンパク質部分に対する抗体および糖鎖部分を認識するレクチンなどの試薬を購入する。さらに、ハイスループット用スクリーニングでは、マイクロタイタープレートなどのプラスチック器具を購入する。その他、成果を発表するため学会参加旅費を支出する。また、論文発表の費用も支出する予定である。
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Research Products
(10 results)